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【水星の魔女】デリングとプロスペラの共闘から逆算するエリクト=スレッタの証明

序文

 本noteは、2022年10月より放映されたアニメーション番組「機動戦士ガンダム 水星の魔女」(以下"本編"と表記)における最大の謎「主人公スレッタ・マーキュリー(以下"スレッタ"と表記)はプロローグに登場した幼女エリクト・サマヤ(以下"エリクト"と表記)と酷似しながら同一人物ではないかのように描写される」件について妄想し、後述する各種前提条件を満たした解決手段を模索、もとい極めて身勝手に妄想するものである。

 ついでに言うと。
 私は量子論の知識がゼロであることも書き添えておく。
 だからぶっちゃけ、いろいろと間違ってるので詳しい方々のご指摘求む。

第一章 表題についての要旨と解の提示

要旨:

本編プロローグ(以下"プロローグ"と表記)におけるフォールクヴァング襲撃=21年前のヴァナディース事変と確定した場合、エリクト=スレッタを成立させる手段を用意する

希望的観測による解:

プロローグにおけるフォールクヴァング襲撃=21年前のヴァナディース事変であり、プロスペラ・マーキュリー(以下"プロスペラ"と表記)=エルノラ・サマヤ(以下"エルノラ"と表記)であることによってエリクト=スレッタでありながらエリクト≠スレッタであり、かつA.S.122時点でスレッタ17歳を実現させる手段は、LF-03「ガンダム・ルブリス」(以下"LF-03"と表記)による量子テレポーテーションの発生と、これに伴う実体化の遅延によるもの

第二章 各種前提条件

前提条件とは、水星の魔女本編および公式文献において確定した情報を指す。

前提条件:

(a) 本編2話のスレッタに対する取り調べ結果から、A.S.122時点でスレッタは17歳である
(b) 本編2話のスレッタに対する取り調べ結果から、プロスペラはスレッタの母親である
(c) 本編7話のプロスペラの発言「21年前のヴァナディース事変を鎮圧した立役者」および「The Report of 機動戦士ガンダム水星の魔女 Season1(以下Report1"と表記)」8Pの「21年前に起こったヴァナディース事変」から、A.S.101時点でヴァナディース事変が発生している
(d) 本編7話のプロスペラの発言「21年前のヴァナディース事変を鎮圧した立役者」から、デリング・レンブラン(以下"デリング"と表記)はヴァナディース事変に関与している
(e) 本編11話のプロスペラの発言「エルノラ・サマヤで構いませんよ」からプロスペラ=エルノラである
(f) 本編プロローグから、エルノラはエリクトの母親である
(g) 公式サイト掲載小説「ゆりかごの星」(以下"ゆりかごの星"と表記)より、スレッタ4歳の時点でガンダム・エアリアル(以下"エアリアル"と表記)が存在する
(h) 本編1話より、スレッタは輸送船に乗ってエアリアルとともに水星からアスティカシア高等専門学園(以下"アスティカシア高専"と表記)に移動した
(i) 水星の魔女小説版(以下"小説版"と表記)1巻において、アスティカシア高専は所在地がL4と判明している
(j) ガンダムエース2023年4月号における水星の魔女公式外伝「ヴァナディースハート」の記事中に『A.S.106──すべてのガンダムを否定したヴァナディース事変から5年後』の記載があるため、ヴァナディース事変とはプロローグにおけるフォールクヴァング襲撃を指す
(k) プロローグより、エリクトはA.S.101当時4歳である
(l) 本編4話におけるミオリネ・レンブランの発言「パーメットは月でも採れるようになったもんね」より、A.S.122時点では月でもパーメットは採掘可能
(m) 小説版1巻の用語解説より、パーメットとはパーメットニウムの有機錯体から生成される金属化合物である
(n) 小説版1巻プロローグにおけるフォールクヴァング襲撃において、カルド・ナボの発言「システム全体が乗っ取られて、量子情報破壊(デコヒーレンス)が起きている」から、水星の魔女世界では量子コンピュータが利用されている
(o) 前提条件(n)を踏まえ、小説版プロローグにおいて「工作員がしかけた侵入プログラムが発動」したことにより通信途絶が発生した事象から、水星の魔女世界は量子コンピュータを長距離通信に利用している
(p) 本編11話のデリングとプロスペラの会話から、デリングは前提条件(e)を認識している
(q) ゆりかごの星における表記「お母さんは、娘とたった二人でこの水星に逃げてきた」から、エルノラとエリクトがフォールクヴァングを脱出し逃げ込んだのは水星である
(r) ゆりかごの星における表記から、ガンダム・エアリアルが「お母さん」と認識しているのはプロスペラである
(s) ゆりかごの星の表記から、水星にはパーメット採掘基地が存在する
(t) ガンダムエース2023年3月号付録「水星の魔女第1クールファイナルブック」組織・人物関係図よりカルド・ナボの説明に「21年前、ドミニコス隊に襲撃を受けた」とあるので、フォールクヴァング襲撃=ヴァナディース事変=21年前の事件である

