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田丸雅智『海色の壜』

この記事は、日本俳句教育研究会のJUGEMブログ(2019.08.31 Saturday)に掲載された内容を転載しています。by 事務局長・八塚秀美
参照元:http://info.e-nhkk.net/

松山市の「坊っちゃん文学賞」が、16回からショートショートのコンテストとして生まれ変わるそうで、審査委員長の田丸雅智さんが、松山市出身で新世代ショートショートの旗手として活躍中だと知り、読んでみたくなりました。

一編を数分で読めるショートショートというジャンルの存在は知っていましたが、私自身はあまりなじみがなく、興味深く読み始めました。「簡単に言うと『短くて不思議な物語』、もっと言うと『アイデアと、それを活かした印象的な結末のある物語』」をショートショートというのだそうです。

『海色の壜』は、「海を閉じ込めよう」とした作品群を含めた20編の作品集です。一番好きだったのは松山の三津を舞台にした「海酒」で、完成度からも、また、夢や郷愁、そして、読者それぞれの海への思いを載せることのできる点からも、心地よく読み進められた作品でした。どうやら「海酒」は、2012年樹立社ショートショートコンテストで最優秀賞に輝き、2016年にピース又吉氏主演で短編映画化もされた作品だったようで、納得! でした。

その他、狂気的な心の闇をのぞくような「蜜」や、どんでん返し的不如意なエンディングにで驚かされる「壁画の人々」などが好きでした。全体を通しては、せつなさを感じながらも、前向きな希望を感じさせたり、人のよすがとなる救いのようなものを描いていく作家さんだなと感じました。

ショートショートを書く醍醐味は、と尋ねられると、ぼくはいつもこう答えます。
たくさんの自分の好きなものや大切な思い出を、理想の形に変えて人に伝えることができること、だと。

あとがきより