賞レースにもっと絡んでもよかったのでは? 『正欲』稲垣吾郎、新垣結衣。

U-NEXTで『正欲』再見。

基本、映画は一期一会と思う方だが、あるシーンに再び出会いたくなり、そのためだけにまた観ることも。

本作では言うまでもなく、稲垣吾郎と新垣結衣の緊張の糸が張り詰める検事室での対決。そしてそれに続く恍惚となるほど見事なエンディングショットだ。どこにでもいそうな常識人の男を演じていながら、酷薄な父親へと転化した稲垣吾郎。これまでの明るいイメージを封印。まるで死んだ魚のような目で生気を消してみせた新垣結衣。役作りにかけたふたりなくしてはこの映画は成立しなかっただろう。

一方、そのおかげでそれ以外の名シーンとも再会。大学教室でようやくの胸の内を開く東野絢香に対して残酷なまでの無関心さをあからさまにする佐藤寛太。観ていて心が張り裂けそうになるが、ここの描写を疎かにしないからこそそれぞれの特殊とも言える性癖や苦しみが伝わってくるのだ。やはり、その人となりに正対し、深く掘り下げた映画は違う。

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