第三章 不確定要素

不確定要素とは、本編および各種文献より想起される"本編中に偏在するが確定していない要素"を指す。

不確定要素:

(A) エルノラ=プロスペラであることから、エリクト=スレッタである
(B) スレッタに4歳以前の記憶について齟齬が生じているためエリクト≠スレッタである
(C) プロローグにおけるナディム・サマヤ(以下"ナディム"と表記)とフォールクヴァング勤務スタッフの会話「本社の救援は」「期待できないな」から、小惑星フォールクヴァングは地球圏に存在する
(D) 小惑星フォールクヴァングの位置を仮に地球圏と設定した場合、地球圏→水星までの距離は最大2億km強となる
(E) 不確定要素(C)および後述の不確定要素(I)から、小惑星フォールクヴァングは最低でも太陽系のどこかに存在する
(F) LF-03は試作機のため緊急避難用の水や食料、酸素をどれだけ積んでいるかは不明
(G) エリクトはフォールクヴァング襲撃当時4歳であるため、エルノラに比べて体力が少なく、長距離/長時間航行には耐えられない
(I) 水星の魔女公式サイトのパーメットについての説明「太陽系内に偏在する鉱物」から、水星の魔女世界の人類はまだ外宇宙に進出していない
(J) プロローグにおけるエルノラの発言「スポンサーは必要」から、パーメット研究機関ヴァナディースはオックス・アース社の買収を受けねばならないほど研究資金に困窮していた
(K) プロローグのウェンディ・オレントの「スペーシアンは独占し過ぎなんだよ」および本編8話のカルド・ナボの「スペーシアンの皆さん、こんにちは」の発言から、ヴァナディースのメンバーは元々アーシアンであり、何らかの理由で活動拠点を地球から小惑星フォールクヴァングに移動させた
(L) 本編11話におけるプラント・クエタにデリングが建造した縦穴上の物体は大型ハドロン衝突型加速器(Large Hadron Collider、略称LHC)と思われる
(M) ゆりかごの星の表記から、エアリアルのAI(以下"エアリアルAI"と表記)は自我(らしきもの)を持つ
(N) 本編9話のスレッタの発言「いたんだ」および6話の「いつもより声、聞こえた気がする」発言から、エアリアルAIの中にエアリアルの自我(らしきもの)とは別の何かが存在する
(O) (2023/04/12追記)本編13話のオジェロの発言「バッテリーパック残量十分!」から、エアリアルは決闘とはいえ5連戦もすると動力となるバッテリーが切れてしまうおそれがある

第四章 不確定要素に対する推測および反論

不確定要素に対する推測および反論とは、本編および小説版中に散見しながら確定情報がない要素に対する、不確定要素確立への補足、あるいはこれを否定するものである。

不確定要素に対する推測および反論:

