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【医師解説】肺疾患とエクソソームについて

肺疾患に対しての治療に関しても、間葉系幹細胞(Mensenchymal stem cell: MSC)-エクソソームの有効性が示されつつあります。

Leeらは、低酸素誘発性肺高血圧症モデルマウスに対してMSC-エクソソームを静脈投与すると治療効果が得られることを示しました。
MSC-エクソソームは肺における STAT-3経路の活性化を抑えることで、炎症を抑制していました。
しかし、エクソソーム画分を除外したMSCの培養上清には治療効果が見られませんでした。このことからMSCのエクソソームが炎症を抑える作用があることが予想されます。

また、MSCのパラクライン効果による肺障害に対しての治療効果で重要とされているのがkeratinocyte growth factor(KGF)です。Zhuらは、急性肺障害マウスモデルにおいて、MSC-エクソソームが治療効果をもつことを示し、KGFに着目しました。

実験によってMSC-エクソソーム中にはKGFmRNAが多量に含まれていることがわかっており、KGFmRNAが少なくとも部分的には、肺障害に対しての治癒効果が判明しています。

また、2006年のSpeesらの報告で、ミトコンドリアに障害を与えた肺胞上皮細胞株A549細胞をMSCと共培養した際に、MSCから A549細胞へとミトコンドリアが移行するという現象が起こりました。そして、ミトコンドリア障害を負っていたA549細胞が増殖能および肺機能を回復することが観察されました。

このことからMSCのミトコンドリアが、MSCの分泌する小胞顆粒を介してマウスのII型肺胞上皮細胞へと伝達されるという説が浮上しましたが、MSCの分泌小胞そのものの投与でミトコンドリアの伝達が見られたという証拠はまだありません。
そして細胞分泌小胞内にミトコンドリアそのものが内包されているという、電子顕微鏡画像などの証拠もまだ報告されていません。
今後のさらなる研究報告が期待されています。


青山メディカルクリニック
   院長 松澤 宗範


参考文献:
【エクソソームとDDS】新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来エクソソームの応用可能性(解説/特集)
Author:勝田 毅(国立がん研究センター研究所 分子細胞治療研究分野), 落谷 孝広Source: Drug Delivery System (0913-5006)29巻2号 Page140-151(2014.03)



・院長プロフィール
総合内科、形成外科、美容皮膚科、美容外科。
がん診療に関しては10代の頃に母親を末期癌で亡くした経験と形成外科で癌術後の再建で患者様と日々関わることで、早期発見、予防医療の重要性を痛感し、がん検査や治療も行っています。
疾患の種類を問わず、アンチエイジングまで幅広い患者様に対応し、体の内側・外側ともに健康に綺麗になるためのお手伝いをしています。

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