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SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)とワクチン

SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)とそのワクチンについてです。

本題に入る前に、名称の整理だけさせて下さい。

2019年12月に新型コロナウイルスが登場して、1年8ヶ月が経ちました。いつまで”新型”なのでしょうか。

英語では初めはこのウイルスを2019 novel coronavirusと読んでいましたが、今はsevere acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2)となっています。

読み方はサーズ コーヴィー トゥーとなります。

いつまでも新型というのはおかしいので、このnoteではSARS-CoV-2と呼ぶことにします。

ウイルスの感染のしかた

ウイルスが感染を起こすには、まずヒトの体に入って来たのちにヒトの細胞の中に入る必要があります。

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ヒトの細胞に入るにはウイルスのスパイクがヒトの細胞上にあるレセプター(受容体)とくっつく必要があります。よく鍵と鍵穴に例えられます。スパイクが鍵で、レセプターが鍵穴です。ウイルスがヒトの細胞の鍵を開けて中にまでは入ってくるイメージです。

ウイルスに対する免疫

ウイルスの感染予防には抗体というのがが必要です。

抗体ができるとウイルスのスパイクにくっついて、レセプターにくっつかなくなります。そうなるとSARS-CoV-2は感染できなくなります。

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抗体というのは初めて感染するウイルスに対しては体で作られるのに1-2週間ほどかかります。
2回目の感染の時は、免疫記憶というのがあり、1-2日で抗体が作られてウイルスをすぐ排除します。

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この抗体というのを作っているのがB細胞です。B細胞が抗体を作るのにはT細胞も必要です。またT細胞はウイルスに感染した細胞をやっつける働きもあります。(どちらもリンパ球の一種です)

ワクチンというのはこのような免疫を実際に感染することなく作り出す薬です。

mRNAワクチン

今、日本で摂取されているワクチンは3種類あります。

1. ファイザー/ビオンテック社のコミナティー(BNT162b2)
2. モデルナ社のCOVID-19ワクチンモデルナ(mRNA-1273)
3. アストラゼネカ社のバキスゼブリア(AZD1222)

今日本でメインで使われているのはファイザーとモデルなのワクチンで、どちらもmRNA(メッセンジャー アールエヌエー)ワクチンです。

mRNAワクチンはKatalin Karikó博士の長年の研究の結果、実用化されました。

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(Wikipediaより)

今回このSARS-CoV-2ワクチンの実用化で、多くの命が助けられたことになります。その内、ノーベル賞を取るのだろうと思われます。

このmRNAはそのままの形で注射をしても、細胞内に入りにくく、また強い免疫反応を出し副作用が強くなってしまいます。

Karikó博士は、RNAを構成しているA、U、C、Gの内、U(ウリジン)をψ(シュードウリジン)に変えることで、強い免疫反応が起こらず、しかもタンパク質への翻訳が効率的に起きることを発見しました。(mRNAからタンパクを作ることを翻訳と言います)

また脂質膜で包むことにより、細胞内にmRNAを運べるようにしました。

SARS-CoV-2のmRNAワクチン

SARS-CoV-2のワクチンは、ウイルスのスパイクの部分のみの設計図であるmRNAを使用しています。

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このmRNAを注射すると、ヒトの細胞の中に入り、細胞の中ではmRNAを基にスパイクタンパクを作成します。

作られるのはウイルスのスパイクタンパクであって、ウイルスそのものではありません。ですので、生ワクチンのように、ワクチンで感染してしまう事はありません。

SARS-CoV-2に対する免疫をつけるにはこのスパイクの部分のみで良いのです。体の中でウイルスのスパイクタンパクができますので、これを免疫細胞が見つけてB細胞から抗体が作られ、T細胞はB細胞の助けをしたり、感染した細胞ごとウイルスをやっつけられる様になり、免疫を獲得します。