(1) 本編8話のカルド博士を見たときの反応、本編4話の占いで父親の死を問われたときの反応、および本編2話にて取り調べを受けた際の反応からから、スレッタは4歳以前の記憶がない、もしくは本当に何も知らない
(2) 前提条件(t)によりエリクトはA.S.122時点で25歳となる。スレッタは前提条件(a)により17歳と確定しているため不確定要素(A)は否定され、(B)が残る
(3) 小惑星フォールクヴァングの存在地点が開示されていない
(4) 不確定要素(C)、(D)、(E)に関して、"フォールクヴァング"は北欧神話における愛の女神「フレイヤ」の宮殿を指す。同じく愛を司るギリシャ神話の女神「ヴィーナス」をフレイヤと同義に捉え、ヴィーナスの名を持つ金星の近くに小惑星フォールクヴァングは用意されたのではないか、と考えられる。この場合、小惑星フォールクヴァングが存在すると思われる金星圏ー水星の距離は最大で5030万kmとなる
(5) 不確定要素(F)については、前提条件(h)が存在するため、LF-03単体でこの距離を航行することはほぼ不可能である
(6) 不確定要素(A)を主張するのは、スレッタを構成するパーツの癖のある赤毛、丸い眉、褐色の肌、青い瞳がエリクトと酷似しているからである。エリクトが父ナディムから遺伝により受け継いだと思われる同パーツをエリクト25歳時におけるスレッタ17歳が発現させるにはナディムの遺伝子情報を何らかの手段でエルノラが保持しなければならず、小惑星フォールクヴァング脱出時のエルノラが有しているというのは不確定要素(F)を鑑みても状況的に説明が難しい
(7) スレッタ=エリクトのクローンであるならば不確定要素に対する推測および反論(6)と不確定要素(B)の説明はつくが、水星の魔女世界におけるクローニング技術については本編および文献中に一切の描写が存在しない
(8) (2023/04/12追記)不確定情報(O)で語られた「バッテリーパック」とは、エアリアル本体で使用するものである、とは言いきれない

第五章 量子テレポーテーション?

 残念なことに、2023年の現実世界では量子テレポーテーションは実現していない。そしてこの世界にはパーメットも存在しない。
 ゆえに、ここから先に書いたことは何の裏付けもない単なる空論であり推論であり暴論に過ぎない。
 LF-03単体で最大距離2億km強の距離を航行した手段と、サマヤ母子が"生きて"水星基地に辿り着けた理由、そしてエリクトとスレッタの間に横たわる"8年間"のタイムラグを吸収する手段として、「偶然に因る量子テレポーテーションの不完全な実現」を提唱する。

 不確定要素(O)がまとわり付く限り、LF-03単体で地球圏から水星までの単独航行は難しいと言わざるを得ない。そもそもスレッタ&エアリアルが前提条件(h)においてL4にあるアスティカシア高専まで輸送船で移動している。
 上記を鑑みるに、アド・ステラ世界に巨大な物体を瞬間移動させる技術は存在しない=量子テレポーテーションは実現していない、と考えるのが自然と思われる。

とても雑な量子テレポーテーションの説明

 "テレポーテーション"とは日本語に直すと"瞬間移動"、という意味だ。
 特定の物体を遠く離れた場所へ一瞬で移動させる、夢……というより現実には存在し得ない架空の技術だ。
 ここで出てくる量子とはとても小さな物質やエネルギーの単位である。……書いている私にもわけがわからない。
 物体をとても小さな状態の粒子(=量子)と情報(=送り出した物体の設計図)に変換して移動させ、移動先で設計図を見ながら元の物体に組み立て直す、これが量子テレポーテーションのものすごく雑な概要である。

 下の画像が量子テレポーテーションの比較的わかりやすい説明である。

imidas時事用語事典「量子テレポーテーション」の項目より

 水星の魔女世界において、太陽系内でもっともパーメットが存在する場所は水星である。
 小説版プロローグにおいて、LF-03は「そもそも回線が開いていない」にも関わらずドミニコス隊の艦艇ユリシーズ(の艦内放送)をジャックし、一方的にエリクトの歌声(=音声による情報)を流している。 
 水星の魔女公式サイトの説明より、パーメットは個々のパーメット間で情報を共有する性質を持つ。
 LF-03が対ドミニコス隊戦で見せた性能(=一方的な情報の押し付け)を利用し、かつ"情報を共有する"パーメットの性質および水星基地が保有するパーメットの量を認識して、LF-03が自己判断で水星採掘基地に向けて量子テレポーテーションを敢行したが、相互通信の確立に時間がかかり(上の図で⑦の部分)、アド・ステラ世界において結果8年という時間が経過したのではないか?と私は考えている。

