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【イベントレポート】EXAWIZARDS×SUSMED共催!|医療・ヘルスケア業界を変えるテクノロジー事例とその裏側

様々な業界でDXが叫ばれる中、医療・ヘルスケア業界でも多くのスタートアップが台頭し、テクノロジーを活用した変革事例が生まれています。独特な慣習・規制から、変革の難易度が高い領域の一つである一方、少子高齢化が進む日本において、イノベーション待ったなしといえる業界です。
この記事では、2023年11月16日に開催した、サスメド株式会社様との共催イベント「医療・ヘルスケア業界を変えるテクノロジー事例とその裏側」のイベントレポートをお届けします。

■登壇者
株式会社エクサウィザーズ
木股 瑠惟 ライフサイエンス部グループリーダー
製薬企業の臨床開発部門、グローバルコンサルティングファームの医薬・ヘルスケア部門を経て2020年にエクサウィザーズに参画。ライフサイエンスGのリーダーを務め、製薬企業とのDX戦略策定やDX人材育成、AI開発プロジェクトのほか、アカデミアとのAI開発プロジェクトや医療リアルワールドデータ提供会社との協業を企画・推進。

根本 卓 ヘルスケアサービス部グループリーダー
医療系メガベンチャー、戦略コンサルティングファームを経て、2019年にエクサウィザーズに参画。 ヘルスケアサービスGのリーダーを務め、製薬企業とのDX戦略策定やAI開発プロジェクトのほか、ヘルスケアカットでの業種横断的なサービス・事業開発を推進。

サスメド株式会社
黒木 大陽 氏 臨床開発部長
薬学系大学院卒業後、内資・外資のCRO(医薬品開発業務受託機関)及び、医療・介護のコンサルタントを経験。サスメドでは、治療用アプリの臨床開発戦略の立案、非臨床試験/臨床試験の対応、薬事承認、保険収載及び社会実装を臨床開発部として担当。

長井 奏貴 氏 事業開発部長
東京大学卒業後、住友商事でヒト用・動物用の医薬品関連のトレード、事業管理、製造販売業者の設立、医薬品の開発・製造・上市、ベンチャーとの協業等を担当。サスメドでは治療用アプリの共同開発パートナーとの提携構築・開発プロジェクトマネジメント、治療用アプリ・臨床試験システム・医療データ分析の営業戦略立案・実行を担う。

医療業界のイノベーションにおける3つのポイント

ウェビナーは、サスメド社の取組紹介から始まりました。 

長井:弊社は、ICTの活用で持続可能な医療を目指す「Sustainable Medicine」を略して「サスメド」と名付けられました。医療制度の持続可能性という問題意識と、デジタル技術による解決が、我々のビジョンの根底にあります。弊社は医師や臨床開発、データ解析者、薬事担当者、エンジニア、事業開発などから構成され、それぞれの専門性を活かしながら、共同でプロジェクトを推進しています。特許性の高い開発や論文掲載を積極的に行っております。

サスメド社の展開する事業領域


デジタル医療でイノベーションを起こす中で、本当に多くの論点がありますが、特に①臨床的意義、②規制対応、③複雑なステークホルダー対応の視点を重視しています。
弊社は、不眠障害用の治療用アプリ*1を開発し、現在は発売準備中ですが、その他の開発品においてもアンメットメディカルニーズ*2が大きな領域に向けて、国の厳しい規制に則って高いレベルのエビデンスと言える形で有効性を証明しながら開発を行っています。また、薬を処方するのが通常のオペレーションである医療機関にとっては治療用アプリを処方することは新しい取り組みになるので、いかに治療用アプリを全国津々浦々のクリニックや総合病院へ普及させるか、というのは非常に大きなチャレンジです。

*1:医療機器(プログラム医療機器)として厚生労働省に承認されているスマートフォンアプリ製品。診察結果に沿って薬と同様に処方され、患者はアプリケーションを通じて治療を行う
*2:有効な治療法が見つかっていなかったり、普及していない疾患の存在など、現在満たされていない医療ニーズのこと

もうひとつ、新薬開発を促進する臨床試験システムであるSUSMED SourceDataSync(サスメドソースデータシンク)の事例をご紹介します。実は、日本の新薬開発は国際競争力が伸び悩み、海外では承認されている革新的な新薬も日本では開発されず、患者さんが処方を受けられない事例が増えており、ドラッグロス問題とも呼ばれる大きな社会課題となっています。
その競争力低下に大きな影響を与えているのは、労働集約的な治験コストです。弊社は、ブロックチェーンを活用したシステムを使うことで、この労働集約モデルからの脱却を支援しているという意味で、こちらも社会的意義の高い事業であると考えています。また、データの信頼性担保の観点から治験業務にも国の厳しい規制がありますが、弊社システムによる業務削減がデータの信頼性を棄損しない、という点を厚生労働省と確認しながら進めています。
また、このシステムは製薬企業や医療機器メーカー、臨床試験を受託するCRO企業、治験に参加する医療機関や先生方など、非常に多くのステークホルダーが存在します。各々のお立場も考慮した普及体制が肝要です。

どこまでユーザーのリアルにこだわったサービスをつくるか

 弊社エクサウィザーズからも、自社の事例を通した医療業界のイノベーションについてご紹介しました。 

木股: エクサウィザーズは、AIを活用した社会課題をミッションとした会社です。AIコンサルタントや事業開発の専門家、エンジニア、ドメインエキスパート、デザイナーなど約400名のメンバーが、ヘルスケアやエネルギー、金融、最近ではエンタメや宇宙など幅広い業界の社会課題解決に挑んでいます。
その中でも、我々の所属するCare&MedTec事業部においても幅広い事業展開をしており、製薬企業の創薬領域におけるDXから、 昨今話題のリアルワールドデータ*3活用、プログラム医療機器の開発など多岐にわたります。我々がクライアントに仕掛けるDXは「包括的」な視点で、営業マーケティング支援の高度化などはもちろん、創薬における低分子化合物の活性予測モデル開発や認証開発領域でのデータ利活用、さらにはクライアントのDX自走に向けたデジタル人材育成まで提供しています。

