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【医師解説】膵癌におけるエクソソームを用いた診断・治療への応用 ②リキッドバイオプシー

リキッドバイオプシーの主な標的として、
血中遊離 DNA(cell-free DNA:cfDNA)
血中循環腫瘍細胞(circulating tumor cell : CTC) 
血中遊離R N A(cell-free RNA:cfRNA)
エクソソームを含めた細胞外小胞
その他代謝産物
などがあげられます。
cfDNAは体液中を循環する DNAの総称で、それらを解析することにより遺伝子変異や病細胞の性質を推測することが可能です。癌患者の血中cfDNA濃度は上昇しており、特に癌由来のcfDNAは癌細胞由来D N A(circulating tumor DNA:ctDNA)と呼ばれます。ct D N Aは微量なため、遺伝子変異の検出が難しく、高精度な検出技術の確率が望まれます。
膵癌においてはKRAS 変異解析が予後や抗剤治療効果予測に寄与することが示されています。
CTC は、組織から体液中に入り込み、全身を循環する癌細胞です。そのため他のリキッドバイオプシー標的と比較してより多くの情報取得が可能です。しかし、CTC の検出数は1ml中数個~100個程度と少なく、解析装置・方法が多岐にわたるため検出精度に一貫性が乏しいという問題点も存在します。膵癌においては、C T Cにおけるstemness遺伝子の一つであるLIN28Bの発現と患者予後との相関が報告されています。
その他のリキッドバイオプシー標的として、DNAのメチル化、タンパク質、代謝産物などが候補となります。多様な分子異常を検出しうるリキッドバイオプシーは、これからの膵癌診断に大きく寄与すると期待されます。

青山メディカルクリニック院長 松澤宗範 

参考文献:胆と膵 (0388-9408)42巻8号 Page717-724(2021.08)

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