(ここから2023/04/12追記)
 上の図にLF-03とサマヤ親子、水星基地の量子コンピュータを当て嵌めると、アリス役をLF-03が、ボブ役を水星基地の量子コンピュータが務める。テレポーテーション対象の猫役がサマヤ親子、キャンバス役がパーメットだ。
 このように配役した場合、少なくとも三つの問題点が残る。

 まず、送信役のアリス(LF-03)とボブ(水星基地の量子コンピュータ)に性能差があった場合量子テレポーテーションは果たして成功するのか?である。
 文末に記した参考文献をどれだけ読んでもこの点に関する解答は見つけられなかったので、考えてもどうにもならない。むしろフィクションとして押し通せ、なのかもしれない。
 あるいは、エリクトの脳をコンピュータに見立て、LF-03のコンピュータと直列状態につないで擬似的なスーパーコンピュータとなって量子化への演算を行ったのではないか、という見方ができる。

 二つ目は、LF--03とサマヤ親子を量子化するエネルギーはLF-03の動力部分だけで賄えたのだろうか、という点だ。
 モビルスーツ一体+人間二人を量子化するのにどれだけのエネルギーが必要なのか、皆目見当が付かないので、こちらについては何も考えないことにする。

 三つ目は送信役のアリス(LF-03)自身が猫役(サマヤ親子)と共にテレポートしてしまった場合、上の画像で示されたボブ(水星基地の量子コンピュータ)との間の⑥の通信は成立するのだろうか?という点である。
 先に記した量子テレポーテーションが不完全だった理由"相互通信の確立に時間がかかった"可能性について、その理由はゆりかごの星に記述のある"太陽から飛来する荷粒電子(=磁気嵐)による水星基地のシステム誤作動"ではないか、と想定する。
 LF-03(と直結されたエリクト)は量子テレポーテーションを敢行し、宇宙空間に漂うパーメットを利用して、たすきリレー状態で水星基地を目指した。
 宇宙空間ではそこを航行した艦艇やモビルスーツが消費し吐き出した噴射剤の残留物質と共にパーメットがまだらに残留する。
 繰り返すが、パーメットは情報を共有する性質を持つ。
 量子に変換されたアリス(=LF-03)と猫(=サマヤ親子)はこの残留するパーメットを通じて水星基地を目指して移動を続ける。サマヤ親子達は量子に変換された瞬間、視聴者及び水星の魔女の登場人物達が存在する三次元とは異なる次元に移動するため、時間の経過認識について変化する(が、それを自身で観測できない)。これについてはボブ側(=水星基地の量子コンピュータ)も同様で、ボブがサマヤ親子達を観測できなければ、彼女達の身の上にどれだけの時間が経過したのかを、視聴者も水星の魔女の登場人物達も認識できない。

 本来、理論通りなら量子テレポーテーションは一瞬(+移動結果の観測情報受け取り)で完了する。しかし、不規則に発生する磁気嵐によって水星基地の量子コンピュータは誤作動を起こし、サマヤ親子達の情報受信および存在観測に手間取った。異なる次元を旅したサマヤ親子達にとってはそれがたとえ一瞬のことであっても、三次元の現実では8年の時間が過ぎていた……。
 エリクトとスレッタの間に横たわる8年のタイムラグはこうして発生したのではないだろうか。

「テンペスト」は誰の身に降りかかったのか

 水星の魔女はシェイクスピアの作品「テンペスト(あらし)」をモチーフにしたアニメである。プロスペラ(テンペストの主人公プロスペローの女性名)やエアリアル(プロスペローの使役する妖精エアリエルの読み方違い)、データストーム(storm=あらし)など、テンペストを想起させる単語がいくつか配置されている。

 テンペスト(あらし)は、シェイクスピアの物語中ではナポリ王(デリング)とファーディナンド王子(ミオリネ)および同行者の身に降りかかっている。だが、水星の魔女はテンペストの物語全てをなぞっているわけではない。
 実のところ、水星の魔女においてテンペストに見舞われたのはプロスペロー(プロスペラ)とミランダ(エリクト)にすり変わっているのではなかろうか。
 海に流される(=フォールクヴァングを脱出し宇宙をさまよう)プロスペロー親子(=サマヤ親子達)は神のお導き(=LF-03が起こした量子テレポーテーション)により無人島(=水星基地)へやってきたが、テンペスト(=水星の磁気嵐)に阻まれて上陸がすんなりとは行かなかった。
 こう考えてみるのはどうだろうか。
(ここまで2023/04/12追記)

