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ミステリをつまもう『和階堂真の事件簿 TRILOGY DELUXE』


ゲーム概要

『和階堂真の事件簿』は、ミニマルなドット絵で描かれるミステリーアドベンチャーシリーズです。

プレイヤーは主人公・和階堂真として様々な事件に挑み、謎を解き明かしていきます。
聞き込みでヒントを集め、推理パートで情報を整理し、論理を展開して事件に挑みましょう。

それぞれのエピソードが「約1時間でクリアできるアドベンチャー」をコンセプトに開発されており、誰でもお手軽にミステリーをお楽しみいただけます。

Steamストアページより
https://store.steampowered.com/app/1562910/_TRILOGY_DELUXE/?l=japanese

プレイ時間

Steam実績24/24で全4話クリアまで6時間

ネタバレなしでご紹介

まずは未プレイの方向けに本作を紹介しよう

本作は元々iOS, Android向けに配信されていた推理アドベンチャーのスマートフォンアプリシリーズだ。
『TRILOGY DELUXE』はSwitch,PC向けにシリーズ全3話の「処刑人の楔」「隠し神の森」「影法師の足」を収録の上、完全新作エピソード「指切館の殺人」を加えたコンプリートパックとなっている。

それぞれのエピソードのプレイ時間は1~2時間に収まる範囲で、手軽に良質なミステリを楽しむことができる。
ゲームシステム的には、横スクロールで現場捜査や事情聴取によって手掛かりを探す捜査パートと、その捜査パートのインターバルとして情報を整理する推理パートがある。

推理パートは選択肢式だが、おそらく間違えてもデメリットはほぼ無いので、クリアできないということはないだろう。
難易度もプレイしているときは高く感じなかったが、それはこのゲームが丁寧にプレイヤーへの情報提供と推理の機会を与えることで、「自分で事件を解いている」感を感じさせてくれるつくりをしているからだろう。

推理ゲームや推理小説が好きな人には是非ともお勧めしたい。
ミステリでは馴染み深いカルト宗教だったり因習のある村だったり、館モノを一通り楽しむことができる。

※これからプレイする人で、PC版をプレイする人には一つアドバイス。
 メモをセットして人と話すときは、その人の腰あたりをクリックするようにするといい。頭とかは判定がない時があるようで主人公が移動してしまうので。

ここから先は先はネタバレありとなるので、未プレイの人はご注意ください


ネタバレありで各話レビュー

『処刑人の楔』

『処刑人の楔』は首無し殺人事件を追う和階堂警部を描いたカルト宗教モノのエピソードだ。

被害者はカルト宗教の信仰者で、病気の妻を救いたいがために自宅を宗教団体に寄付しようとしていた男、そして加害者はカルト宗教の教祖であることが捜査を進めるうちに判明し、エピソードは終わりを迎えるかに思われた。

だが、実のところこの和階堂警部は和階堂真の祖父であり、まだ幼い和階堂真が祖父の話に疑問を持ったところから、事件の真相がようやく明らかになる。
事件の真相は、被害者が教祖で、加害者が信仰者であった。
和階堂真の祖父は、半ば偶然にも殺人を犯してしまったカルト被害者を逃がすため、事件の情報は恣意的に歪められてプレイヤーに与えられていた。
所謂叙述トリックである。

そこまでシナリオが凝っていると思っていなかった私はこの叙述トリックに見事にはめられてしまった。
が、爽やかな読後感がある良エピソードだった。


『隠し神の森』

『隠し神の森』は、人里離れた村の大家の当主が、神隠しが噂される森で死んでいるのが見つかったことから始まる因習村モノエピソードだ。

オカルトじみた雰囲気や数多い登場人物の思惑が絡む、個人的に一番好きなエピソードになった。
特に最後の推理シーンは、背後から迫るお隠し様と、その正体を暴くシーンづくりが印象的だ。

終盤近くに明らかになるが、本エピソードにも叙述トリック的な演出の真相が明かされる。すなわち、推理のインターバルで挟まれる住民へと聞き取りと、和階堂が煙草を吸うシーンは、同じ神隠し事件を調べていた和階堂真の祖父の姿だった。
和階堂って煙草吸うんだなと思っていたら、ふとした会話で和階堂真は煙草を吸わないことが明らかにされたところから、そういうことだったのか!となるのが気持ちいい。


『影法師の足』

『影法師の足』は、とある人身売買組織の幹部が立て続けに殺される事件の捜査に関わることになった和階堂が、黒幕の手にかかり殺人犯に仕立て上げられるところから始まる自己弁護モノエピソードだ。

なんとか現場から逃げ出した和階堂だったが、黒幕に気絶させられた際に記憶喪失に陥り、過去の自分が残した捜査記録をもとに再び1から独自捜査をしていくことになる。

警察の目をかいくぐりながら、人身売買組織と警察の繋がりを探っていくが、次第に過去の自分の行動がまさしく組織と繋がっていた警察のように見え、ついに和階堂は自分がこの事件の犯人ではないかと疑うようになる。

が、結局この和階堂も和階堂ではなかった。
和階堂と共同捜査をしていた探偵・安養寺だったのだ。

ということで本エピソードも叙述トリックだった。
まあここまで来ると本エピソードにも叙述トリックがあると思っていたのでそこまで驚きもしなかったが、ドット絵で描かれたキャラだからこそできる大胆なトリックになっていた。


『指切館の殺人』

『指切館の殺人』は和階堂が休暇で訪れたペンションで起こった、傷害・殺人事件を解き明かす館モノエピソードだ。

館の中に存在する曰くつきの井戸と、オカルトな噂で有名なペンションは別名・指切館とも呼ばれ、その日もとある大学のオカルトサークルの面々や、オカルト雑誌のライターなどが泊まっていた。
そこで発生した指を切断されるという事件と、続いて発生した殺人事件を解き明かすため、和階堂は動き出す。

そして安心してほしい、本エピソードとの和階堂は和階堂真である。
今回は叙述トリック的要素はなく、純粋な推理を楽しめる。

ここまでのシナリオをプレイしてきた人へのサービス的に、「処刑人の楔」のカルト宗教が再登場したり、「影法師の足」などで出てきた探偵助手の来歴も明らかになる。


まとめ

本作は1~2時間で1エピソードを楽しめる手軽さに重きをおいたミステリアドベンチャーとなっている。
システム的に凝っているところは特になく、推理難易度もエピソードを読み進めれば自然にわかるレベルではあるので高くはない。
そのため他のレビューを見ると、ADVというよりもノベルゲーと評する人もいるようだ。確かにそれも分かる。

また、ボリュームを抑えるためか各事件の規模はあまり大きくない。
劇中で次々と連続殺人が発生することもない。
個人的にはもっと登場人物がいてもっと人が死ぬくらいが好きではある。
とはいえシナリオはとても面白いし、ゲームプレイの慣れなども必要ないので、ミステリもののゲームを探している人には広くお勧めしたい。


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