*3:臨床現場で得られる診療行為に基づく情報を集めた医療ビッグデータ
我々はAIに強みを持つ会社で、例えばSaMD(Software as a Medical Device)と呼ばれるプログラム医療機器では、体の動きや表情を動画解析することで、医療上の指標の測定診断を行っていたり、食事の写真から栄養素を分析するアプリケーションなども手掛けています。

これまで多くのAIモデル開発を進めてきましたが、高度なAIモデルが「どうすれば実際の事業やオペレーションに落とし込まれるのか」という視点が、AIモデルそのものと同じぐらい重要であると感じています。
弊社が最近リリースしたAI搭載サービスの開発基盤「exaBase Studio」では、用いるデータやAIモデル、出力されるアウトプットなどをキャンバスに図示することで、エンジニアではない方々も開発フェーズに参加できる環境を作り、現場の声が活きた「実効性のある業務変革」を支援する仕組みを提供しています。

根本:最近は生成AIがホットですが、弊社でも医学的な相談を受けるチャットサービスの開発を行っています。当然医学ですから、医療的観点から「情報提供を受けたい」という期待もありますが、病気の可能性を抱えたユーザーがもつ不安に対し、傾聴や共感を通した「安心」を提供することも医療の中では非常に重要なことです。これまで人間が提供してきた「医療」をどのようにデジタルが再現、また補完するのか、といった視点を忘れてはいけないと思います。 
こういったチャットを介した正しい提案や情報提供を行うためには、ユーザーが持つ悩みや情報を正確かつ十分に伝えてもらうことが不可欠です。ただ、ユーザーもツールに向き合って、機械的な会話から必要な情報を根気強く伝えるのは、なかなか骨の折れることです。そこに「楽しさ」を与えるようなゲーミフィケーションの要素や、サービスとしてのUI/UXに、隠れたミソがあると感じています。AIモデルだけでなく、ソフトウェア開発、UI/UXデザインなど、プロダクト全体を通した作り込みが、サービスの価値を分けると思います。

エクサウィザーズのサービスを届ける全体像

ベンチャーから業界変革を仕掛ける醍醐味

 各社の事例紹介を終えたあと、会場は質疑応答を踏まえたディスカッションへ。
 会場:伝統の長い産業では、改革に多くのハードルが存在すると思いますが、その領域で事業開発を推し進めるにあたって、大切にしている点やコツはありますか?

長井:組織の考え方として、本質を追求できることがベンチャーならではの良さであると思っています。例えば、治療用アプリなど新しい領域は、規制当局においても規制や審査のプラクティスが蓄積されていません。その中で、型や前例を取っ払い、「どうすれば日本の医療はさらに良くなるのか、どうしたら世の中に普及するか」という視点にピン止めして、そこから逆算したアクションを徹底する、という考え方を大切にしています。私も前職大企業だったのでよく分かるのですが、様々な意見を持つ利害関係者がいる中で、本質的価値から離れることなく、とにかく目的を追い求めるアクションに臨めるのが、ベンチャーならではのカルチャーかと思います。

 木股: ベンチャーの強みはあるかもしれないですね。弊社も、冒頭に申し上げた「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」というミッションをメンバーが共感できていて、じゃあそこに向けてどう足元の問題を解決していこうかを一緒に考えられるカルチャーが根付いていると思います。

会場でプレゼンテーションを行うスピーカー

会場:ベンチャーには困難なことも多いと思いますが、中でも「これはハードだったが、やりきってやったぞ!」と言えるようなエピソードはありますか?

黒木:ご紹介したSUSMED Source Data Syncのシステムで、内閣府のサンドボックス制度を用いたエピソードですかね。この制度では、現行規制のある領域で検証試験の実施許可を得て、結果次第では規制変更を申請できるというものです。効率化に繋がりつつ、規制に触れないという確認を、最終的に厚労省から得たというところは、国と対話をしながらやりきった好事例としてお伝えできるかなと思います。

根本:製薬会社さんと、歩行解析技術を使った医療従事者向けのサービスを検討したエピソードが印象に残っています。我々は、AI技術や事業開発視点から協業支援していましたが、社内稟議を通すために、マーケやR&Dにも価値があることを訴求する稟議資料を、一緒になって検討したりしていました。また、医療従事者さんから「患者へ説明がしづらい」とフィードバックをもらえば実際に病院やクリニックへ赴いて調査するなど、枠組みにとらわれない取り組みに全力を注ぎましたね。最終的に、ユーザーから「すごくよかった」とアンケートがきたことを知り、ちょっとほろりとすることもあり、難しいサービスでしたがとても嬉しかった体験でした。 

ディスカッション終了後は懇親会が行われ、セミナー内容に関わらない話まで含め、終始にぎやかな会となりました!
共催させていただきましたサスメド様、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。 

エクサウィザーズでは、今後もさまざまなテーマでイベントを開催していきます。興味をお持ちいただいた方は、ぜひお気軽にご参加ください。

またエクサウィザーズでは、一緒に働く人を募集しています。まずはカジュアル面談からお話しできますので、ぜひ気軽にお申し込みください!

【カジュアル面談のご案内】
エクサウィザーズ:こちら
サスメド社:こちら


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