【過去記事】大学入学共通テスト2021概観

※自身Facebook過去投稿より転用

大学共通テスト概観2021
センター試験から大学入学共通テストへ変わった初年度となり注目も集まった。

第1問 評論
 香川雅信『江戸の妖怪革命』 ※設問中に芥川龍之介「歯車」

評論は、いかんせん文量が多い。内容が難しい…

とはいえ、各方面で言われているほど難化しているかといえば、そうでもないのでは。むしろ、問2~問4は文中から語の説明を抜き出すシンプルな設問で、「共通テスト」という亡霊に惑わされず、センターの読解テクニックをしっかりと身につけている人が難なく正答できる問題だったように思いました。

問5に関しては、個人的には内容合致問題と同様の能力を問いながらも、合致問題よりも視覚的に解きやすい問いかけだと感じました。なお、ドッペルゲンガー問題は見事に間違えました…。

第2問 小説
加能作次郎「羽織と時計」 ※設問中に宮島新三郎「師走文壇の一瞥」

小説も、心情の機微に傍線部があるようですが、読み間違えるような要素も少なく、選択肢の後半部分で判定できるものが問2~問5まで並びました。問4・5はやや難解かもしれません。

新傾向も(i)は言い換え、(ii)は作品の軸に近いものが正答となり、(見た目に恐れつつも、)従来型の指導で十分太刀打ちできると感じました。

第3問 古文
『栄花物語』 ※設問中に『千載和歌集』

古文は、古典教材独特の世界観も薄く、注も充分についていたので場面は連想しやすかったのではと思いました。今年度は有名人の自死も含め「命」にかかわるエピソードが社会的に多い中で、この題材をセレクトしたのは良いのか悪いのか…個人的には読んでいてさみしくなりました。こんな完璧な奥さんが亡くなったらそら悲しいだろうよ。問5が唯一時間のかかるめんどくさい問題でした。ゆっくり解いても疲れました。

第4問 漢文
欧陽脩『欧陽文忠公集』 『韓非子』

漢文、撃沈しました。3問もペケがついた愚老に語る余地なしです。少し離れるとこんなにも分からないか…府中に実家を置く身として「馬問題」に苦戦したのは情けないです。問題文2本はやや重いイメージでしたが、「多角的な視点」として並べるのは妥当な2本だったように思います。問3は両方の題材からの出題でしたが、文脈や問題文2の1行目で判定できる問題だったので、時間は食わない印象です。

あとは、今年受験生に関わる機会がなかったので、比較的楽観的な分析をしたかもしれません。まあ満点も取れない若造の徒然草です。いずれにせよ、共通テストに怯えた割には、センターの対策が奏功する試験だったように思います。裏を返せば、来年、再来年、「実用的な問題」が出てくる恐怖と隣り合わせの日々が続くと思うと怖いです。夜しか眠れません。

どうでもいいですが、「共通テスト」という目新しさに興味関心が向かい、毎年恒例のいわゆる小説の「奇怪」な登場人物や、ぶっとんだ古典教材は扱われなかったのは個人的に残念でした。

受験生の皆様、指導教員の先生方、そして試験監督の大学教授をはじめとした先生方、まずは大変お疲れさまでした。

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