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学習効果の高いオンデマンド学科教習を実現するために

教習原簿のデジタル化と合わせて、ライブ配信によるオンライン教習は7月からスタートしていましたが、弊社も、やっと録画配信によるオンライン教習を開始する準備ができました。本当はもう少し早く実現したかったのですが、検討すべきを検討し、事前に仕込むべきことをしっかり仕込んだうえでのスタートとなったことで、業界の中では少し遅めのスタートとなってしまいました。

8月の豪雨に被災して復興のためのコストもかさむ中で、取組の優先順位を下げることも一瞬考えました。しかし、こういった何が起きるかわからない状況の中だからこそ、お客様にご迷惑をかけずに教習を行うためには、もっとスピーディに取組むべきだったという思いに至り、被災以降より取組を加速させてきました。

この記事では、大町自動車学校グループがオンデマンド学科教習の準備にあたって何を考えて何に取組んだのかを述べていきたいと思います。

今から一年前、河野行政改革担当大臣が、自動車学校の学科教習がオンラインでの実施を唐突に言及され、業界ではオンライン学科への動きが加速しました。正直な私の受け止め方は余りポジティブではありませんでした。オンラインの方向には賛成ですが、残念ながら殆どの自動車学校が、これまでの学科教習を単純に録画しただけのオンライン教習をやっていると耳にしています。加えて、警察庁が提示しているルールも、オンライン学習の本質を全く理解していないとしか言いようのない頓珍漢なルールとなっています。法律を杓子定規に捉えるとやむをえない部分もあると思いますが、アホかと言いたくなるルールもあります。本来は、時代に合わなくなった法律を見直すことを先に見直したうえで、オンラインの良さを生かせる環境の整備を先に行うべきですが、それがなされないままのオンライン教習は自動車学校協会にとって決してよいことではありません。
一方、歪な形で業界のオンライン学科教習とはいえ、時計の針が少しだけ前に進んだのも事実です。今更、時計の針を戻すことも難しいでしょう。そういった背景から、私は「既存のルールの中でオンライン学科教習の最も学習効果の高い方法を業界に示そう」という決意のもと、オンライン学科教習の実施を経営計画の中に盛り込みました。
これまで対面で行ってきた学科教習を、コストをかけてオンライン学科教習に変更するためには、当然ながら、投資に見合う効果を求めます。目標とする成果は下記の2点です。

①繁忙期の生産性(同じヘッドカウントで回せる技能教習数)の10%向上
②学習効果の向上

これらの成果が出すために、これまで考えながら準備した取組につて、ここからは述べていきたいと思います。

①繁忙期の生産性の10%向上については、対面の学科教習を全て廃止して、録画配信に切り替えれば14~15%の生産性向上は見込めると考えました。しかし、②③に取組む工数を確保するためには、10%増くらいに留め、4~5%は②③のためにワークロードを回そうと考えました。この4~5%についてですが、オンデマンド学科教習を実施するために発声する事務コストもここに含まれます。②③に取組むためには事務コストを最小限にするということも考えなければなりません。事務コストの1つの要因としては、昨年時点では紙の教習原簿に学科教習の記録を残していたため、学科教習をデジタル化すると紙とデジタルのインターフェースにコストが掛かってしまいます。そこで、取組の優先順位としては、当時から進めていたデジタル教習原簿を最優先の取組としました。誰もが直ぐに飛びつき、そこそこ簡単に実現できる安直なオンライン学科教習の一番乗りを目指すより、長い間業界が出来なかった教習原簿のデジタル化の一番乗りを達成した方が、弊社のブランディングとしてもプラスになるのかという考えもありました。話を元に戻すと、デジタル教習原簿を先に実現して4~5%のワークロードを可能な限り②③に割けるように、不要な事務コストを減らせるインフラ作りをしたという点が、弊社の生産性向上に関する取組の大きな特上になると考えています。

②学習効果の向上を実現すること、これが学科を録画配信に切り替えるうえで最も重視しなければならないことだと思っています。そのためには、対面での学科教習、ライブ配信による学科教習、録画配信による学科教習によるPros and Consを意識した取組にすることが最も重要と考えました。対面での学科教習とライブ配信のPros and Consは類似していると思います。最大のProsはインタラクティブ性、Consは属人性でしょう。対面での学科教習とライブ配信の差として、情報伝達の効率は対面の方が優れているでしょう。こういった特性から対面の授業で50分で伝えている内容は、ライブ配信の場合では50分では十分に伝わらないと考えるべきでしょう。では、録画配信のPros and Consはどの様な点でしょう。Prosとしては安定した品質、Consは50分の動画を見ることはユーザーにとってとても辛いという点、対面やライブ配信はこの点をインタラクティブ性でカバーできます。しかし、録画配信ではインタラクティブ性以外の方法で、この辛さをカバーしなければなりません。それは「50分飽きさせない工夫」を如何にするかということが重要と考えます。

なのに、今まで教室でやっていた授業を録画して配信というやり方で録画配信を始めた自動車学校は、正直全然ダメだと思ってます。また、こういった録画配信の特性も考えず顔認証で教習生をモニタリングさせるという行政が定めたルールも思考が化石すぎて愚かとしか言えないと思っています。

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※ ここから先は、弊社が取組んだ工夫、オンライン学科教習の本質を考慮して定めるべきルール、オンライン学科教習の品質保証について述べています。

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