8年の時差が何をもたらしたか

 サマヤ母子は水星に逃げたくて逃げたのではなく、本人たちの知らない間に発生した量子テレポーテーションによって飛ばされた先がたまたまヴァナディース事変から8年後の水星だったのではないか、と私は妄想する。

 ゆりかごの星の描写によると、水星の老人達のすべてがサマヤ親子の受け入れに反対していたわけではない。
 しかしながら水星はデリングの膝元、とも記述がある。サマヤ親子が何者であるか老人達が理解しているのなら、水星に到着した時点で即刻身柄を拘束されるか、あるいは受け入れ拒否をされてもおかしくはない、と思われる。
 老人達が迷いながらも、半ば反対しながらもサマヤ親子を受け入れたのは、ヴァナディース事変から8年の時間が経過していて、かつエルノラの説明を聞いた老人達が「何言ってんだこの女、8年前のフォールクヴァングにいたとか意味不明じゃねーか」と首をひねった挙げ句、エルノラに同行していたエリクトを見て人道に反するか否かで葛藤した挙げ句に渋々受け入れた……ガンダムがSFだと言うならこのあたりに落ち着くのではないかと身勝手に結論づける。

第六章 デリングの狙い、プロスペラの目的

エリクトはどこに消えた?スレッタは誰?

(ここから2023/04/12追記)
「新世紀エヴァンゲリオン」というアニメーションの話を例えに出す。
巨大な人造人間エヴァンゲリオン(以下"エヴァ"と記す)のパイロットは14歳の少年少女が選ばれる。パイロットに選ばれるには他にもいくつか条件があるが、その一つに「エヴァに乗ること、遺物の中に取り込まれることを受け入れられる=自我の境界線が曖昧だが、自己判断力が期待できる」ぎりぎりの年齢が14歳と定義づけられた……と見ている。

 翻って、水星の魔女に出てくるエリクトはまだ4歳。自分が誰かなんて満足に理解できていない。LF-03に乗ってレイヤー33を突破したからといって、自分がLF-03と繋がれて、どういう状態になっているかなんてまるで理解していない。
 フォールクヴァングでドミニコス隊のハイングラを迎撃した際、エリクト自身がLF-03に攻撃指示を出したのか、それともLF-03がエリクトの手を操作したのか彼女にはわかっていない。

「ろうそくみたいできれいだね」この日は彼女の誕生日。
それとも、新たな生命体「LF-03」が生まれた日なのだろうか

 自分が誰なのか曖昧な認識のままLF-03と接続状態にあるエリクトは、量子テレポーテーションで突入した、時間も空間もさらに曖昧な異次元という環境の中で自分という個体の境界線を見失い、LF-03のコンピュータの中に入ってしまったのではないか?
 代わりに、生まれたばかりのLF-03の自我がエリクトの体の中に入ってしまったのではないか?
 エルノラもLF-03とエリクトの数珠つなぎ状態に入っているが、彼女は明確に自分自身を認識できているので、この意識の溶け合いには入らなかったのではないか。
 古典的な言葉で表記するとLF-03とエリクトだけが「俺がお前でお前が俺で」状態に陥ったまま水星基地での観測が終了し、サマヤ親子達が現実世界で実体化したため、エリクトは自分の肉体に戻れなくなったのではないか、と見ている。

 私の結論として、エリクト(の意識)はLF-03のAIの中。
 「4歳までのエリクトの記憶を持たない、LF-03の未熟な自我を持ったエリクトの肉体」がスレッタとなる。
 これで、エリクト=スレッタでありエリクト≠スレッタが両立する環境が完成する。
(ここまで2023/04/12追記)

