【試合評】延長12回、雨中の激闘を制した12回戦~2016年7月23日○楽天イーグルス6x-5ロッテ

延長12回、満塁の神様、降臨

今、楽天には「代打の神様」もいれば、「満塁の神様」もいる。延長12回裏、最後に決めたのは、イーグルスきっての満塁男、藤田一也だった。

スコアは5-5だった。ウィーラーの2打席連続の一発、三好匠のEウィングに飛び込むプロ1号3ラン。序盤3回まで合計5得点。3点リードして終盤を迎えた12回戦は、7回、イーグルスの勝利の方程式が崩れた。

二番手・福山がエラーも絡んで4本の安打を浴びせられ3失点。試合は振り出しに戻る。いやが応でも「逆転のロッテ」の奔流を意識せざるを得ない展開になっていた。

以降は両軍決め手を欠く。そのまま今季10度目の延長戦に突入し、12回表までスコアボードには綺麗にゼロが並ぶ展開。そして12回裏を迎えていた。

先頭打者・島内が回またぎ大嶺祐からストレートの四球で1塁に歩く。続く8番・嶋によるプッシュ気味の送りバントが三塁手と大嶺祐の中間に転がり、そのまま誰もいない三遊間へ抜ける僥倖バントヒット。無死2,1塁になり、ここでロッテ側は左腕・松永を火消し投入する。

楽天も代打策。バントの下手な9番・阿部に代えてピンチバンターの足立がしっかり一犠を決め1死3,2塁の形を演出すると、ロッテは1番・岡島を歩かせて塁を埋めての敬遠策。1死満塁で2番・藤田vs松永の左対左対決になった。

両者の通算対戦成績は15打数6安打の打率.400と藤田に軍配が上がる好条件。さらに例年満塁に強く、今季も6打数3安打7打点2三振の戦果を挙げていた藤田に打順がまわったところに、サヨナラ勝ちを確信させる光明を感じた。

やはり、「満塁の神様」だけに運をも味方につけるのだ。

0-2から打って出た当たりは完全なボテボテ。飛んだコースがもっと松永の正面だったら本塁封殺されていたこと確実だった。当たりが強めで正面を突いていればホームゲッツーの可能性もあった。

しかし、そのボテボテが一塁線寄りに転がる僥倖となる。マウンドを慌てて降りてきた松永は、折しもこの回から振り始めた雨の影響で滑らせたのか、球が手につかずファンブル。この間、3塁から島内が試合を終わらせるホームを悠々踏み、楽天が今季4度目のサヨナラ勝ちを飾った。適時失策でのサヨナラ勝利は球団史上初である。(楽6x-5ロ)

チーム成績は4位、85試合35勝48敗2分の勝率.422。

ゲーム差は1位・ソフトバンクと21.0、2位・日本ハムと17.5、3位・ロッテと11.5、5位・西武と0.5、6位・オリックスと4.0になった。

各種戦績は、7月6勝8敗、後半戦1勝3敗、ロッテ戦4勝8敗、コボスタ19勝17敗1分、延長戦3勝5敗2分としている。

両軍のスタメン

ロッテ=1番・荻野貴(右)、2番・岡田(中)、3番・角中(左)、4番・デスパイネ(指)、5番・井口(一)、6番・ナバーロ(二)、7番・鈴木(遊)、8番・田村(捕)、9番・中村(三)、先発・関谷(右投)

楽天=1番・岡島(右)、2番・藤田(二)、3番・ウィーラー(左)、4番・アマダー(指)、5番・銀次(一)、6番・今江(三)、7番・島内(中)、8番・嶋(捕)、9番・三好(遊)、先発・辛島(左投)

逆転のロッテを止めた、松井裕、宮川、金刃の完全無欠ブルペンリレー

このカード、楽天は5度の逆転負けに見舞われるという、今季リーグ最多の逆転勝利を誇る「逆転のロッテ」の奔流に飲み込まれていた。その勢いを止めたのが、9回10回を任された松井裕樹、連投になった11回の宮川将、そして12回をピシャリ抑えてお立ち台にも登った金刃憲人のブルペンリレーだった。9回以降は4イニング連続、1人の走者の出塁すら許さない完全シャットアウトの零封リレーになった。

もし本戦負ければ、借金は今季最多タイの15に逆戻りになるところだった。それだけに本当に大きな仕事になった。

まずは松井裕だ。最速150kmを計測したスピードボールにチェンジアップを始めとした変化球が活き、3奪三振の2イニング三者凡退投球。ロッテ戦は5月14日・15日以来の登板になったが、あの悪夢を完全払拭するかのような無双のピッチングになった。

連投になった宮川も素晴らしい。本戦でもストレートはほとんど145km以上。ストライク先行の攻める投球で8番・田村から始まるロッテ打線を2奪三振の三者凡退投球。田村と言えば、この3連戦で既に5本の安打を放つほどバットが振れていたが、最後はアウトローの切れ味最高のスライダーで泳がせて仕留めた。

そして3勝目を挙げた金刃。2番・細谷、3番・角中、4番・デスパイネの上位をテンポ良く打ち取った。特にラストバッターのデスパイネにはボール先行3-1となり、少し心配された。今季の金刃は左打者にはゴロ率72.9%の超高値も、右打者には27.8%に止まっていただけに、やや固唾を飲む形になったが、途中出場していたショート阿部の守備範囲に収まるイージーな遊ゴに退けた。

3人以上のリリーフ投手が揃って三者凡退投球を披露したのは、6月24日ソフトバンク戦(●E3-6H、金刃、横山、西宮)以来、今季2度目である。しかし、このときは負けている展開での発生であり、勝ち試合での記録は今季初の快挙である。

ロッテ側の拙采配に助けられた12回戦

それにしても感じたのは、ロッテ伊東監督の采配ミスに救われたのかな。筆者はそんなイメージを抱いた。というのは、、、

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