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総裁を継ぐもの

序文

このnoteは、機動戦士ガンダム水星の魔女10話「巡る思い」にて、シャディク・ゼネリが語った「決闘で次の総裁は決まらない」について極めて身勝手に妄想するものである。

総裁選とは

水星の魔女10話でシャディク・ゼネリが養父サリウス・ゼネリに語った言葉を引用する。

『総裁が亡くなった時御三家の誰かがホルダーならミオリネと御三家の株を合わせて過半数になります。ですが、スレッタ・マーキュリーの所属するシン・セー開発公社では合計してもミオリネの持ち株は過半数になりません。つまり決闘で次の総裁は決まらない』

この時点でベネリットグループの総裁選が近いこと、そしてデリングが死んだ場合の総裁選の行方が示唆されている。

ベネリットグループ総裁選のルールについては、シャディクの発言以外何も公開されていない。しかしながら総裁選に対し"持ち株"という言葉が使われていることから、総裁選は現代で言うところの株主総会における代表取締役選任投票相当と予想される。
これまではデリング&ミオリネの持ち株(=投票権/委任状)に合わせて御三家の誰か、もしくは御三家全員がデリングに投票することでデリングが自動的に総裁の椅子についていたのだろう。

シャディクの思惑

しかし12話でデリングは重傷を負い、2期PVにおいても未だ意識を取り戻していない様子から、デリングは投票権を持ちながら行使できない、委任状を誰かに託したくても託せない状況にあるものと思われる。

これは、10話ラストで『ベネリットグループを解体する。俺はもうためらわない』と決意を見せたシャディクにとって非常に都合の良い展開である。

グループ解体を目論むシャディクにとっては、12話のデリング暗殺が成功でも失敗でも構わない。暗殺が成功すればサリウスに語ったように総裁選の行方は不透明となる。暗殺は失敗したが、結果的にデリングは自分の意思を示すことができない。シャディクの野望に追い風が吹いている。

デリングは人事不省に陥った。
そして御三家の一角、ヴィム・ジェタークが亡くなったことで、シャディクにとって総裁選の盤面はより一層シャディク好みに転がっていく。

アスティカシア高等専門学園の学友にして決闘委員会のメンバーである、ラウダ・ニールのジェターク社CEO就任である。

4話「見えない地雷」においてジェターク社の財務諸表が思わしくないことは、拙著「楽園の蛇は禁断の果実の夢を見るか」で触れた。

グループ解体は今すぐでなくても良い。むしろグループの命運を握ってからが彼にとっての本番となる。
まずはグループ総裁の座を手に入れる。
そのためにはデリングに次ぐ投票権を持つミオリネを蹴落とす必要がある。

総裁選展望

レンブラン家およびグループ構成各社の持ち株比率を予想する。
デリング、ミオリネ共に21%、御三家に各10%、残り29%がグループ4位のブリオン社以下に分けられる……と仮に設定する。
このあたりがシャディクの語る『総裁が亡くなった時御三家の誰かがホルダーならミオリネと御三家の株を合わせて過半数になります』を再現するラインだろうか。

デリングは重態により投票権を行使することも、白紙委任も選べない。
しかしグループの舵取りは待ったなし。故に、デリングの持ち株を除く残り79%分の投票権で総裁選が争われることになる。
ならば総裁選における勝敗のボーダーは40%の投票権ないし委任状を手にするあたりだろうか。
シャディクはジェターク社に財政立て直し、そのほか諸々と引き換えにグラスレーへの委任を持ちかける。ペイル社へはガンダムのデータをちらつかせて協力を仰ぐ。
この目論見が成功した場合、シャディク陣営が握る投票権は30%に対し、ミオリネ陣営21%のままとなる。
そして、シャディクはおそらく総裁候補に養父サリウスを擁立する。
2期PVでシャディクが語った「養父さんを引きずり込むよ、俺の計画に」の一端はここで披露されるだろう。

