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【第0回】はじめに

 私は仕事柄、自身の大学はもちろん、他大学や専門学校の先生向けに授業をより良くするための研修や学習会、コンサルティングを提供させていただくことがあります。

 とりわけ看護の専門学校や、大学の看護学科で研修をさせていただくと、先生方の教育に対する熱心さや、先生ご自身の学ぶ意欲の高さに圧倒されることがあります。研修には研修の良さがありますが、より多くの看護教員のみなさんに授業改善のヒントを提供できればと思い、記事を書くことにしました。

看護の授業で学生の学習意欲を高めるには??

 いろいろなテーマで研修をさせていただきますが、中でも看護の先生方に関心を持っていただける最たるテーマの1つが… 「学生の学習意欲を高めるには??」です。看護領域の学生は、卒業後の目標が明確であるため、他分野の学生と比べると学習意欲が高い傾向にあります。しかし、「試験対策以外の学習には消極的…」「もっと積極的に自ら学んでいってほしい」など、学生の学習意欲を一層高めるような教育を実現していきたいという思いを看護の先生方も抱かれるようです。

 この問いに答えるべく、教育工学(インストラクショナルデザイン)の分野で広く知られているARCSモデルを活用して、学生により意欲的に学んでもらうためのヒントを紹介します。ARCSモデルは、学習意欲を構成する4つのカテゴリーの頭文字をとって名付けられました。

Attention(注意)…学生の注意をひきつけるには?
Relevance(関連性)…学生にとって意義深い学びにするには?
Confidence(自信)…学生が成功できるよう助けるには?
Satisfaction(満足感)…学生が学び続けたいと思えるためには?

 そして、各カテゴリーにはそれぞれ3つずつ、学習意欲を高めるためのヒントが示されています。つまり、4×3=12のヒントということになります。そこで、今回は「看護の授業で学生の学習意欲を高める12のヒント」とし、A・R・C・Sの4つのカテゴリーをサブテーマとして記事を書いていくことにしました。

往復書簡型(私⇔看護教員)で連載

 しかし、私がただ解説するだけでは面白くないですし、実際の授業現場に応用するにはハードルが高いと思われることも多いでしょう。そこで本マガジンは、複数名の看護教員の先生方にもご協力をいただき、往復書簡のようにやりとりしながら書き進めさせていただくことにしました。具体的な進め方は以下の通りです。

(1)筆者による説明
(2)説明に対する看護教員からのコメントや質問
(3)筆者による質問への回答やフィードバック
(4)看護教員による実践報告
(5)筆者による実践報告へのフィードバック

 (1)まず私からARCSモデルについて、4つのサブテーマにわけて説明させていただきます。(2)その説明を受けて、看護教員の先生方から「(無意識に)できていること」、「質問」、「これからやってみたいと思うこと」などを挙げていただきます。(3)先生方のコメントに対し、私からレスポンスいたします。(4)先にあげていただいた「これからやってみたいと思うこと」を実際にどのように試したか、試してみた結果はどうだったかをご報告いただきます。(5)その内容や結果について私からコメントさせていただきます。

協力してくださる看護教員のご紹介

 今回協力してくださるのは、千葉中央看護専門学校の5人の先生方です。

 1人目は、横田栄子先生です。学校長でいらっしゃいます。基礎・成人・災害看護を専門とされ、看護学概論等の授業もご担当です。教員経験30年の大ベテランです。2人目は、梅澤明美先生です。副学校長でいらっしゃいます。母性看護を専門とされ、教員経験15年です。そして、酒井優先生(仮名・教員経験3年)、青葉みどり先生(仮名・同2年)、板倉凌先生(仮名・同2年)です。

 専門分野も教員経験数も多様な、幅広い先生方にご協力いただけるということで私もとても楽しみです。先生方の授業で、「学生の学習意欲が確かに上がった!」「授業(学習)の質が高まった!」と言っていただけるよう、ご一緒に授業改善を進めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

次回予告:「授業で学生の注意(関心)を引き出すには?」

 いよいよ次の記事から本題に入っています。まずは、ARCSモデルの「A」(Attention)を扱います。どんな授業でも、まずは学生の注意や注目を集めたり、関心を引き出すこと、集中力を維持させることは重要です。どうすれば、学生の注意(関心)を引き出せるでしょうか。3つのヒントをご紹介します。

*次回第0~5回は、まとめて公開させていただき、その後は、定期的に(毎月曜日・木曜日に)更新してまいります。
*2023年12月14日に全てのやり取りが完了する予定です。2か月ほど、学びの時間をお楽しみください。

 

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