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グループを僕の手の上に~ヴィム・ジェタークの一面を覗く

序文

前回の身勝手な妄想「総裁を継ぐもの」を何となく受け継ぎつつ、機動戦士ガンダム水星の魔女特番「Season1総復習ダイジェスト」および「ととのうSP」で公開された情報を元にヴィム・ジェタークという経営者について極めて身勝手に妄想するものである。

ヴィムと総裁選

前回の「総裁を継ぐもの」をアップしたところ「ヴィムが立候補する可能性」についてツイッターで見かけたので、妄想してみる。

2話の審問会で放たれたデリングの「あれはガンダムだ。私がそう判断した」や、7話の「お前の提案には価値がない」発言で、審問会参加メンバーやグループ各社が一様に押し黙るかデリングの顔色を伺っているのを見て、グループ内で表だってデリングに反抗するのは危険な行為だ、と私は推測した。
デリングはワンマン経営者で、彼の機嫌次第で自分の会社が立ち行かなくなる可能性がある、自分の立場が危うくなる──グループに所属する経営者は誰もが大なり小なり、そんな認識を抱いているのだろう。

"王様"デリングの前で、ヴィムは表向きは11話のように「もちろん私も協力させていただきます。ベネリットグループの未来のために」とデリングに対し如何にも忠実そうな顔を作ってみせた。日頃デリングの前で披露する彼の姿はああなのだろう(この場面ではついでにグラスレー社も蹴落とす腹積もりがあったかもしれないが、それは脇に置く)。
しかし裏では暗殺という手段でデリングを排しようとした。まさに面従腹背を絵に描いたような動きを見せた。
グループ傘下の各社重役陣の反応から予想するに、総裁選に出馬するということは、すなわちデリングの経営手法を否定することにつながる。
もしもヴィムが総裁選に立候補する可能性があるとするなら、せいぜい毎回わざとらしく出馬しては敗北して笑いを取りにいくための賑やかし枠くらいでしかないだろう。剽軽者を演じて周囲からの警戒心を削ぐつもりの──まるで道化かピエロだ。
だが、もしもそんな行動を本当に取ったなら、おそらくヴィムは総裁選が終わると社内の執務室に篭って悔し紛れに机を拳で力一杯叩く。それも何度も。……まるで4話の融資打ち切りを匂わせられた通話の後のように。
下手すれば怒りに任せて部屋の調度品を破壊してそこらじゅうにぶちまけるだろう。1話でグエルがミオリネの温室の植物達をなぎ払ったように。

いかに尊大なヴィムでも忠義者の振りくらいはやればできるだろう。でも、彼は自ら進んでピエロにはならないと思う。
ヴィムのプライドは山よりも高そうなので、負けるとわかっている戦いには打って出ないのではないか、というのが私の予想である。

ヴィム・ジェタークの辞書に敗北の二文字はない

2話ではグエルの頬を平手打ちして、
「ジェターク社の人間がジェターク社のモビルスーツを使って負けただと?お前は会社の信用を潰す気か!」と叱責する。
3話でもグエルを張り倒し、
「このスタッフもダリルバルデもお前を勝たせるために俺が集めたのだ!子供のプライドが入る余地はない!大人扱いしてほしければ勝ってホルダーを取り戻せ!」と多数いるスタッフの前で息子に対しCEOとしての権力を振りかざす。……実に大人気ない。
グエルとスレッタの再戦に裏から介入しながら「これは社用だ」と言い張り、ラウダに「あんなことをしなくても兄さんは勝ちます」と言わせてしまう。
手段は問わない、ただ勝てば良い。反撃などさせない、許さない。負けるなど言語道断。

ジェターク社の名を背負って負けるということは、ヴィム・ジェタークの敗北につながる。だから負けることは許さないし、認めない。そんな彼だから、会社の経営に支障が出そうなほど融資を受けてでもグループ内1位の座は譲らないだろう(これに関しては因果が逆かもしれない)。
獅子の鬣のように虚栄を張り付け、自分を強く、大きく見せて我が道を闊歩する。
割と浅知恵で、ともすれば力 is Powerな思想の経営者。
私にとって"経営者"ヴィム・ジェタークとはそういう人物に見える。

ワンマンはワンマンを知るが故に

「養子野郎」、「田舎者風情が」、「水星の採掘屋」、「軍人上がりが」など、事あるごとに相手を侮辱しているのは、相手を下げることで自分が高い位置にいると相手に錯覚させようとする意識の証左だ。

逆説的に述べると、彼は自分の矮小さに内心では気づいているのでは?「先にやらなければ自分が相手に飲み込まれる」と心に刻み込んでいるのでは?

そんな彼だから、あくまでもデリングを確実に倒せる、反撃はさせないと決め打ちできる局面でなければ本心は白状しない。
11話で「だからお前は気に食わないというんだ!」と詰め寄ってデリングの襟首を掴んだのは発信器を取り付けるための芝居でもあるけれど、シャディクと組んだ(と一方的に思っている)計画で確実にデリングの命を奪えると踏んだからだろう。
いくらヴィムが御三家と呼ばれる立場でも自社の命運を左右できるグループ総裁の襟首を掴むのは自殺行為に等しい。デリングが薄々ヴィムの反逆に気づいていたとしても、切り札無しでその意思を明確にするのはあまりにも危険すぎる。
だから彼は、今回の計画でデリングの首を取れる、最悪のケースに転がっても「養子野郎」ことシャディクが持ち込んできたプランをデリングに暴露することで罪をなすりつければいい……あの場面はそういう見込みで動いているのではなかろうか。

