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The Cure 『Seventeen Seconds』

前作発表後に行われたスージー&ザ・バンシーズとのツアーののち、ベースのマイケルが脱退(そして彼はAssociatesのメンバーになる。このバンド最高なんで聴いてください)。後任として、ロバートの親友にしてこの後何年にもわたってキュアーの屋台骨を支え、そして去っていったサイモン・ギャラップが加入。さらにマシュー・ハートリーをキーボードに迎えた4人編成で制作された2nd。

愛想の無さは相変わらずですが、本作はそれ以上に根暗なサイケデリック感に満ち溢れています。パンクの名残は一掃され、ミドルテンポの曲群が淡々と進んでいくさまは、まるで生きるのに疲れた文学青年が行く当てもなく深い森の中を彷徨っている光景を連想させる。もしくは聴いて即座に曇り空を連想させる音です。ロバのギターも微かにサイケ感を漂わせてきており、そこはスジバンのサポートの賜物でしょうか。ロルのパタパタドラムと絡むサイモンのベースはまだその個性を開花し切れていない感があるが、JJバーネルの影響を受けながらも独特の浮遊感を醸し出すラインが気持ち良い。そして何よりマシューのキーボードである。こいつはジャイアンみたいな見た目なのに仙人みたいな音を出します。在籍中はしょっちゅうロバと飲み屋で殴り合いしていたとは思えないほど主張の弱い音です。彼の奏でる霧みたいなキーボードが全体のカラーを決定づけており、彼こそ本作の最大の功労者と言っても過言ではないと思います(そして本作1本で脱退した彼のその後を誰か教えて下さい。たまに一緒にツアーバスに乗ってるよっていうロバの発言が意味不明です)

いまだにライブで合唱が起きることでお馴染みの「Play For Today」や初めてチャートインした「A Forest」など地味ながら名曲揃いだし、もっと世間で語られても良い作品だとは思うのですが、いかんせん存在感が薄い印象があるのは何故なのでしょうか?それ含めて好きです。

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