見出し画像

『動物農場』 読書メモ#1

 本書は、旧ソ連の変質した社会主義国家を動物の寓話を通して描いた小説である。原書は1945年に書かれている。

 物語は人間が支配していた家畜が氾濫を起こし、動物たちの自治国家である「動物農場」が誕生するところから始まる。

"すべての動物は平等である"

など様々な戒律を掲げ、平等を歌った動物たちの動物たちによる社会構築が始まる。

 最初は自分たちのための労働に生きがいと自由を感じるが、徐々に指導者のブタに都合の良い社会に変わってゆく。

 労働者を鼓舞する都合のよいスピーチが声高になされ、報酬が少なくも限界まで働く動物たち。戒律違反は都合よくもみ消され、指導者に都合のよい嘘情報が流布される。風車建設の失敗は指導者争いの道具として利用され、不穏分子は殺傷処分されるようになる。指導者階級だけが嗜むための、大麦の栽培とビールの醸成が行われるようになり、一方で労働者階級は過重労働と飢餓に苦しむようになる。

 都度小さな違和感を感じながらも、群衆の空気に流され何も声を上げない労働者階級の動物たち。やがてその沈黙は自分たちの破滅に繋がってゆく。

 物語の最後には、戒律が以下のように書き変わっている。

"すべての動物は平等である。だが一部の動物は他より平等である"

労働階級の動物達が気づかないうちに。

 本書には、「序文案」と「ウクライナ語版への序文」が付されており、オーウェルの生い立ちから本書執筆に至るまでの経緯が書かれている。
 また「訳者あとがき」では、オーウェルの意図するこの寓話の教訓が、不当な仕打ちを受けてもそれに甘んじる動物たちの方にもあることを指摘している。

 物語で描かれた非対称性な関係は、教育の差から来ていることにも注目したい。戒律をしっかり読み、正確に理解し、記憶することができないから、こっそりと書き換わる戒律に対して異議申し立てすることができないのだ。

 現代社会では変化が激しく、迅速な対応には独裁的な組織が有効だとする意見がしばしば見受けられる。本書は、そういった安易な考えが導く社会の行方に対して警鐘を鳴らす。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?