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【医師解説】がんのリンパ節転移が全身転移を促進するメカニズム

医学雑誌Cellに掲載されたリンパ節転移からどのように全身に転移をするのかを検証した研究をご紹介します。

がんのリンパ節転移は全身転移の前兆であり、重要な予後因子です。

しかしリンパ節転移が遠隔転移の形成にどのような役割を果たすかどうかはわかっていませんでした。


そこで、がん細胞がリンパ節にどのように広がるか、およびリンパ節転移が遠隔組織への転移に影響を与えるかどうかを調査するために、皮膚癌マウスモデルで研究されました。


がんは固有のインターフェロン応答プログラムによって免疫細胞であるNK細胞からの攻撃を回避することができます。

そうすると攻撃を逃れたがん細胞がリンパ節でコロニー形成を促進しやすい状態となり、リンパ節転移の可能性が高まります。


さらにリンパ節転移が進むと、制御性T細胞を誘導し、腫瘍特異的な免疫寛容を生み出します。

これにより、遠隔腫瘍のコロニー形成が促進されます。そしてがん細胞が遠隔臓器に転移しやすい状況が作り出されます。


つまり、がんはまず免疫細胞が集まる基地とも言えるリンパ節にまず侵入し、免疫細胞と友達のような関係になることによって攻撃から逃れることができるため、次々と全身に遠隔転移ができるようになるわけです。


この研究からリンパ節転移と遠隔転移は表裏一体であることが分かりました。

このことからもリンパ節転移が起こる前に早期で治療を始めるかがいかに重要であるかが分かります。

青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範

参考文献

Lymph node colonization induces tumor-immune tolerance to promote distant metastasis.

Reticker-Flynn NE, Zhang W, Belk JA, Basto PA, Escalante NK, Pilarowski GOW, Bejnood A, Martins MM, Kenkel JA, Linde IL, Bagchi S, Yuan R, Chang S, Spitzer MH, Carmi Y, Cheng J, Tolentino LL, Choi O, Wu N, Kong CS, Gentles AJ, Sunwoo JB, Satpathy AT, Plevritis SK, Engleman EG.Cell. 2022 May 26;185(11):1924-1942.e23. doi: 10.1016/j.cell.2022.04.019. Epub 2022 May 6.PMID: 35525247


・院長プロフィール
総合内科、形成外科、美容皮膚科、美容外科。
がん診療に関しては10代の頃に母親を末期癌で亡くした経験と形成外科で癌術後の再建で患者様と日々関わることで、早期発見、予防医療の重要性を痛感し、がん検査や治療も行っている。
疾患の種類を問わず、アンチエイジングまで幅広い患者様に対応し、体の内側・外側ともに健康に綺麗にをモットーにしている。

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