経営者デリングvs元ヴァナディースのプロスペラ

 消息不明だったサマヤ母子が事変から8年後の水星に突如として現れたことで、偶然により発生した量子テレポーテーションの実現がにわかに信憑性を帯び、デリングが"クワイエット・ゼロ"として現象再現に乗り出したのではないか、と私は考えている。
 計画はプラント・クエタで遂行中だ。あの巨大な縦穴はLHCで、量子テレポーテーションの実験および再現を行うために作られたのではないだろうか。
 デリングはベネリットグループ総裁であり、結果をシビアに求める厳格な経営者であることは、本編1話で赤字を出しつづけたパルネオ社に対して「そうだ、潰れろ」と言い放ったことからも明白だ。
 その彼が、襲撃を命じたヴァナディース所属の研究員であったプロスペラ=エルノラが持ち込んだ計画に対して時間と大金を投資するなら、それは必ず彼と彼のグループに相応の利益を齎すものでなければならない。
 上記から逆算しつつ、第2章の前提条件(h)を鑑み、アド・ステラ世界には量子コンピュータと量子通信(=情報の超長距離即時転送)が存在しながら、量子テレポーテーション(=物体の超長距離即時転送)が実現していないことに着目して、この膨大な妄想ができあがった。
 量子テレポーテーションはつまるところ、A.S.122時点において「片道切符のタイムマシン」、「(モビルスーツサイズで実行可能な)超長距離航行手段」、そして「超長距離航行を実現する新たなるエネルギーの入手」の3つを同時に実現する。低迷の兆候を見せはじめたグループを再生させるための起爆剤としては、とても魅力的に見えるだろう。
 もしこれが実現できれば、アド・ステラ世界の輸送インフラを一手に握ることができる。ゲームチェンジャーとしては末恐ろしい存在だ。

 しかしながら、プロスペラの思惑は異なるところにあるものと思われる。
 デリングの「今は私の計画だ」という言葉に対して含み笑いで「もちろんです」と答え、2期PVでは「戦いも、失う悲しみもない世界へ」と嘯いている。
 そもそも「エアリアルのネットワーク構築パターンを反映させた」と言ってデリングに渡したあの記録メディア、中に記録されているデータは本当にそれだけだろうか?
 あの中にデリングから計画を取り上げるためのバックドア(裏口侵入プログラム)が仕込んであるのでは?

(2023/04/12追記)プロスペラはデリングの重篤状態をこれ幸いにと、ミオリネに接触し、計画の遂行を持ちかけている。だが、それは本当に「デリングの計画」だろうか?デリングの庇護が期待できない今こそ、エルノラの悲願である「復讐」の時が来たのではないだろうか。

結局それってSFとは名ばかりの妄想ですよね

 第二章の前提条件(a)と(k)の食い違いは、量子テレポーテーション実行に伴う実体化の遅延で説明が付く。しかし、スレッタが4歳までの記憶を一切合切失っている(ようにみえる)ことについては、何一つ説明が付かない。
 むしろ別人と言ってしまった方がまだマシなのではないかとさえ思える。
 肉体は同一人物、しかし人格は別人。
 解決手段は妄想で良いならいくらでも出てくるが、どれも決め手がない。

 だいたい、LF-03が量子テレポーテーションを敢行するに至ったとして、その理由が本編内では見つけられない。そもそも量子テレポーテーションを行ったのかどうかも不明のため、あくまでもこれは全てただの妄想として終わりにする。

(2023/04/12追記)量子テレポーテーション自体は機動戦士ガンダム00で既に扱われているので、制作陣はネタ被りを避けて別の方法で8年のタイムラグを片付けていると思います。

参考文献:
「重力とは何か~アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る」著者 大栗博司
「The Report of 機動戦士ガンダム水星の魔女 Season1」編:ニュータイプ編集部
「小説 機動戦士ガンダム水星の魔女1」著者 高島雄哉
「小説 ゆりかごの星」 著者 大河内一楼

「金星から水星までの距離はどのくらい」惑星ナビ

「太陽系データノート2016」 名古屋市科学館

「金星は地球に最も近い惑星ではない」という主張、ではどの惑星が地球に最も近いのか? Gigazine 2019年03月13日 20時00分の記事

LHC - 素粒子物理国際研究センター

情報通信研究機構 量子ICT研究室

量子テレポーテーションをゆる~くわかりやすく解説。どこでもドアは実現可能?-おっさんフォース

量子テレポーテーション | 時事用語事典 | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス

量子ってなあに?:文部科学省

量子テレポーテーション-Wikipedia

水星が持つ特異な磁場の謎を解明(2023/04/12追記)


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