旨い酒とは
あんたにとって、酒ってのはどんな存在だい?
この間、唐突に息子に訪ねられたんだ。
「お酒って何が美味しいの?」
そりゃあ~………と答えようとして、うまく言葉に出来ない自分がいたんだよね。
最初に酒を呑んだ時、きっとそこには旨いもへったくれもなかった気がする。
ただ、仲間たちとばか騒ぎするのに必要な儀式みたいなものだった気がするわけだ。
それがいつのまにか、日々酒を呑むようになり、ヘベレケになるまで呑んで泥のように眠るのが習慣になっちまっている。
そもそも嗜好品に過ぎないはずの酒が必需品に化けたってわけだ。
今回は酒について考えて見る回だ。
ちっと、ヘビーかしらんが、付き合ってくれよな。
俺が酒に求めているもの
ぶっちゃけて言うとだ。
酒を呑みすぎることは百害あって一利なしなことは誰だって知っている。
それでもだ。
俺たちの生活と酒ってのは断絶することは決してない。
ヒトがヒトとの関係性で生きている以上は、どうしたって人間関係のストレスってのがついて回る。
そのストレスを酒で薄めてなんとかしのいでいるってのが現実なんじゃないかとも思うんだ。
もちろん、俺みたいなガラスの心臓みたいなやつじゃなけりゃ、酒に逃げるなんてことをしないでもすむのかもしれないけれどね。
「逃げる」という癖
で、この「逃げている」って感覚があるうちはまだ良い。
問題は「逃げる必要もないのに逃げる癖がついたとき」だよな。
意識的に逃げているときは、その逃げる対象が明確にわかっている。
この時点なら、「逃げる」という選択肢の他に「対応する」という手段が残されている。
ところが癖で逃げている場合、もはや何から逃げているのかも曖昧な状況で、得たいの知れない何かから「逃げなきゃいけない」という恐怖観念に押し潰されてしまっているってことだもんな。
まず見るべきもの
そんな訳の分からないものにすりつぶされるのもシャクにさわるので、その訳の分からないものに形を与えることが必要だよな。
「なんとなく不安だ」
って気持ちを分解して、
「体調が悪くて作業がうまく出来ない」
とか
「やらなきゃいけないことをど忘れすることが増えた」
とか、少しだけで良いから具体化の方向にずらしてみる。
ちょっとだけ、「なんか対策を打ってみるか」って気になってくる。
これは不安と言う漠然としたものから言語化することで問題を局所化することで得られるメリットだよな。
と同時に、これはもう一つの意味を持つ。
俺たちヒトは世界をそのままに受け止めることはキャパ的に相当難易度が高いってことだ。
そう考えると、以前こんな記事を書いていたことを思い出した。
この記事の中でも書いたけれど、中学校の恩師が卒業式の後のホームルームで授けてくれた言葉。
これが全てを表してくれている気がしたんだ。
この言葉を思い出した上で、まず俺たちが向き合わなければならないのは何なのか?
たぶん、自分が矮小な存在であるってことだよな。
なぜ矮小なのか?
どう矮小なのか?
自分は何を知り、何を知らないのか。
自分は何をやってきて、何が出来なかったのか。
そいつが見えてきたとき、俺は息子の「お酒って何が美味しいの?」という質問に答えられるのかもしれない。
逃げるためじゃなく、立ち向かうためのお酒はきっと格別な味がするんだろうから。
なあ、あんたはどうだい?
あんたの酒は旨いかい?
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