20190317NOTE表紙

【戦評】大敗でキラリ輝いた辰己涼介。外野1枠争い一歩前進!─ 3月16日●楽天0-6中日

与田中日に投打ともに完敗

今季最低4安打に封じられた今シーズン初の零敗ゲーム。
相手は昨季まで楽天を3年間支えた与田剛監督が新たに指揮を執る中日である。

ドラゴンズのオープン戦チーム打率は12球団ワースト.189。
1試合平均得点わずか2.27と低く、調子上がらない状況だった。

そんな低調の恐竜打線に、ホームラン2発にエンドランからのタイムリーなど大技小技で攻略され、合計5イニングで小刻みに失点を喫し、6点を奪われた楽天投手陣。

なかでも、先発・池田隆英にはガッカリ・・・
開幕ローテ争いから事実上の脱落となる4回途中4失点
になった。
今シーズン回の途中に降板を余儀なくされた鷲投手はここまでいなかったが、不名誉の第1号になっている。

一方、好調の打線も、ひとやすみだ。

昨秋の日米野球にも選出された相手先発・笠原祥太郎が、85年前の日米野球で沢村栄治が好投した草薙球場で楽天打線を苦しめた。
オープン戦14.2回で防御率2.45の好調をこの日も持続する多彩な球種使い。
左右高低に散りばめられた技巧派ピッチに楽天打者は狙いを絞りきれず、3回でヒットわずか1本に終わった。

その後も4人による小刻みな継投に面食らうかたちになる。
それでもイヌワシ打線、終盤に一矢報いようと、7回は無死満塁、9回も無死2,1塁と絶好チャンスを作った。
しかし、後続が覇気なく凡退。

とくに両チャンスで2度打席がまわり2三振に倒れたドラ7・小郷裕哉は、ストライク6個中5個をバット振らず見逃しストライクで奪われており、指揮官の心象を悪くした。

これで対外戦成績は8勝6敗2分に。
オープン戦は2位変わらず、5勝2敗1分になっている。

両軍のスタメン

中日=1番・亀澤(二)、2番・平田(右)、3番・大島(中)、4番・ビシエド(一)、5番・アルモンテ(指)、6番・高橋(三)、7番・遠藤(左)、8番・加藤(捕)、9番・京田(遊)、先発・笠原(左投)

楽天=1番・茂木(遊)、2番・辰己(右)、3番・浅村(二)、4番・ブラッシュ(指)、5番・島内(左)、6番・ウィーラー(三)、7番・内田(一)、8番・太田(捕)、9番・オコエ(中)、先発・池田(右投)


辰己涼介、外野1枠ワシづかみへ大きく前進

チームが投打ともに精彩を欠くなか、数少ない気を吐くプレーをみせたのが、ドラ1の辰己涼介だった。

4打席中3打席出塁はみごと!

1打席目は笠原とのフルカウント勝負をしっかり見きわめての四球。
2打席目は三塁方向のボテボテ投ゴだったが、自慢の俊足を飛ばし、笠原の1塁悪送球を誘った。
全力疾走で相手守備陣にプレッシャーをかけるのも才能なのだ。

3打席目はベテラン谷元圭介を撃った。
135キロをセンター返しで綺麗に仕留めると、4番・ブラッシュ空三振時に二盗も成功。
打撃好調の5番・島内宏明の前にチャンスをお膳立てする活躍をみせた。
(島内は一ゴ凡退)

これで3/12DeNA戦○E7-1DB以降、4試合連続ヒット。
今週は14打数6安打の打率.429と、静岡に移ってきてから開幕スタメン争いへギアをより一層上げたように感じられ、この新人離れした活躍ぶりをみると、はやくも楽天から2年連続の新人王も夢物語ではない。

これで対外戦の通算成績も、45打数13安打8打点、1二塁打、2本塁打、14三振、6四球、打率.289、出塁率.373、OPS.817とした。

OPS8割もみごとだし、速球とスライダー系で半々にヒット13本を打っていることも好印象。
相手投手が投げてくる球種は速球が一番多く、2番目にスライダーなので、成績を作るにはこの2球種への対応力が必要になるからだ。

また、ヒット13本の大半が真中・外角球をセンターから逆方向へ弾き返すコースに逆らわない打撃をみせているのも非凡の証。

泉犬鷲寮の入寮日に、他の多くが記念品や愛用グッズなどを部屋に持ち込んだのに対し、野球道具だけを持参し、今ではもはや普通になった選手自身によるSNS発信もしない野球ひとすじの背番号7。

解説席に座った広橋公寿さんもそんな辰己のポテンシャルを評価し、開幕外野スタメンは左翼・島内、中堅・田中和基、右翼・辰己と予想されており、現実もそうなりそうな気配が出てきた。

というのも、この日、オコエ瑠偉がレギュラー争い一歩後退と思われるシーンがあった。

7回大手の1死2塁で堂上直倫が放った中越三。
センターを守るオコエが目切り背走できず、中途半端な背走で頭上を越されてしまうシーンがあった。
その直後の7回裏無死満塁、オコエに打席がまわってきたが、代打・小郷が送られ、その後、ベンチで首脳陣とお小言をもらう場面があった。

