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球団ヒストリー56.一瞬。

決戦の地、西武ドーム!

第37回全日本クラブ野球選手権大会が行われる場所、西武ドーム。
このグラウンドに立つと「天井に吸い込まれそう」だったそうだ。
そう、この天井にある『穴』に。

大きいということは知っていたはず。
それでも予想以上に大きく広く設備も整っていて、あまりにも圧倒的なNPBのスタジアム。
その大きな大きなバックスクリーンに映し出される自分の名前。
こんなすごい球場で野球ができるんだ!
その喜びにどれだけ胸が高鳴ったのだろう!

これは現チームの話になるが、7月に福岡ソフトバンクホークス2軍のスタジアムでプレーしたときのこと。
グラウンドを目にした瞬間、選手の瞳が輝いた。スコアボードに映し出される自分の名前にスマホのシャッターを切る姿。
ただ夢中でボールを追いかける野球少年の顔だった。

2012年当時の選手たちにとって、自らの手でつかんだこの西武ドーム。
その感動はどんなに大きかったことだろう。

気づいたら終わっていた

さて、試合は。
「一瞬でした」
「気づいたら終わってました」
若手もベテランも、そう口を揃えた。

初めての全国大会、初めての大舞台。
の、開幕戦。

緊張している自覚すらないうちに、地に足がつかないうちに、試合は終わってしまった。

vs東北マークス

初戦の東北マークス戦、結果は以下のとおりだ。

鹿児島DW   0 0 0 | 0 0 0 | 0 1 0 |  1
東北マークス 0 0 0 | 0 0 2 | 0 2 X |  4
バッテリー)投手:松元(5回2/3)~竹山(1回1/3)~古市(1回)-捕手:北迫
長打)三塁打:田上

東北が六回、後藤の安打と2四死球の二死満塁に佐々木の適時打で2点を先取。八回は佐藤茂の二塁打から伊藤の安打と、佐々木の犠飛でダメを押した。
鹿児島は八回に田上の三塁打で一点を返したものの、好機に三振を喫し、最少得点に終わった。

日本野球連盟連盟報

スコアブックは手に入らなかったが、この年の『日本野球連盟連盟報』から試合データは少しわかった。

スコアは1-4と、決して恥ずかしい試合ではない。
ヒット数も東北マークスの8本に対して5本。よく打ったとは言えないまでも打ち負けた感はない。長打も出ている。

しかし10三振が目に付いた。
しっかりと狙い球を絞れないままに試合が進んでいったことが伺われる。

クラブチームとはいえ、発足した当時は企業の野球部であった東北マークス。歴史のあるチームだ。
経験値の差が出た、かな。

自信

しかし、この全国大会初出場がチームにもたらした影響は計り知れない。

「オレたちは強い!」
一夜限りのドリームチームとして発足した2005年に感じたその気持ちは、いわば世間知らずなもの。社会人野球という世界を知っていれば出ていなかった言葉のはずだ。

でも今回は間違いなく自分たちの力でつかんだ結果。
たしかに力はある。
その想いを新たにしたはずだ。

誰よりも見たかったひと

この全日本クラブ野球選手権大会初出場を、「ドリームウェーブがいちばん輝いていた時期」と表現したのは球団代表の國本正樹さん。

チームがまだ構想段階であったころから関わり、正式発足時には日本野球連盟への登録などで東奔西走した人。

いわばたった一人のドリームウェーブ0期生だと思うのだが、2012年の西武ドームに國本さんの姿はなかった。
お身内に不幸があったそうだ。

どれだけこの場を訪れたかっただろう。
どれだけこの試合を見たかっただろう。
ふたたび出場することがあるとしても、初出場は一度だけなのに。

お身内を失くした悲しみでそれどころじゃなかったかもしれないが、想像すると少し切なかった。

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