満たされた人事例集

満たされた人は、世の中のことを信頼している。傷つくようなことを言われても、少し虫の居所が悪かったのかな、と思ったり、疲れて余裕ないのかなと思う。または、"え、そのリアクション面白い"と思ってはははと笑う。これはその人のことをバカにしてるなどそういったことではない。刺激に対して、ニコニコしてるのである。例えば抱き上げたネコが、キーっと怒って引っ掻いてきたとする。ジタバタするとする。その姿を見て、可愛いと思うような形である。その感じ方には愛がある。

満たされている人に不安な人が接すると、段々と落ち着いていく。最初は、自分のことなんて興味がないんだろうと、様々なジャブを満たされた人に打つ。こんな変な人がいたんだよ、こんなやっかいな人がいたんだよ、と話す。その話す内容は他の人の事のように話すが、自分のことである。満たされた人がどのようなリアクションを取るのか様子を伺うためである。

すると、満たされた人は、あーそれは大変だったねぇ。なるほどねぇと相槌を打つ。きっとこの人はこういうことがあったのかもしれないね、と話す。話す内容は、良いも悪いも言わない内容である。ただ、その人が想定するこういった困難があったかな?といった形である。またそれに対して、それは本人にとっては大変なことだけれども、実はとるに足りない事なのだよと話す。なんとかなるよということを知っている。

そのような満たされている人の意見を聞いて、あれれこうして受け止める人もいるのだなと不安な人は思うようになる。しかし、不安な人は満たされている人にあらゆることを試してみる。

例えば自分の話をたくさんする。こんなことがあった、あんなことがあった。自分がどんなに大変で、困難な道を歩んできたかの話である。悲劇のヒロインだ。もう自分の育ってきた、置かれてきた環境は特別だ。普通ではなかったと主張する。

満たされた人はその話を聞く。うんうん。なるほどね。ひたすらに聞く。不安な人は、自分の置かれた環境に対してどう思う?と尋ねる。大変だったねと言って欲しい。どんなに困難だったかわかってほしい。

満たされた人は、それに対してはたいへんだったねぇ、そうねぇと言ってそれ以上のことを言わない。言いようがないと思っているからである。しかし、不安な人はもっと意味づけしてほしい。白黒つけてほしい。あいまいなのとが不安になる。時には私のことをあなたはわかってないと主張する。

そうであっても、満たされている人はただそばにいる。変わらずそばにいる。不安な人はもっと白黒つけてくれる人がいい、今すぐにこの状態を解決したいと躍起になる。そうして同じく不安な人と付き合う。不安な人は変に優しく、変に人を傷つける。その態度は安定していない。

そうして不安な人に囲まれて不安な人は、ボロボロになって満たされた人の元に帰ってくる。帰ってくる頃にはやる気もなくなっている。無気力になっている。ボロボロになったら自然に満たされた人しか残っていなかった。

満たされた人は以前と同じく、うんうんと話す。同じように話す。天気が今日は晴れてるね、散歩でもいく?といった形である。そうして生活をしていると、不安な人が当初競っていた殺気じみた雰囲気も自然ととれている。不安な人がより満たされるようになっている。

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