この光景を見て、外野1枠は辰己がリードしたかなという印象なのだ。

期待の右腕が開幕ローテ争いから脱落

昨オフ台湾で開催されたアジアウインターベースボールで大会MVP。
今年は2/14阪神戦●E2-6Tで「対外戦開幕投手」に任命された池田。

首脳陣、ファンの熱い期待がかかるなか、今年は最初から調子が悪かった。

1軍では2/14阪神戦は二盗阻止する足立祐一の強肩支援があった直後、2四球から崩れて3回2失点。

2/21日本ハム戦●E3-12Fでは清宮幸太郎にバックスクリーン3ランを打たれ、平石洋介監督も「マウンドで自分との闘いになっている」と苦言。

2/28ラミゴ戦○E3-1ラでは3回1失点に抑えたものの、ヒット4本は全て捕手の構えたミットのコースどおりに投げた球を弾き返され、球威に乏しい印象を受けた。

ビシエドの一発含む6安打2四球で4回途中4失点を喫したこの日も、これまでの悪い流れを踏襲するかのような内容だった。

昨年は最速151キロをマークした速球はこの日143キロどまり。
速球のNPB平均が143.7キロだから、最速がNPB平均にも満たないという状況だった。

◎池田隆英 対外戦成績

※上記は1軍成績。このほか、2軍で3/8春季教育の西武戦で5回2安打無失点がある。

球威に乏しいからゾーンの厳しいところを狙おうとしてカウントを悪くする。
そんな光景も見受けられ、そのため上記表のとおり、毎度毎度「与四球>奪三振」になってしまっているのだろう。

これで対外戦成績は4試合12.1回で防御率8.03、WHIP2.35に。
開幕ローテ失格となり、早晩2軍に合流だと思われる。

スッキリしない安楽智大2回1失点

二番手以降の濱矢廣大、安楽智大、石橋良太、森原康平、松井裕樹は好投の部類だった。
(濱矢は粘投かな)

石橋は失投を連続長打にされて1失点したが、この日も右打者の懐に果敢にシュートを投げ込んでいた。
やりたいことは貫くことができたというイメージだ。

ただ、対外戦成績は8回7安打4三振3四球2失点。
球威に改善の余地があるため、打たれたヒット7本中4本が長打になっている。

ハーマン、ブセニッツ、松井、青山浩二、高梨雄平、宋家豪、森原、福山博之と力量ぞろいが顔を揃えるブルペン陣の中に割って入るには、決定打に欠ける成績という印象。
悪くはないが、その精度をもっと高めてもらいたいと感じた。

さて、問題は二番手で登板した安楽である。

近年怪我続きで昨年はわずか8イニングのみ。
今年は高卒5年目に当たり、同期が大卒新人でプロ入りする彼にとって「勝負の年」である。

そういう思いもあったのか昨オフから一念発起でピラティスやドライブラインといった新たなトレーニング・メソッドに挑戦、懸命に身体を強化する姿は彼のInstagramでたびたび目撃することができた。

◎安楽智大 対外戦成績

今年は久米島2軍スタートながらも、実戦で結果を残してきた。

上記表のとおり、2/20ヤクルト戦で3回2失点、2/28斗山戦で5回1失点、3/9日本ハム戦では5回無失点。

2軍からの朗報を受けて平石監督がこの日1軍合流させ、今季初の1軍マウンドになった安楽は2回を投げてアルモンテの被弾1失点に抑えた。

本人も「ストレートで振り遅れのファウルや、詰まったポップフライをとれた。この2年は期待に応えられていないので、今年はなんとか応えたいと思います」と手応えをえた様子。

指揮官も「良かったと思います。映像で見るより、生で見た方がボールが来ている。またチャンスをあげたい」と高評価。

しかし、安楽が本当にローテ候補で本当にピッチングが良かったなら、開幕まで2週間を切ったにもかかわらずローテの五番手以降が見えない状況下で、2回28球でお役御免にするはずがないと思う。

ぼくは、平石監督も安楽の状態が真に良いとは判断していないと思っている。
安楽に良いイメージを持ったまま今季初の1軍登板を終えてもらうため、あえて打者2巡目に突入する前に降板させた親心だと推測している。

というのも、この日ストレートは最速144キロ、平均140.8キロだった。
140.8キロとはNPBの平均に遅れをとる数字で、正直ものたりない。

ファウルでカウントを作ったり、ポップフライを稼ぐことができた一方、28球を投げて空振りはゼロ。

低めに制球したい変化球が反対方向の高めに抜けたり、ホームベース前方に叩きつけるワンバウンド投球になったり、ゾーンに甘く入ったりと変化球の制球はイマイチだった。

打者2巡目以降に捉えられた危険性は高かったと思われ、その意味でぼくはまだ安心できないでいる。

ここまでの好投も2/28斗山戦は力量格下のKBO、3/9日本ハム戦も相手打線は1軍通算打席が17打席以下の選手がスタメンに8人も名を連ねており、1軍実績149.1回の安楽がある意味、好投するのが当たり前だった。

その意味で、安楽にとって真に試金石になるのは次週登板だろう。
ここで数字を作り、五番手以降の椅子に滑り込むことができるか、注目したい。

・・・というような試合評を今シーズンもnoteマガジン『楽天ファンShibakawaの犬鷲観戦記【2019前半戦】』に50本以上綴っていく予定です。
単売1本150円ですが、定期購読がオススメ! ご登録は下記からどうぞ!


ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 150

読者の皆さんにいただいたサポートで、さらなる良い記事作りができるよう、心がけていきます。