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ヴィレッチヴァンガードが最強だと思っていた男。

僕が18歳~22歳まで山口県のスーパーの精肉で働いていた事は、何度もnoteに出ているので知っている方は多いと思う。

そんな山口生活3年目の春。

20歳の僕に起こった悲劇。

主任になった僕は、寮を出て一人暮らしを始めた。

寮は3DKのアパートを先輩と2人で使っていた。自分の部屋はあったが、キッチンやトイレは共同だった。

なので、20歳で初めての一人暮らし。

胸が高鳴った。

給料も増えるし、絶対お洒落な部屋にしよう!

熊本の田舎出てきた青年はそう誓った。

その頃の僕は、完全に有頂天だった。

仕事も順調で、1人暮らしも始めて、車も買った。

後はお洒落な部屋に住めば完璧。そう思っていた。

そんなある日、ドライブをしていると、見慣れない青い壁の店を発見した。

その名も、

「Village VanGuard 」

最近出来たお店かな?と思いつつ入ってみると、

店内には本や、雑貨が所狭しと置いてあり、色とりどりの手作りポップ広告が張り巡らされていた。なんかお店全体がカラフルで圧倒された。ワクワクする店だった。

田舎者の僕は、なんかお洒落な店だ!かっけぇ!と思った。

ちょうど「Village VanGuard 」が全国展開を始めていた頃で、たしかその店は山口県の1号店だった。

近所に最強の店が出来た!僕は店内でガッツポーズした。

「Village VanGuard 」の「遊べる本屋」ってキャッチフレーズも心に刺さった。

僕も遊び心あるお洒落な部屋にしよう!

幸か不幸か、

その店は大型店で、2階には家具も売っていた。

僕は声に出してこう言った、

「この店で全てを揃える。」

目をキラキラさせながら、「これもいいな、あれもいいな」と吟味した。

「まずは、ソファーだ!」

「銀ラックも買おう」

「このテレビ台もお洒落だな!」

「これをラックに飾ったらかっこいいな!」

「この時計も最高」

気付いたら9万近く使っていた。

20歳男がヴィレッチヴァンガードで1回の買い物で使った全国1位の金額だろう。

それから、1ヶ月くらいかけて買い物をし、最強に遊び心あるお洒落な部屋を完成させた。

いや。完成させてしまった。

間取りは8畳ワンルーム、風呂トイレ別で家賃は5万。

僕はその8畳の部屋に、

銀ラック、テレビ、銀ラック

とテレビを同じ銀ラックでサンドイッチした。

まぁここまではよくある、シンメトリーな配置。

しかし、あろうことか20歳の僕は、

銀ラックに置く物もシンメトリーにしたのだ。

シンメトリーの人間がいる家庭で育ったからなのか、

シンメトリーが最強のお洒落だと思っていた。

しかも、男子の部屋に飾ってはいけないランキング上位のものばかりを置いていた。

シェイカー。

何のお酒かも分からないリキュール。

空き瓶。

古びた海外のナンバープレート。

読みもしない無理した雑誌。

透明な筒状の容器にオイルが入っていて、スイッチを入れるとプカプカとスライムみたいのが揺れて光るライト。

スラムダンクのでっかいコミック。

思い出すだけでゲボが出る。

それをシンメトリーに置いていたということは、

シェイカーやリキュールやプレートは2個ずつ買っていたんですよ!!奥さん!!

ダサいライトは2本ずつの4本買っていた。赤、青、黄、紫の4色。

一旦整理しよう。

いま、8畳の部屋を

最強にダサいキラキラ光る銀ラック、テレビ、最強にダサいキラキラ光る銀ラック

でサンドイッチしている状態。

テレビの上には、針なんかで時間見るのダサいっしょ!ということで、

でっかいデジタルの時計。

銀ラックの横には、観葉植物置く男はモテるっしょ!ということで、

デカめの観葉植物(幸福の成る木みたいな名前だった)

もちろん両サイドに置くから2本。

改めて見てみよう。(なんでも鑑定団風に)

でっかいデジタルの時計を中心に、

左から、

幸福の木、最強にダサいピカピカ光る銀ラック、テレビ、最強にダサいピカピカ光る銀ラック、幸福の木。

右から、

幸福の木、最強にダサいピカピカ光る銀ラック、テレビ、最強にダサいピカピカ光る銀ラック、幸福の木。

と完璧なシンメトリーな部屋が完成していた。

しかし、20歳の僕はそんなんじゃ満足していなかった、

「部屋の主役はソファー」

部屋の中で、最もリラックス出来る場所、ソファー。

そのソファーを。

僕は、僕は、

カチカチのベンチタイプのソファーにしていたのです!!

横にもなれない、背もたれは短い、ケツは痛い

この3悪のソファーを、

完璧に部屋がシンメトリーに見える位地に置いていたのだ。

「お洒落は我慢」を完全に履き違えていた。

仕事、車、お洒落な部屋。

20さんの僕は全てを手に入れたと思っていた。

しかし、後1つ足りない物があった、それは

「いい女」

この最強にお洒落な部屋にいい女を呼んで、口説いて、抱く。

これで全ては完成する。

僕はすぐにバイト君たちとコンパを開いた。

数回目で部屋へのお持ち帰りに成功し、僕は完成に近づいた。

女の子を部屋に入れ、

自慢の3悪ソファーに座らせ、

自慢のでっかいデジタル時計を中心に、

幸福の木、最強にダサいピカピカ光る銀ラック、テレビ、最強にダサいピカピカ光る銀ラック、幸福の木。

という完璧なシンメトリーの部屋を見せた。

いい雰囲気の中で、その彼女はガラケーを取り出しメールを開いた。

僕はさっきまでいた他の女の子に、

「ごめんね、私ばっかりいい思いして!拓くんは完璧な男よ!ふふふ。」

とでもメールをしている思い、その子の肩越しにガラケーを覗いた。

そこには一言

「部屋ダサっ」

と書いてあった。

僕はそのガラケーの文字を見た後に、

ゆっくりと部屋を見渡した。

すると一瞬にして、さっきまでカラーで見えていた夢の世界が、セピアの現実世界に戻された。

いや、現実世界どころか地獄だった。

「なんだこの部屋は!」(海野さん風に)

自分でも思った。

我に返った僕は、人生で一番顔が真っ赤っかになった。

急いで女の子を帰し、

布団に潜り込んだ。

これはなにかの間違いだ、悪い夢だ。

起きたらまたお洒落な部屋に戻ってるはず。

僕は寝た。

起きても部屋はダサかった。

窓から差す太陽の光がシェイカーに反射して眩しかった。

終。

いつも男に大事な事を気づかせてくれるのは、女性ですね。

ありがとうございます。

誤解のないように言いますが、

今でも、ヴィレッチヴァンガードは大好きですよ。

物も質もいい商品ばかりです!

20歳の僕がきっと悪霊にでも取り憑かれていただけ。

ただそれだけ。

二度とこんな部屋にしたくないので、良かったサポートお願い致しますm(_ _)m

スマホがオモチャなので誤字脱字はご勘弁を。

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