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なぜ仮免許証のデジタル化が必要か

自動車学校の業界団体の研究活動グループ(全国指定自動車学校協会 長期ビジョン研究会)のメンバーの方から、昨日「仮免許証」のデジタル化について、見解を求められましたので、述べさせていただいた内容をまとめてみました。


①仮免許証のデジタル化の実現方法

現在、免許証とマイナンバーカードの統合が進められています。ここで構築されている仕組みに仮免許証をのせる、これが現実的に実現できる唯一の方針と考えています。これが実現されると、将来的にマイナンバーがデジタル化された際に、仮免許証もデジタル化される目算が高くなります。大事なことは、デジタル化というよりはマイナンバーとの統合です。
仮免許証の発行にあたっては警察側と自動車学校のデータ通信が必要となりますので、警察側は仮免許用のAPIを準備し、セキュリティの観点などから問題なしと認定を受けたベンダーのシステムだけ、必要情報を送信し結果を受取れるようにするなど、セキュリティは強固なものにする必要があると考えています。
自動車学校は修了検定合格者のマイナンバーカード番号や必要情報を警察側に送信し、警察側で”仮免許保有”というパーミッションを付与する処理を行い、結果を自動車学校側に返します。自動車学校側で構築が必要となるのは、APIをコールして結果を受取り、配車システムに反映するとともに、合格者に発行済みであることを通知する業務の流れです。システム開発は教習所システムベンダーが行えばよく、それ程サイズの大きい開発にはならないと考えています。
上記の仕組みが構築出来たら、同じ仕組みの中で修了 / 卒業証明書のペーパーレス化も実現できると考えています。


②セキュリティの観点での必要性

仮免許証をデジタル化しなければならない理由は2つあると考えています。
1つ目の理由はセキュリティです。現状の仮免許証の運用は、情報セキュリティにしっかり取り組んでいる企業の尺度で考えると、あまり好ましいものではありません。仮免許証は自動車学校で印刷するケースが多く、免許証には住民票の記載と完全に一致する住所を記載するために、自動車学校では住民票の写しを預かっています。修了検定が終わると、仮免許証を印刷して、必要書類とともに、管轄する警察署は免許センターに車で届けに行き、警察側で必要手続きがなされて自動車学校に持ち帰り、合格者に仮免許証を手渡されます。このアナログ手続きは情報の機密性・完全性・可用性のいずれの観点からも脆弱と言わざるをえません。更に、住民票の印刷のための情報は、自動車学校の教習システム等に打ち込んでおく必要があります。中小企業の情報システムの中には情報セキュリティの観点で信頼性に欠ける場合もありえますし、何より、個人情報をあちらこちらにコピーするという行為は情報セキュリティ上のリスクを高めてしまいます。
エストニア等デジタル先進国の行政システムには「ワンスオンリー」という考え方が徹底されていて、同じ情報を重複インプットや重複保持をしない仕組みとしており、情報セキュリティの観点から優れているだけではなく、データの活用のしやすさにもつながります。おそらく、現在、デジタル庁を中心に進めている行政のDXもこの思想に基づいていると思いますので、仮免許証に関しても、「ワンスオンリー」で不必要なデータサイロを生み出さないようにするのが、セキュリティの観点では好ましいと考えます。


③デジタル化促進の観点での必要性

昨年、大町自動車学校が全国に先駆けて教習原簿をデジタル化しました。これは、自動車学校業務のデジタル化を進めるうえでの1つの布石だったのですが、紙の教習原簿と並んでデジタル化を阻害するのが現状の仮免許証です。仮免許の発行のプロセスは前述の通りですが、このプロセスを回すには、住民票の写しのやり取りなどアナログな作業が必ず発生します。そして、紙の住民票から印字のために住所等を打ち込む人手の作業が必ず発生します。日本の住所表記は文字数が多く、旧字などは外字を用いていることもあり、OCRで自動読み取りは非常に困難です。これが人手の作業が発生する要因です。
このアナログ作業は、入校時に行われ、システムに打ち込んだ際に記載ミスがないか重複チェックを行っています。入校の手続きの中で大きな工数を取られる作業です。この作業があるため、入校の手続きはオンライン化を進めてもあまり合理化が図られません。加えて、何度も何度も記載ミスがないかのチェックポイントが業務の過程の中で設けられていて、アナログ作業を二重にも三重にも増やしてしまっています。
前述の「ワンスオンリー」の考え方に基づくと、自動車学校内に外字を含んだ住所のテキスト情報など持つ必要はありません。仮免許証がマイナンバーカードと統合されれば、自動車学校の不要な手作業を生む「外字問題」が解決可能となります。


④まとめ

ここまで述べた通り、仮免許証のマイナンバー統合は、自動車学校の業務を進めるにあたって、とても大きな意味があることです。
デジタル庁発足以降、行政手続きのデジタル化の議論が活発になされている今、自動車学校業界として、行政に強く要望していくべき事案だと私は考えています。今この時に何としても実現しなければこの先50年くらい禍根を残す程大切なテーマだと思います。長期ビジョン研究会で研究にとりくまれている皆様には「業界としてとても重要な課題である」という共通認識を生み出せる研究成果を期待しております。

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