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富山県内で調査した鳥類データをクラスター分析して遊んでみた

最近、統計ソフトRを使ってのクラスター分析や、分類樹木の作成ができるようになったので、なんだか嬉しくって手持ちの鳥類調査データをRに投げ込んではいろんな絵を作って遊んでいる。

もちろん本来は、適切な変数の設定や適切な鳥類種に絞っての分析が必須なのではあるが、とりあえず全投げ込みで上手くいっていない要素を考えるのもアリ、なのだと思う。

過去にあちこち調査したうち、比較的データが整っている県内25か所のラインセンサスデータから4~7月の「繁殖期」の出現種と個体数のデータ344件を抽出して出現個体数の合算から相対優占度を計算し、クラスター分析にかけて「比較的似た鳥類相が見られる調査地」と「比較的同所的に見られる鳥類種」という二つのクラスター分析をしてみました。


まず調査地の分析です。
大雑把にグルーピングしてみると、左から

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富山市 古洞池
富山市ファミリーパーク
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富山市八尾 野積川 八十島橋
富山市八尾 野積川 布谷橋
立山町 栃津川 栃津集落
富山市八尾 野積川 松瀬橋
富山市大沢野 猿倉山(谷津)
富山市大沢野 猿倉山(抜開地)
富山市大沢野 猿倉山(林道)
富山市山田 湯谷川
上市町 上市川ダム
立山町 白岩川ダム
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小矢部市 子撫川ダム
上市町 大岩~浅生地区
氷見市 宇波川 宇波地区
小矢部市 子撫川 宮島峡
朝日町 笹川上流
南砺市 小矢部川 福光温泉周辺
富山市山田 牛岳登山口
南砺市 刀利ダム
富山市八尾 野積川 猟師ヶ原発電所
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氷見市 宇波川河口
舟橋村
富山市 長沢 山田川
富山市八尾 野積川 高熊合流地点
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の順です。
ファミリーパークはやっぱり古洞池と鳥類相が似通っていますね。

注目は右端の4か所で、平野部や河口、八尾地区など差はありますが共通点は「調査範囲に森林が全くない」こと。


クラスター分析の結果に基づいて各調査地にグループナンバーを振り、各環境要素の有無や数値をもとに分類樹木を作ると……


やっぱり森林の有無によってまずグループが区別されていることがわかります。標高や海からの距離、河川の有無よりも鳥類相の決定にまつわる役割が大きいようです。

あたりまえか。

つぎに鳥類種のクラスター分析です。


細かすぎてわかりづらいですが、トーナメント表みたいになっている枝で近くにいる種同士が「同じ場所で同時に見られることが多い種」です。

定量的な調査で記録された前129種のうち、唯一「同じ場所で同時に見られることが多い種」仲間が全くいなかったのが、図の左端に位置するサメビタキです。これはおそらく、出現個体数も出現回数も少なかったうえに、渡りでの通過個体が多く繁殖期に定着していないため、分析してもどんな鳥類相の仲間にも入らなかった、というところだろうと思われます。

他にごくごく近しい一緒に出現ペアを見ていくと、「イカルチドリとセッカ」「タシギとコムクドリ」「シロチドリとカモメ」「ゴジュウカラとマミジロ」など、出現機会の少なさから重みづけが狂ったような取り合わせが見られます(シロチドリとカモメ、ゴジュウカラとマミジロに関しては確かに生息域は似通っていますが)。

今後分析を進めるうえでは、これら「定量調査ではあまり見られない鳥」の生息/非生息を調べるという目的を除いては、これら少数データが全体に与える影響をどう最小化していくか、というのが一つの課題になってきそうです。

あと、カモ科やウ科やカモメ科は個体数が多いので、水環境の鳥はその他とはわけて分析するのがいいかもしれません。

定量的な調査は全て一か所に8回以上行っているので調査回数による誤差は回避できていると考えていますが、といっても林道のラインセンサスとほとんどスポットセンサスのような湖沼での調査の違いや、センサス範囲の面積の違いも分析結果に影響がないとは言えません(影響を省くために絶対数ではなく相対優占度を用いてはいるのですが)。適切なデータの組み合わせを用いるか、データの補正のしかたを考える必要があるかもしれません。

遊んでいるうちに色々な課題が見つかる夕方でした。

野鳥の話なのに鳥の写真が一枚もなくてごめんなさい。


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