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やさしさが守るもの

あんたはオウム真理教の地下鉄サリン事件の記憶ってあるかい?

俺は当時学生で新宿に通っていて、場合によったら被害にあったかもしれないワリカシギリギリの立場だったんだよな。

なので、その日の騒然とした雰囲気みたいなものを肌感として覚えている。
自分の命について考えるほどにね。

あの事件が起きてから日本の世界観が変わったってのがあると思う。

街中からごみ箱は消え、新興宗教が関わり合いを持ってはいけない集団という認識が広まったと思う。

なんなら、キリスト教や仏教ですら距離を置きたいと思うヒトが増えたと思うんだよな。

なんでこんなことを考え始めたかと言うと、こんな動画を見たんだよ。

詳しくは動画を見てほしいんだけれど、印象的なのは取材をしたオウム信者は善良だったって言葉だったんだ。

いやいやいや、あの社会に対する攻撃行動を起こした集団に属していたヒトが善良だって?

今回は善良なヒトが攻撃行動を起こすってことについて考えてみる回だ。

こいつはヘヴィーなことだから結論なんぞ出るわけないんだけれど、ちっと考えてみようぜ。


善良とは何か

まずもって、善良なヒトってどんなヒトなんだろう?

性質のよいこと。性質がおだやかですなおなこと。また、そのさま。「—な市民

出展:上記サイト

おだやかですなおなことか。

少なくともオウム真理教の信者のヒトと直接話をしたヒトの印象としては「おだやか」だったんだな。

実行犯である林受刑者ですら「善良」だという印象だったと動画の中では語られている。

これは一体どういうことなのか?

善良なヒト

俺がこの動画を見た印象だけになるけれど、少なくとも精力的に取材をしたという森達也さんがウソをついているとは思えなかった。

本気で「善良」だと感じていたんだと思う。

「それは洗脳されてしまったんだ!」なんて意見も出るかもしれない。
でも、そもそも洗脳って言葉そのものがレッテル張り過ぎないって一面もあるわけじゃんか。

とりあえず今は森達也さんの「このヒトたちは善良なヒトだ」って印象があったってことだけを事実として考えてみようぜ。

言葉の定義だけ見れば、オウム真理教の信者はだいたいおだやかだったわけだ。

そのおだやかさを持ったヒトが社会に攻撃をしてしまった。

なぜだ?

麻原彰晃が悪い?
それってホントに本質か?

現に麻原彰晃という存在がこの世からいなくなっても、オウム真理教の後継団体の一つは麻原彰晃を正しい存在だったとして組織を割ってまで存続しているじゃないか。

「ヒトの命を奪いなさい」と命令したヒトのことをそこまで正しいと思って組織が維持できる理由って何なんだ?

「善良なヒト」が許せないもの

こっからは完全に俺の想像だけれどさ。

きっと「善良じゃないヒト」が許せなくなっちゃったんだろうな。

おだやかな気持ちで過ごしているヒトにとって、おだやかではないヒトってのは受け入れがたいってのは、まあ想像できるじゃんか。

もちろん、そのおだやかではないヒトを排除するために社会に攻撃するってのは社会維持の観点から許されざる罪だとは思う。
実際にオウム真理教の実行犯およびそれを先導した幹部のヒトは法に基づいて罪を背負った。

ただ、ちっと振り返ってみるとさ。

俺たちも過去に罪を犯したことのあるヒトを遠ざけたいって感覚はあるじゃんか。

そして、俺たちは大小あるかもしれないけれど完全に罪を犯していないっていうことが出来るヒトはそうそういない。

そう考えるとだ。
俺たちは究極的には誰とも近づきたくないってことになっちまう。

それは違うって感覚があるじゃんか。

たぶん考えるべきなのはさ。
「なぜ罪と遠ざかりたいではなく消し去りたい」と思っちまったのかってことだと思うんだよな。

これも俺の想像に過ぎないんだけれどさ。
きっと「自分を受け入れないヒト」が怖かったんだろうな。
そして、その受け入れない理由が自分のおだやかさだったと。

だとしたらさ。

俺たちに求められているものは一つしかない。
「目の前の誰かのやさしさを見つけること」だ。

だって完全に誰かを拒絶するなんてことは本質的に難しいはずだと思うからね。
そのやさしさを見つけることが出来なかったから、同じおだやかさを持っているように見える集団で固まっちまう。

そんな集団の柔軟性が極度に失われたときに、悲劇は起こってしまった。
そんな風に思ったんだよね。

だからやさしさを俺たちは探し続けないといけないんだと思うんだよな。

誰かが誰かを助ける姿。
誰かが誰かを心配する姿。

そんな姿を探し続けることが大切なんじゃないかって思ったんだ。

なあ、あんたはどう思う?

日常的なやさしさを感じ続けることでヒトは攻撃を減らすことが出来ると思うかい?


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