12話でヴィムが「俺はライバルの頭を直接ぶったたくことで勝ち上がってきた男だ」と発言している。直接、なのだから確実に仕留めなければ反撃を喰らう。そうなれば争いは長引くしリソースも無駄に使う。
しかもそれで成功経験を得ているから、ヴィムはそういった手段を手放し難い。
これまでも物理的にであれ社会的にであれ、相手の息の根を"きっちり止めて"来たのだろう。おそらく彼が口にした「ライバル」も皆暗殺だの襲撃だの口撃だの事故偽装だのと、選んだ手段はなんであれ一度で仕留めてきたと想像できる。
それでもさすがに相手のスキャンダルを握る……はなさそうな気がする。あれだけ相手の感情を逆なでしそうな言葉を次々発するヴィムだから、そっち系には気が回らないんじゃないか、と私は見ている。搦め手も苦手、というか彼の選択肢にはないだろう。

そんな彼でも、私が個人的に目を見張る部分が一点だけある。
1話でシャトルに乗ったデリングを暗殺する際「デリングが死ねば息子のグエルが婚約者として確定する。決闘ごっこが白紙になる前にやらねばな」

白紙に戻す
それまでの経緯をなかったこととして捨て去り、以前の何もなかったもとの状態に立ち返らせる。

ルーツでなるほど慣用句辞典 | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス
https://imidas.jp/idiom/detail/X-05-X-26-2-0012.html#:~:text=%E3%81%AF%E3%81%8F%E3%81%97%E3%81%AB%E3%82%82%E3%81%A9%E3%81%99,%E7%8A%B6%E6%85%8B%E3%81%AB%E7%AB%8B%E3%81%A1%E8%BF%94%E3%82%89%E3%81%9B%E3%82%8B%E3%80%82

こう呟いている。
現にデリングはスレッタが勝利した途端、ミオリネの退学と新しい婚約者の提示を一方的に通告した。実に見事なちゃぶ台返しだった。
「デリング、長い付き合いも今日で終わりだな」と呟くほど年月を重ねている彼だからこそ、デリングの機嫌次第で"ホルダー=ミオリネの花婿"のシステムが消滅することを、ヴィムは既に予見していたと思われる。
グエルが勝とうが負けようが、全てはデリングの手の平の上だと、彼は薄々気づいていたのだろう。
どうしてその洞察力を他に振り向けなかったのか……ほら、奥様とか愛人とかにさぁ……(嘆息)。

ヴィムとデリング、そしてシャディクを添えて

そのヴィムが絶対に真っ向勝負を挑まない相手、裏からしか仕掛けることができない相手、それがデリングだ。
デリングを今すぐ消せないならまずグエルをホルダーの座につけてミオリネと結婚させ、次期総裁の地位をグエルに狙わせる。後にデリングを暗殺、もしくは自然死を待ってミオリネがデリングの株式を引き継いだなら、離婚と引き換えに株式の譲渡を持ちかけてレンブラン家のグループ支配への関与を一切断つ。あるいは、グエルとミオリネの間に子が生まれたら、子の親権を巡ってミオリネに対し裁判を起こして、最終的にミオリネを追い出し、グループをジェターク一族の支配する集団に塗り変えていく──そのくらいは未来予想図として描いていたかもしれない。
グエルとミオリネ結婚後のくだりはすでにヴィム自身が妻&愛人との間で経験しているだろうから、彼には想像も実現もたやすいだろう。

しかしプラント・クエタでは組んだ相手が悪かった。
シャディクが裏切る、ということを考慮しなかったあたりが、彼がどんぶり勘定……というかどんぶりの底が抜けている人物だなぁとつくづく感じる。
シャディクはシャディクでジェターク社製モビルスーツ「デスルター」をフォルドの夜明けに提供し、ヴィムに艦隊を配置から遠ざけるよう依頼した。更には作戦開始時間を早めることでデリング共々ヴィムを始末しようとした。仮にヴィムが生き残っても、シャディクは上記の物的証拠を以ってヴィムに全てをなすりつける予定だったのだろう。
ヴィムが死亡してもそうでなくても構わない。どちらに転がっても問題ないようシャディクは計画の道筋を複数用意していた。
蛇の道は蛇、どころかシャディクの用意する手数と見識の深さを見誤り「グラスレーの小僧」程度の評価しかできなかったヴィムには、たとえあの場でグエルに倒されなくてもそれ相応のラストシーンに向かうレールは既に用意されていたのではなかろうか。

ジェターク社の明日はどっちだ

先日公開された水星の魔女特番からの流れで「ヴィム・ジェタークは妻と愛人に捨てられた」という情報がもたらされた。それについては多くの方がすでに考察を述べられているので、ここでは触れない。

だがしかし。
1話のグエルの言動を思い出してほしい。

ワンマンな性格が夫婦間/愛人間にも発揮された結果、女性二人は出て行くことを選択したのだろう。愛人はともかくとして、ジェターク社は家族経営だから妻に関してはジェターク社関連の相応の家から迎え入れただろうに……。離婚や親権争いに関しても有無を言わせないほど強権が発動できているなら、きっとCEOの業務でもそのやり方を押し通してしまっているだろうし、巻き添えを食った部下達が後始末に東奔西走しているだろう。
そんな父を見て子供時代のグエルが「親父かっけ~」と思ってしまっているのなら、そして父の言動を真似してしまっているのなら、グエル世代が会社を継承するのを待たずしてジェターク社の未来は暗いのではなかろうか。

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