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球団ヒストリー31.三方がうるおう提案

『支援型自動販売機』というのをご存じだろうか。

売り上げの一部が、特定の団体や活動の資金となる自動販売機だ。
ちょっと調べただけでも、観光PRやアイバンクなどの活動を支援するために特別デザインの自動販売機がいろいろ出てきた。

思いがけない提案

2008年ごろ、鹿児島ホワイトウエーブの國本代表に南九州コカ・コーラボトリング(当時)からこんな提案があった。

「鹿児島ホワイトウェーブの支援自販機を設置しませんか?」

まだ立ち上がって間もないのにこんな声がかかるなんて「思ってもない提案。知ってもらってるんだ、とすごく嬉しかったのを覚えてます」と國本代表。

当時はまだスポンサーも片手で足りるほどしかなく、活動資金のほとんどは選手たちの部費で賄われていた。

昼間は仕事をして、週末は練習。試合となると遠征費もバカにならない。設備も道具も足りない。
選手たちはそれこそ、やりたくてやっているはずの野球が、もしかしたらイヤになっちゃうんじゃないかと思うほど、時間もお金も気持ちにも余裕がなかっただろう。
そういえばマネージャーが「いつも部費ブヒ言ってて。私はブタかと思ってた」と嘆いていたっけ。それくらい、懐事情は厳しかった。

そんな中でのこの提案はとてもとてもありがたいものだった。

幾重ものご縁

このお話、実はかなり濃いご縁につながれたものだったと、当時のコカ・コーラ営業担当の黒木純一さんがお話しくださった。

甲子園常連である樟南高校野球部出身とおっしゃる黒木さん。
ちょっと失礼かもと思いつつ「樟南になってからですか?それとも…」とお尋ねすると、「僕たちのころは鹿児島商工です」。よかった、同世代だ笑

お聞きしていると、鹿児島ホワイトウェーブの初代キャプテン宮田仁志さんとは少年野球でチームメイトだったし、当時コーチをしていた方もお知り合いだったとか。

そしてこれは今回教えていただいたのだが、鹿児島商工から鹿児島鉄道管理局野球部に入ってプレーを続ける、という選手も以前は多くいたそうだ。黒木さんもそれを願っていたが、1987年に鹿鉄野球部は廃部。夢を絶たれることとなった。

それから20数年。鹿児島ホワイトウェーブによって、鹿鉄以来空席だった鹿児島の社会人野球の火が再び灯された。鹿鉄への想いも手伝ってか、黒木さんにはひとしおの想いがあったようだ。

それはもう野球の神様による幾重ものご縁でつながっていて、「トントン拍子に話が進みました」

信頼関係

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コカ・コーラ社さんからご提案いただいたとはいえ、あくまでも企業などに設置をお願いするのは鹿児島ホワイトウェーブ側。支援をお願いしたいのはあくまでチームであり、第三者であるコカ・コーラさんから話を持って行くのは「筋が違う」から。
つまりホワイトウェーブと、支援くださる企業や個人との信頼関係で話を進め、設置場所の候補が決まるらしい。
待ってるだけじゃ、一台も増えないわけだ。

こうして第一号の”ホワイトウェーブ自販機”は、スポンサーである当時の全国警備保障株式会社(現在の株式会社ゼンケイ)さんの敷地に設置された。
設置セレモニーの模様はテレビでも報道されたようだが、この動画は探し出せなかった…残念。

三方が潤うシステム

支援型自販機というのは、三方が潤うシステムになっているそうだ。

飲み物を買ってくださったお客様のノドを潤し、鹿児島ホワイトウェーブの運営を潤し、また設置企業や販売元のコカ・コーラ社にもプラスがある。

設置企業様にご迷惑をおかけするわけにはいかないし、どこかが損をしては続かないから「設置してからがスタート」だと黒木さんは語る。

そう。”鹿児島ホワイトウェーブ”とパッケージングされた自販機が増えれば、それだけチームも信頼を得ているということ。支援を受けているということ。頑張らねば、ということ。

1台目の初月、ホワイトウェーブ自販機からの収入は1796円。
これがのちに、何十倍となってホワイトウェーブを潤してくれるのだが、それにはもう少し時間がかかるようだ。

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