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球団ヒストリー63.スポンサー企業に訊く~(株)ゼンケイⅠ

2024年現在、鹿児島ドリームウェーブで一番多いのが株式会社ゼンケイの所属選手・スタッフだ。
少なくとも私が関わり始めた4年前からはずっとこの状態が続いている。
「ゼンケイの選手だけでチーム作れるんじゃない!?」なんて冗談めかして話したこともある。
それくらい選手を受け入れていただいているわけだ。

ホワイトウェーブ設立前から

株式会社ゼンケイさんとの関わりは、一夜限りの予定で立ち上がった鹿児島ホワイトウェーブ時代から始まっていた。

先代社長の時代からスポーツ支援に積極的だったゼンケイさん。
柔道部やラグビー部があり、またソフトボールチームは県内の大会で5連覇するほどの強豪だったそうだ。
そのためホワイトウェーブが立ち上がるときに数人の社員が入団。
その選手たちの紹介でつながったのが、上笹貫祥寛社長と球団代表國本さんの始まりだった。

つまり、ホワイトウェーブが動き出す前から始まっていたと言っても過言ではない。

しばらくは仕事上の関係が主だったが、ともにスポーツ好きで経営者。共通点も多く、公私の隔てなく腹を割った話をするようになるまでそう時間はかからなかったそうだ。

スポンサーとしての始まりがいつだったのかをお尋ねすると…
上笹貫社長は「國本さんに聞いたら分かるかも」
國本代表は「上笹貫社長に聞いてください」。
お二人の関係性の濃さがこのほぼ同じ回答に表れているようで、ひそかにクスッとなった。

ということで、いつからご協賛いただいていたかという明確な時期は不明だが、おつきあい自体は球団の歴史とほぼ同じで19年近いことになる。

支援自販機第一号

始まりこそ曖昧だが、ひとつ國本代表の記憶にはっきりと焼き付いていることがある。

2008年ごろ、南九州コカ・コーラボトリング(当時)さんからの提案を受け、支援自動販売機の設置が始まった。
その一号機が、移転前の株式会社ゼンケイさん(当時は全国警備保障株式会社)に設置させていただけることになった。

球団設立から2年ほど。
まだスポンサーが少なく活動費の捻出に四苦八苦していたころ、すでにご支援いただいていたと思われる。

まだ先行き不透明な草創期の球団を支えてくださっているゼンケイさんに対して、何かしらお礼がしたいと考えた國本代表。報道各社を招いての『支援自販機設置セレモニー』を提案した。
記念すべき一号機を上笹貫社長のテープカットでスタートし、それを新聞やテレビで紹介いただくことでゼンケイさんの宣伝にもなればと思ったそうだ。

が、上笹貫社長はそこまでおおごとと思っておらず、セレモニーの時間になっても出てこられなかったとか。
もちろんすぐに連絡をとり、無事にテープカットをしていただいたそうだが、國本代表は「良かれと思ったけど、忙しい社長にとっては余計なことだったかも」と笑っておられた。

ただそれくらいに、球団からすれば何かしらご恩返しをしたい存在だということだ。

斡旋第一号は

ホワイトウェーブ時代からずっと所属選手がいたが、就職斡旋が始まったのはドリームウェーブとチーム名を変更したとき。
ゼンケイさんへの斡旋第一号は、それからしばらくたった2014年の有川真平さんら二人だ。
有川さんは、のちにチームの窮地を救い監督に就任することとなるが、それはまた改めて。

当時のゼンケイさんはさほど人材に困っていることはなく、社員を募集すれば新卒が数十人集まり採用はそれよりだいぶ少ないという狭き門。そんな中でも新卒の選手を受け入れてくださっていた。
しかしコロナ禍を経て人手不足の現在は「新卒採用はほぼドリームウェーブの選手だけなので、うちとしても助かってます」と、持ちつ持たれつの関係にもなっているそうだ。

ゼンケイに集まる選手

各企業によって支援のしかたは様々だし、受け入れる選手のタイプにも傾向がある。

ゼンケイさんに集まるのは、県外出身の選手が中心。
ドリームウェーブで野球をするために鹿児島に移り住み、退団したら地元に戻る。そんな選手たちが多い。

社員寮があるというのもまた大きな理由だろう。
ただでさえ所属選手が多く、そのほとんどが寮住まい。見知らぬ土地に来た若者にとってチームメイトがそばにいるというのは心強いに違いない。

警備会社という特性上、勤務は24時間体制。そして働いた時間が給与に直結する。
野球を優先すると給与が減る、仕事を優先すると野球がままならない、そんなジレンマがあったことは否めない。
しかしそのことも、上笹貫社長は選手たちから丁寧に聞き取り読み取り感じ取り、時間をかけて解消してくださった。
現在では、練習の30分から1時間前には退勤が認められるというありがたい環境だそうだ。

会社を挙げてのバックアップ体制

とはいえそのためには、社長だけではなく各部署の責任者や現場で直接関わる社員さんの理解協力も不可欠。
練習のために早く退勤するということは、その分他の社員さんの負担が増えるということだ。
社長命令で一刀両断だと、現場との温度差は大きくなる一方のはず。

しかしゼンケイさんは、とにかく会社全体で応援してくださっていると強く感じる。
県内での公式戦となると、多くの社員さんが球場に足を運んでくださる。当然だが強制ということはなく、あくまで「行ける人は行ってね」というスタンス。そうしてスタンドには、なかなかの応援団が仕上がっている。

選手の働きぶりを取材するために数回にわたって社屋を訪れたことがあるのだが、とにかく和やかだ。
毎日練習に行き、公式戦があればそれを最優先にするという野球選手が隣にいるということを、当たり前に受け入れてくださっている。そして、きっとお邪魔でしかない私の取材さえも楽しんで協力してくださる。

もちろん選手たちも、少々きつくても夜勤と練習を両立させるなどの努力は欠かさない。
そこに愚痴はなく、誰に聞いても「ありがたい環境っす」「働きやすいです」という答えが返ってくる。
それが本音だし、感謝してもしきれないと感じているのが、選手たちの表情からも伝わってくる。

野球を頑張る、応援していただく、感謝でより仕事も頑張れる。
そんな循環が、株式会社ゼンケイに起きているようだった。


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