対するミオリネ陣営はグループを崩壊させないためにミオリネ自身が総裁候補に立つか、あるいは意識を取り戻さないデリングを担ぎ上げる。
しかし、7話でデリングがミオリネに告げた言葉『どんな大言壮語を吐こうともそれを裏付ける信用がお前にはない』がこの場面でミオリネに襲いかかる。
グラスレー社CEOとして長い実績を誇り、かつてはデリングの上司だったサリウスと、動き出したばかりの株式会社ガンダムしか実績のないミオリネ&意識不明のデリングではブリオン社に続くグループ各社がどちらに票を投じるか、予想がつくだろう。

本編が総裁選ルートに入った場合、投票結果を待たずして趨勢は決している。
シャディク、ミオリネ共に裏工作は始めるだろうが、御三家に対する有効な交渉材料を持つシャディクの方が一手も二手も先んじる。

総裁選勝利後、シャディクはまずサリウスをグループ総裁に据え、自身はさりげなく未来のグラスレー後継者アピールをしつつ、学園のホルダー(というより決闘の勝者が花婿になる)制度解体に着手する。
こうなってくればスレッタがいくら決闘に勝ち続けても、ホルダーの座を維持し続けても関係ない。
表でスレッタとミオリネを分断し、グループ存続を餌にミオリネを跪かせる。
裏ではジェターク社を操ってガンダムを作りながら、
「ほら、水星ちゃんのせいで何もかもめちゃくちゃになっちゃったよね。俺も手伝うからさ、今こそラウダが水星ちゃんを断罪するときじゃないのかな」
と囁き、その手に処刑人の剣(仮)を握らせる。
これで、シャディクの進路に立ち塞がる障害を一挙に片付けることができる。……そうなる前に、個人的にはこのあたりでグエルが例の新商品モビルスーツに乗って戻って来てほしいけれど。

おそらく、ミオリネは正攻法では総裁選を勝ち抜けない。
父が築いたベネリットグループはグラスレー社……というか、シャディクに奪われる。シャディクが描いた"グループ解体"の絵図面が現実になる。

起死回生の一手はあるか

ミオリネ側に起死回生の一手は……あるといえばある、ないといえばない。

1つめは総裁選当日にデリングが意識を取り戻し、自身の投票権を行使すること。
デリングの強権とカリスマ(?)でグループを引っ張ってきたのだから、彼自身が復活すれば、シャディク陣営になびこうとした各社も一斉に手の平を返すだろう。
個人的には「御都合主義過ぎる」と思うけれど、割と無難なルートではある。

2つめは、デリングが意識を回復しない場合、ミオリネがグループ継承を諦める……というか、グループを捨てる決断をする。
12話でデリングに「お父さん!」と呼びかけたミオリネが、父の看病のために側に留まることを選んだミオリネがその決断をするかどうかは甚だ疑問であるが、もし選んだならシャディクの思惑を遥かに飛び越える行動となる。
なにしろ、自分の首にかかった鎖を自分で引きちぎる行為だから。
ただしこの決断はいくらグループ外運営とはいえデリングが筆頭株主を務める株式会社ガンダムの行く末も危ぶまれることになるので、実際に選ぶ確率は極めて低いだろう。
ミオリネが実は孔明で、ベネリットグループ内に存在するかもしれない"表に出すとまずい問題"を総裁交代後に暴露する、という罠が仕掛けてあるならあるいは……。

3つめ。8話で名前が出ているにも関わらず、12話時点でも本編に絡んで来ない宇宙議会連合の存在。
ミオリネが「味方になってもらおうかな」と軽口を叩いているが、この二者の間で接点が発生したのか、何かが起きたのかは視聴者に知らされていない。
……というか、絡んで来るかな?

そんなことないよね

シロウトがたやすく予想できるような展開なぞ小林寛監督は持って来ない。むしろ視聴者をあっと言わせるような仕掛けが用意されているはずだ。
期待に胸を膨らませながら2期の放映を待っている。

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