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知的労働生産性

この記事は、16年前の自分へのツッコミというスタイルで書いています。


 自分の研究スタイルが確立していなかった大学院時代、研究の道を志したときに、どんな生活態度を身につければ、いい研究が出来るのかと、真剣に考えていた。いわば、知的労働生産性を高めるコツである。成功したければ成功した人に聞け。というわけで、身近で尊敬できて成功している研究者たちに、このコツについて聞き取りをした。

 質問項目を挙げると、睡眠時間、就寝・起床時間、水分補給の仕方、食事・アルコール・デザートのとり方、散歩や軽い運動の取り入れ方、研究室のインテリアと室内温度、文献の読み方、気分転換の仕方、同僚との情報交換・議論の仕方、定期購読している雑誌や新聞、お気に入りのテレビ番組、ストレス解消法、やる気の出る音楽やアロマ、研究活動を通じた社会とのかかわり方、短期的もしくは長期的目標を含めた研究人生観など、多岐にわたった。

 インタビューの対象者は、自分の指導教授をはじめとして友人の指導教授、魅力的な講義をされていた教授や准教授たちなどであった。

 多くの研究者に共通していた知的労働生産性を高めるためのコツは「タイムマネジメントの重要性」であることが分かった。より具体的には、細切れ時間を含めた「時間の自己管理」である。研究に必須の創造と想像が喚起されるような高密度の時間を主体的に作り出す。これが出来ない場合には、思い切って休む勇気を持つ。逆に休んでいる時でも出来る場合には労働する。

 もちろん、私が先に挙げたような細かい質問項目も、知的労働生産性を高めるためには有効かもしれない。だが研究においてこれを高めて、社会に役立つ研究成果を出していくためには、時間の自己管理によって、あえて暇な時間を作り出し、忙殺される人々が思いつかないようなことを常に考えて、問題提起していくことが必要である。研究活動が、「暇人の暇つぶし」と言われる所以がここにある。

2007年8月22日


16年後の今、このエッセイを読んで、ため息が出ました。なぜなら、いまだにこのことでモヤモヤと格闘しているからです。なんだか昔の自分に戒められた気がします。いえ、励まされたと受け止めることにします。

とはいえ、今年になって急に普及し始めたChatGPTが、知的労働生産性を高めてくれる可能性が出てきました。この人工知能のようなChatGPTと上手に対話しつつ、アルゴられたり、アルゴったりして笑、知的好奇心を満たしていきたいです。

知的思索において、ChatGPTは人間の働きかけがなくてはワークしません。その場合、人間の働きかけがChatGPTからのアウトプットを引き出します。つまりChatGPTと人間のあいだの関係は自己言及的な循環になります。

自己言及的な循環になるということは、人間の働きかけがChatGPTを駆動させるのか、ぎゃくにChatGPTのアウトプットが人間を駆動させるのか、因果関係が不明になっていく可能性があります。

ちなみに、アルゴリズムとは、計算によって合理的に思考する方法ですね。
この対義語はヒューリスティックです。ヒューリスティックとは、先入観や経験に基づく思考法ということです。似た概念に「認知バイアス」があります。

今後、人間らしいヒューリスティック的なものがアルゴリズムによってどうなっていくのか、気になります。差別や偏見がよりビジュアル化されるでしょうか。

もしかしたら既に『攻殻機動隊』にその結果が描かれている、とも言えるのかもしれませんが。その結果というのは、オリジナルとコピーの関係が不明になること、言い換えると由来(オリジン)の消滅ということだと私は理解しています。

原因と結果が循環し、オリジナルとコピーの関係性が不明確になるということは、人間がもつ時間感覚が変わっていく、つまり時間の概念が溶けていくのかな、とも想像します。おお、わかりにくい感じになってきましたかね💦

ふと思うのは、人間が人間性を有した状態で、人間として知的労働生産性を向上させるためには、デジタルプチ出家が大切なような気がしてきました。

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