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動物園のステルス値上げ

世の中、物価が上がり続けている。

セールの時でもカップ麺や缶詰が100円を切ることはなくなったし、サラダ油や小麦粉も値上がりしたままだ。ガソリンはずっとリッター160円台が続いている。

燃料が値上がりしているのだから、当然、流通コストも値上がるし、光熱費のかかる卵やハウス栽培の野菜類、密閉畜舎の肉類も値が上がる。消費者は辛いが、生産者も卸も流通もみんな辛いのだ。

そこで、というわけでもないのだろうが、直接の値上げを控えて、かわりに商品の内容量を減らしたり、原材料の質を落としたりして同じ値段で提供しているものも多いそうだ。お菓子や飲料などで多い気がするが、直接的な値上げに対して、見えない値上げ、「ステルス値上げ」と呼ばれるのだそうだ。ステルス戦闘機は目では見えるので、この名称はどうかと思うのだが。「光学迷彩値上げ」または「隠蔽形態値上げ」という名称を提案したい。

話を戻すと、ここで重要なのは「料金は変わっていないのに中身が減っている・中身の質が落ちている」ことも「値上げ」という概念でくくられるということだ。

これは小売業や飲食店に限らず、サービス業全般に当てはめることができる。

例えばテーマパークで、入場料は変わらないのにアトラクションの数が減っていたり、老朽化した建物がそのままだったり、人件費を削るために清掃の頻度を落としたりするのは「ステルス値上げ」と言うことになるだろう。

では、動物園はどうだろうか。

だいたいの動物園は入園料が設定されている。来園者は、その一定額のお金を動物園に支払うことで、見ることができる動物の展示をめぐるという「サービス」を受け取るわけである。

普通に考えると、動物が減ったり、施設が古くなったり、工事中や感染症対策などで一部エリアを閉鎖している場合には、その分入園料を割り引くのがセオリーだろう。

しかし、入園料は下がらない。多くの場合、入園料は条例などで固定されているので、簡単には変えられないという事情もあるものの、受け取れるサービスの量や質が下がっても入園料は変わらない。

これは完全に「ステルス値上げ」である。

しかも、一般的なステルス値上げは「内容量を減らしました」「ネギ増しは有料になりました」「原材料を変えました」等とちゃんと明記するものだが、それすらされていないことも多い。

入園料を払って入園してから動物舎に行くと「展示休止中」と貼り紙があって、お目当ての動物が見られなかった、という事例は多くの方が経験しているのではないだろうか。

これは動物園としては姿勢を正すべき問題だと思う。

入園前にあらゆる媒体を使って事前に説明し、それでも料金が変わらないことに対するおわびの一言もないのなら、それはあまりにも大名商売だろう。「動物との出会い体験はプライスレス」とか言っている場合ではないのだ。

きちんとした告知とお詫び、これがまずひとつ。

そしてもうひとつ大事だと個人的に思うのは、入園料を上げられないのも、老朽化した施設を改修できないのも、動物を急に増やせないのも理解しているのであれば、あまり予算を割かずにできるサービス、例えば行動展示の充実や解説パネル、イベントガイド等でその穴を埋める努力をする、ことである。

動物園は営利企業である前に社会教育施設なのではあるが、そこにあぐらをかいてはいけない。

消費者に対するサービス、という視点は必ず必要なのである。



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