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【読書感想文】イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」

読書感想文その2。

なぜ読んだのか

ちゃんと書くと長くなりそうなので要点だけ書く。

先日、同僚(A氏)に設定した目標を達成できないと相談(雑談?)されました。(弊社では評価制度にMBOを採用しています。)

所属している事業部ではスクラム開発を行っており、チームで何かを実装するためには、最も優先して取り組むべき課題であるとスクラムチーム全員で合意する必要があります。

そのため、A氏が目標を達成するためには、まずはスクラムチーム全員に最も優先度が高い課題だと認知してもらう必要性があります。

A氏が設定した目標は、技術的負債の解消と言われる類のもの(コードスメルの解消、リリースフロー改善等)で、最初の一歩として事業的な課題(プロダクトの機能追加、改善、顧客要望等)と比較できる状態のものを、プロダクトオーナーやスクラムチームに提示する必要があります。

課題はROIによってソートされるため、少なくともリターンインベストメントの仮説を立てなければなりません。

相談を受けた時点での私のスタンスとしては、技術的負債のROIを計測するのは非常に困難であり、そもそも同じ土俵に立つことができない。というものでありA氏の相談を解消するアイデアは一切で出てきませんでした。

私が相談相手としてあまりに役立たずでA氏に申し訳ないという思いと、課題の見極めと仮説の立て方の糸口なればという思いで本書を手に取りました。(自分が同じ課題に直面した時にどうするかを考えておくためでもあります。)

要点だけ書くと言いながら長文になった...

本の内容

名著なのでちょっとググるだけ良質なレビューがいくらでも出てくるので端折る。

感想

全体的な感想としては、課題の立て方、切り方共にまだまだ至らないところだらけというのを痛感させられた。

もし私が、技術的負債を課題としてプロダクトオーナーやスクラムチームに提示する場合、下記の3ステップで十分に検討した後に提案する。

1. 今の事業的な課題を俯瞰してみた時に、複数の課題に影響している技術的負債をピックアップする。

一度に複数の課題を解決できないならば意味がない。一つの課題にしか関連しないものは今やる必要性がない。

2. 技術的負債が解消された場合、どうなるのか(どのような課題が解決し誰がどう嬉しいのか)が明確な仮説を立てる。

理想の状態について考えるのではなく、何が解決するのかにフォーカスする。

3. 技術的負債を解消する方法について検討し、解決可能な事を確認する。

解決策が無い課題を議論しても意味がない。インベストメントの指標になる。

と書いてはみたものの、現状のプロダクトで今すぐにコレを解決するとハッピーになる技術的負債というのは思いつかなかった。

今回の最大の気付きは、事業課題が数年先に渡って明確になっているという事が最も重要だと思った。なぜなら思いついたかのようにプロダクトに機能追加していく場合、技術的負債が将来的にどのようなインパクトを生むのかが皆目検討もつかない。そのような状況で技術的負債を最小限に収めつつ開発していくのは至難の業では無いだろうか。

引用

下記に技術的負債のROIを仮説立てるための道筋として役立った記述を引用していく。

答えを出す必要があるのかから議論する

「何に答えを出す必要があるのか」という議論からはじめ、「そのためには何を明らかにする必要があるのか」という流れで分析を設計していく。
分析結果が想定と異なっていたとしても、それは意味のあるアウトプットになる確率が高い。
「これは何に答えをだすためのものかの」というイシューを明確にしてから問題に取り組まなければ後から必ず混乱が発生し、目的意識がブレて多くのムダが発生する。

仮説を立てることが重要

強引にでも前倒しで具体的な仮説を立てることが肝心だ。「やってみないとわからないよね」といったことは決して言わない。

仮説を立てる3つの理由

▶1 イシューに答えを出す
そもそも、具体的にスタンスを取って仮説に落とし込まないと、答えを出し得るレベルのイシューにすることができない。
▶2 必要な情報・分析するべきことがわかる
仮設を立てない限り、自分がどのレベルのことを議論し、答えを出そうとしているのかが明確にならず、それが明確になっていないことにすら気づかない。
▶3 分析結果の解釈が明確になる
仮説がないまま分析をはじめると、出てきた結果が十分なのかそうでないのかの解釈ができない。

イシューは言葉で表現する

イシューと仮説は紙や電子ファイルに言葉として表現することを徹底する。
言葉にすることで「最終的に何を言わんとしているのか」をどれだけ落とし込めているかがわかる。
言葉にする時に詰まる部分こそイシューとしても詰まっていない部分であり、仮説をもたずに作業を進めようとしている部分なのだ。

言葉で表現するときのポイント

▶「主語」と「動詞」を入れる
主語と動詞を入れた文章にするとあいまいさが消え、仮説の精度がぐっと高まる。
▶「WHY」より「WHERE」「WHAT」「HOW」
●「WHERE」…「どちらか?」「どこを目指すべきか?」
●「WHAT」…「何を行うべきか」「何を避けるべきか?」
●「HOW」…「どう行うべきか?」「どう進めるべきか?」
「WHY=〜はなぜか?」という表現には仮説がなく、何について白黒をはっきりさせようとしているのかが明確になっていない。
▶比較表現を入れる
「AかBか」という見極めが必要なイシューであれば、「〜はB」というより「Aではなくて、むしろB」という表現にする。
何に答えを出そうとしているのかが明確になる。

よいイシューの条件

▶1 本質的な選択肢である
それに答えが出るとそこから先の検討方向性に大きく影響を与えるものだ。
▶2 深い仮説がある
「常識を覆すような洞察」があったり、「新しい構造」で世の中を説明したりしている。こうすると、検証できれば価値を生むことを誰もが納得できる。
▶3 答えを出せる
「きっちりと答えを出せる」ものでなければならない。「重要であっても答えを出せない問題」というのは世の中にいくらでもあるのだ。

イシュー特定のための情報収集

コツ① 一次情報に触れる
誰のフィルターも通っていない情報のことだ。
コツ② 基本情報をスキャンする
自分の思いだけで「決め打ち」をしないことが大切だ。
コツ③ 集め過ぎない・知り過ぎない
情報収集の効率は必ずどこかで頭打ちになり、情報があり過ぎると知恵が出てこなくなるものだ。

イシューを分割する

多くの場合、イシューは大きな問なので、いきなり答えを出すことは難しい。
そのため、おおもとのイシューを「答えの出せるサイズ」にまで分割していく。
イシューを分割するときには「ダブりもモレもなく」砕くこと、そして「本質的に意味のあるかたまりで」砕くことが大切だ。

ストーリーラインを組み立てる

イシューを分割し、そのサブイシューに仮説が見えれば、自分が最終的に何を言わんとするのかが明確になる。
典型的なストーリーの流れは次のようなものだ。
1 必要な問題意識・前提となる知識の共有
2 鍵となるイシュー、サブイシューの明確化
3 それぞれのサブイシューについての検討結果
4 それらを統合した意味合いの整理

ストーリーラインの2つの型

▶「WHY」の並び立て
最終的に言いたいメッセージについて、理由や具体的なやり方を、「並列的に立てる」ことでメッセージをサポートする。
重要な要素を「ダブりもモレもなく」選ぶようにする。
▶「空・雨・傘」
●「空」…〇〇が問題だ(課題の確認)
●「雨」…この問題を解くには、ここを見極めなければならない(課題の深掘り)
●「傘」…そうだとすると、こうしよう(結論)
というようにストーリーを組んで、最終的に言いたいこと(ふつうは「傘」の結論)を支える、というかたちだ。

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