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お母さんのような生き方はしたくない

朝ドラ「虎に翼」が面白くて、毎朝の楽しみになっている。
来週から、主人公の寅子は法律を学び始めるのだが、学友もいろんな意味で濃そう(笑)
ますます面白くなりそうで期待が膨らむ。

さて、私がこれほどまでに心動かされたのは、きっと私が寅子と同じく母をみて女の生き方に首をかしげたことがあるからだろう。

今朝の放送で、寅子とお母さんとのやりとりに、思わず「わかる。わかるけど、トラちゃん(主人公をすでに「ちゃん」づけで呼ぶほどのハマりよう)それは言っちゃいけないわ」と、くぅぅぅぅ~と噛み締めた。

私もずっと思ってた。
「母のような生き方はしたくない」って。
結婚は男に搾取されるだけ。女にとって地獄みたいなもんだって。
だから、私は一人で生きて行くんだって。

でも、それは決して口にはしなかった。
母の生き方を否定してはいけない。そんな権利、誰にもない。

父よりもはるかに賢い母。
出身大学だって卵の白身と黄身のカロリー差ぐらいあるのに、母はいつも父をたてて、父の頭のいいふりした中身のない話に延々と付き合って、いつも父が「いい気持ち」でいられるように尽くしていた。

「言えばいいのに」って思ってた。

「家事育児は女の仕事。女が男に命令するな。女が男より偉そうにするな。女は男のご機嫌とってろ」と男が主張するなら(あくまで我が家のことです。時代錯誤もいいところ)、どうして母は「男ならもっと仕事しろ。男ならもっと稼げ。女に稼いでもらわないと家も保てないような男が偉そうに家長ぶるな」って言わないんだろう。

子供の頃は不思議でならなかったけど、今ならわかる。
言えば家庭崩壊だもの。
母は、私や弟のためにひたすら我慢してたんだとわかる。
でもそんな両親の姿は、男性に対して歪んだ憎しみを私に抱かせてしまったように思う。

私の友人には、私のように自分の親を通して女の生き方に疑問を持つ子が何人もいた。
「母が父の何をそんなに怖がっているのかわからない」
「父が当たり前にしていることが、母にはなぜか許されない」

大企業に勤めている友人が、地元の銀行にお勤めの男性との見合い話がきたと話してくれたことがある。彼女は相手の男性と会うこともなく、即、断ったと言う。
彼女は憤っていた。

彼女の態度を不快に思う方は多いだろう。
私も話を聞いたときは「いい人か悪い人かは学歴やお勤め先だけではわからないよ」と言ったが、今ではつまらないことを言ったと後悔している。
彼女が憤る原因は、そんな浅いところにないのだ。

彼女のご家庭はお父さんが大企業にお勤め、お母さんは専業主婦。そしてお兄さんがいた。
お兄さんは大学進学したが、彼女は短大へ進学した。でも彼女が大学に行きたがっていたことを、私は知っている。

彼女とは中学時代からの同級生なのだが、私も彼女も家事をよくした。
むしろ家事レベルは彼女のほうが上だったかもしれない。
私は外で働く母の代わりに自分流で家事を担っていたが、彼女は丁寧に母親から教わっていたから、料理などは圧倒的によくできた。

「私は女だから勉強もそこそこでいいって、兄は大学進学したけど私は短大でいいって言われて。その代わり、私は家のことたくさんさせられてきた。兄は勉強だけしてればいいのに。そんな私が男に学歴を求めて何が悪いの?家事育児が女の役割なら、勉強して大企業に勤めて稼ぐのが男の役割でしょ?」

彼女の言うことは一理あると思う。私は彼女を責められない。
責めるとしたら、大学に行きたいという彼女の意志を尊重せず、あくまで「女の価値は勉強ではなく家事ができること」という自分たちの価値観を彼女に押しつけた親御さんだと思う。

彼女の悔しさが私にはわかるのだ。

私の弟も一切、家事をしなかった。むしろ親が「させなかった」と言ったほうがいい。
時間の限り、弟は勉強させてもらえたし、父が酔って家にいろんな人を連れて帰っても、弟は寝かせてもらえるのに私は起こされてお酒の相手をしなくちゃいけなかった。それは女の役目だと、大人たちは当たり前のように子供の私に教えてきた。
私が地元の公立学校にしか進学させてもらえないのに、弟は私立の中高一貫校に進学させてもらえたし、浪人も許されたし、予備校にも通わせてもらえたし最後は大学院にまで行かせてもらえた。

「男女平等だから、男の学歴や勤め先が女より格下でもなんら不思議じゃない」って言うなら、女性という理由だけで子供だった私や彼女に家事なんてさせるべきじゃなかったし、女性にも男性と同じように勉強に専念できる環境を与えるべきだったし大学進学させるべきだったのだ。

でも。皮肉なことなんだけど。

母を通して女の生き方にずっと首をかしげてきた私に、ともすれば男性そのものを恨んでしまいそうになっていた私に、風穴を開けてくれたのは女性ではなく男性だった。
そんな彼らの言葉を書こうと思ったけれど長くなったので、次回に。