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素手で野鳥を捕る

いわゆる鳥獣保護法の正式名称は、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」です。

鳥獣保護法と略されますが、歴史的なルーツは狩猟法なので、同法の根幹には「そもそもすべての動物は狩猟可能」という時代がベースになっています。その中で、別途捕ってもいい種や場所や期間、使ってもいい道具を指定している訳です。

その結果、一般の人々にはほとんど狩猟は無縁なものになり、限られた人が限られた期間と限られた場所で限られた種類を捕ること「だけ」認められている、ように見えます。

しかし、一見野生動物にやさしそうなこの法律ですが、実は大きな抜け穴がります。

詳細に見ていきましょう。

環境省のページには次のようにあります。以下引用です。

狩猟鳥獣は、狩猟期間中に、鳥獣保護管理法で鳥獣の捕獲等が禁止されている区域に該当せず、かつ次の要件を満たす場合には、捕獲をすることができます。」

狩猟期間は本州では11月15日~2月15日の間です。

狩猟鳥獣は以下の通りです。(一日または期間内の頭数制限あり)

鳥類(26種):カワウ、マガモ、カルガモ、コガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、クロガモ、エゾライチョウ、ヤマドリ(亜種コシジロヤマドリを除く)、キジ、コジュケイ、ヤマシギ、タシギ、キジバト、ヒヨドリ、ニュウナイスズメ、スズメ、ムクドリ、ミヤマガラス、ハシボソガラス、ハシブトガラス

獣類(20種):タヌキ、キツネ、ノイヌ、ノネコ、テン(亜種ツシマテンを除く)、イタチ(オスに限る。)、シベリアイタチ、ミンク、アナグマ、アライグマ、ヒグマ、ツキノワグマ、ハクビシン、イノシシ、ニホンジカ、タイワンリス、シマリス、ヌートリア、ユキウサギ、ノウサギ

そして、鳥獣保護管理法で鳥獣の捕獲等が禁止されている区域は以下の通りです。

「鳥獣保護区、休猟区、公道、自然公園特別保護地区、原生自然環境保全地域、都市公園、社寺境内、墓地、垣、柵その他これに類するもので囲まれた土地(所有者の承諾があれば可能)、作物のある土地 (所有者の承諾があれば可能)」

法定猟具は以下の通りです。

網・・・むそう網、はり網、つき網、なげ網(要網猟免)
わな・・・くくりわな、はこわな、はこおとし、囲いわな(要わな猟免許)
銃器・・・装薬銃(ライフル銃・散弾銃)、空気銃(要第一種銃猟免許)、空気銃(要第二種銃猟免許)

法定猟具を使用して捕獲をする場合は

「狩猟免許を所持し、かつ狩猟者登録を受けた者は、法定猟法により狩猟鳥獣を捕獲することができます。
垣・さくその他これに類するもので囲まれた住宅敷地内では、当該住宅の占有者の承諾があれば、誰でも法定猟法(銃器を除く。)を使用して捕獲することができます。
法定猟法以外の方法(手捕り、捕虫網など)であれば、誰でも捕獲等を行うことができます。
(ただし、毒物、劇物、爆発物などの危険猟法を使用する場合は、環境大臣の許可が必要)。」

以上で引用を終わります。

お気づきでしょうか。鳥獣保護法では、「囲われた自分の所有地内で、狩猟期間中に、狩猟可能な鳥獣を、銃以外の法定猟具を使って、あるいは道具を使わずに捕獲すること」は禁じていないのです。

自宅の庭で真剣白刃取りのようにスズメを捕まえることは無許可でOK、ということです(ただし飼養するには別の許可が要ります)。

とはいえ、武道の達人でも素手で野生の鳥や獣を捕まえるのはほぼ不可能でしょう。そんな人がいたら石器時代にはヒーローになれます。

では次のような場合はどうでしょうか。

例えば、自宅のガラス窓にキジが衝突し、自宅の庭に落ちてじたばたしている。

これを手づかみで捕獲することは、良識は別として法的には問題ありません。

しかし、「キジを衝突させる」ことを目的として庭にガラス板を設置し、衝突したキジを捕った場合、違法になる可能性が出てきます。ガラス板が違法猟具(許可されていないタイプのわな)と見なされるわけです。

これは防鳥ネットやハエやネズミを捕るための粘着シートでも同様で、「鳥を捕るために設置したか」、つまり作為の有無が争点になるでしょう。

ちなみに、「ドブネズミ、クマネズミ及びハツカネズミは、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律が適用されません。したがって、いつでも捕獲をすることができます。また、農業又は林業に係る被害を防止する目的に限り、ネズミ科全種又はモグラ科全種を随時捕獲することができます。」という附則がありますので、防除のためにネズミやモグラを自分の畑で捕るのは自由です。

狩猟鳥獣を含めた野生動物全体は無主物(持ち主がいないもの)として国が管理しています。

いくら自分の敷地内で、法的に拘束されていないからと言っても、素手でむやみやたらに捕りまくる人が現れたなら、おそらく何らかの法改正や解釈の変更が行われるでしょう。

また、捕まえた鳥獣に、不必要に苦痛を与えるような扱いを加えた場合、動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)違反となる場合もあるでしょう。

そうならないためには、捕まえないことですね。

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