mRNAワクチンの効果

この様にして免疫を獲得します。抗体ができるだけでなく、T細胞もスパイクタンパクのことを記憶してくれます。

以上のような免疫がつき、SARS-CoV-2に対して感染しにくくなり、もし感染しても重症化しにくくなりますし、周りの人にも移しにくくなります

mRNAワクチンの副作用

スパイクタンパクを見つけたT細胞などの免疫細胞は活性化し、多くのサイトカインという物質を出します。

サイトカインが出されることにより、熱、倦怠感、筋肉痛、関節痛、頭痛などの全身性の症状が出ます。これらの副作用は出ても1から2日あれば消失します。しんどいですが、怖いものではありません。

副作用は一回目のワクチンでは約30%、2回目のワクチンでは約70%で認めます。若い人のリンパ球の方が元気で、この副作用は若い人の方が多く認めます。周りのワクチンを打った人を見ていても、お歳を召されている方の方が何の副作用もなかったという方が多いように感じます。

副作用の出かたと、ワクチンの効果は関連しないこともわかって来ています。ですので、熱が出なかったから効果が薄いということはないと思われます。安心してください。

元々の免疫低下や免疫抑制剤の内服などはワクチンの効果に影響します。血液疾患の方へのワクチンについては今度記事にします。

怖い副作用は、強いアレルギー、アナフィラキシーです。これは0.001%で起こります。アナフィラキシーが起きて、喉が腫れると呼吸ができなくなり、命に関わります。

ワクチン接種後すぐに現れますので、接種会場で数十分待機していただくのは、アレルギー症状が出てこないかを確認するためです。

その他、このワクチンに特徴的な副作用として、心筋炎という心臓の炎症を起こすことがあります。100万回で2.2件のっ発症ですが、若い人で起きやすいようです。2回目接種の後1週間以内に胸の痛みや動悸が現れます。重症だとこれも怖い副作用ですが、幸いワクチンで起きる心筋炎の多くは軽症の様です。

使われ始めたばかりのワクチンですから、ワクチンを打って10年後のデータというのは全くないわけですが、長期時間が経ってから副作用が出てくるという可能性は低いと考えます。

mRNAは壊れやすいので体にずっと残ることはありません。mRNAがずっと体に残っていて、副反応を起こし続けることはないと考えられます。また人の遺伝子に組み込まれることもありません。

ワクチン接種後に急性骨髄性白血病になったという韓国のニュースもありましたが、これも因果関係はないと考えます。

mRNAをワクチンとして使うのは初めてのことですので、何か起きるとワクチンのせいじゃないかと思ってしまいたくなるのは分かします。
ただ、世界中のかなり多くの人が接種していますので、たまたまワクチン接種の後に白血病になったり、他の病気が起きて死んでしまうということはあるのです。人はワクチンに関係なく一定の確率で病気になるのですから。

白血病がどういう病気か、mRNAがどのようなものかを知っていれば、mRNAで白血病をひき起こすことはできないと考えることができます。

また、不妊になるというのもデマです。

最近の話題

ワクチンを打って3ヶ月で抗体が1/4に減っているというニュースが最近ありました。

ここまで読んでいただいた読者の方は分かると思いますが、mRNAワクチンは抗体だけの免疫をつけるワクチンではありませんでしたね。

確かに、抗体の量と発症予防に関してはある程度関連があります。ただ1/4に減ったからといって、そのまま予防効果も1/4になったわけではありません。やや劣るのかもしれませんが、予防効果はあります。

またT細胞が記憶していますので、感染した後の防御力は強まったままです。

3ヶ月で抗体が減ってしまうからといって、意味のないワクチンでは決してありません。3回目接種という未来はあるかもしれませんが。。。

デルタ株に効くのかという点でも心配点かもしれませんが、ウイルスに比べてやや効果は落ちるものの、デルタ株であっても予防接種の効果はあることが分かっています。


ご自身や周りの人をSARS-CoV-2から守るためにも、是非予防接種を受けていただきたいと思います。

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