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ハロウィン

 自分の思想信条に反するが、今年はなぜかハロウィンを満喫してしまった。

 週末、独身時代「合コン女王」と言われた友人に誘われて、共通の友人が出演するジャズライブに行ってきた。街はハロウィン一色で、この辺りで仮装して集まるならここというスポットには、思い思いの仮装をした若者が多数集まっていた。
 セーラー服(男)、メイド、ミニスカポリス、キョンシー、セーラームーン、よく分からないけど血塗れになった女子たち。コロナで密を避けるため、あるいは、隣国の事故のようなことがここで起きるのを防ぐために、「今日はここでは何のイベントもありません」と貼り紙がしてあったが、若者は広場をうろうろ、ふらふらしていて、時間を追うごとにその姿は増えて行った。
「なにをしにきてるんだろうね、この子らは……」
「さあ……ナンパ待ちかなあ……」
 私達は完全に遠い目で、おばあちゃんが縁側で喋っているようなノリである。ストリート系の服装だけれど「これは……仮装じゃないよね?」という男二人組がまま混じっていて、友人と「あれはナンパ目的じゃろうねえ」と言い合う。セーラー服に仮装した男子にナンパされるのと、メイドコスの子を落とそうとやってきた普通の服の男にナンパされるのと、どちらがマシなんだろうか。後者は漁夫の利っぽくて嫌がられるのでは、なんてことを話す。

 ライブは子供向けの曲をジャズアレンジしてくれていて、久しぶりの狭くて暗い店、高いスツールにまごつきながらも楽しめた。友人は五弦のヴァイオリンを使っているそうだ。それは珍しいということだったけれど、どう珍しいのかな。司会者が、より低い音が出せるという説明をしていたけれど、それはクラシックの人の一部が持つものなのか、ジャズ畑の人が持つものなのか、みたいなことを知りたかったなと思った。弦のことだけでなく、「こんな演出をしてるなんて、クラシック畑の人が聞いたら怒られるよ」とか言っていたけれど。
 友人は波乱万丈な人生を歩んできたひとだ。最近は没交渉だったのだけれど、ヴァイオリンを教えながら、子供を育て、そしてバンドを作って毎年出演できる場を持てていて、すごいなと思う。元々雰囲気のある美人だけれど、曲の途中で笑顔がこぼれているのが大変美しかったし、不謹慎かもしれないが、演奏の勢いで切れてしまった弦がステージの光を反射しながらひゅんひゅんと飛んでいるのが綺麗だった。

 また別の友人に教えてもらって、ピニャータというハロウィンの何かを作る。


 子供の園の子を呼んでハロウィンパーティーをすることになったので、いい目玉企画になるはず。こういうのがないと、私は来た子に渡すお菓子やその場で食べるように準備するお菓子、その他の気遣いを最低限必要なものだけにしてしまいがちだ。「自分の能力を最大限発揮する!」と意気込まないと、すごく手抜きでコミュ障な感じになってしまう。

 子供に何を作るか訊いたら、これだと言う。後でぶっ叩いて壊すのに……。

これから何をされるかわかっていない瞳

 可哀想で叩けなくなるかなと思っていたが、こどもらは割と容赦がなくて、奇声をあげながらバカスカぶっていた。


 つらい……。

「アーニャ、すてられる?」

 途中から、ピニャータの完成度にこだわってしまったせいで、なかなか割れなかったのが玉に瑕だった。今日来た子たちは、別の小学校に行くなどするので、来年は作らないかもしれないなあと思う。指にはめて魔女ごっこができるから、ハロウィンのおやつにとんがりコーンはお誂え向きだ。

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