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おさんぽアプリ

コロナ禍になる前、ある会社が提供しているお散歩アプリを使用して、週末に 「ちょっとしたお出かけ」 気分を味わっていた。

下記は絶賛する内容ではないため、どのアプリか名前は挙げない。


「ちょっとしたお出かけ」 といっても、大体 4 ~ 6km のコースを歩いていたため、なかなか疲労する。

しかも 「ほぼ住宅街」 みたいな最寄り駅を起点にするものも多いため、そのお散歩コースの中に、特筆するようなスポットは含まれていない。

ましてや 「ちょっと休憩」 的に、休める飲食店情報が掲載されているわけでもない。

「近所の小さな神社」 とか、「ただの原っぱみたいな公園」 とか。

友人レベルの人でさえ、とても誘えないような 「え、何でこれ (に一緒に行こうと思ったの)?」 という反応必至のお散歩コースだ。

だからいつもパートナーと行っていた。


こうやって書くと何回も出かけていたように見えてしまうが、確か 4 回ほどしか行っていない。
結構ウンザリするからだ。

距離が長いことは問題ない。
個人的には 10km までなら旅行先でも歩くことがある。



花巻にある 「雨ニモマケズ」 詩碑を見に行ったときは、年末年始の雨 & 雪) の中、傘もささずに 10km ほど歩いた。

リアル 「雨ニモマケズ」 である。


確か詩碑までは花巻駅からバスが出ているのだが、私たちが到着するのは新花巻駅だった。

新花巻から花巻にアクセスするには電車の乗り合わせが悪い時間に着いてしまい、電車を待つのも歩いて向かうのも、ほぼ同じ時間に着くよね、という結論から歩くことに。

タクシーを使う習慣はないため、バスがないなら歩くしかない。


雪で濡れながら着いたけれども、実は詩碑のことは案外記憶に残っていなくて、

「雨ニモマケズの詩碑が立っていたわけじゃなかったんだよね?」

とパートナーに確認する始末。


曰く、「いや、そんなことない」 とのことだが、今ネットを見て納得。


「雨ニモマケズ」 から始まっていない。

そして失礼で申し訳ないが、文字が目立たないのでよく読めない。

だからあまり記憶に残らなかったのだろう。

しかし確かにこの石碑の写真は私のスマホに収められている。

どうやら 「雨ニモマケズ」 詩碑を 10km 歩いて見に行ったのは事実のようだ。
↑ 今調べたら 7.3km だった。サバ読んでしまった。



そうそう、長距離歩くことは問題ない。
むしろ気候が気持ちよく、自分に合った靴をはいていたり、快適な服装をしていたらむしろ好きなくらいである。


しかしこのアプリ、「本当に製作者側はこの散歩コースを検証したのか?」 と、出かけるたびに疑問が噴出したのである。


どういうことかというと、まず、


「え、ここ人ん家だよね?」


みたいなところを通らされる。


いかにも 「ウォーキングしてます!」 みたいな格好で出かけているから、アパートの脇にある細~い細~い、「道」 と呼ぶものではないんだろう、と思しきスペースを通ったとしても、

「あ、ウォーキング途中で道間違えたのかな?」

みたいに思ってもらえるからセーフだと思うが、これが 1 人かつ鞄も持たない状態でウロウロしていたら結構怪しい。
自分が住人なら警戒する。


過去にも


え、ここ人ん家のみかん畑だよね?


みたいなところを通らされた。


私はあまり 「〇〇 させられた」 という表現も思考も好きではないが、この場合はそう書かざるを得ない。

そして (なくはないんだろうけど) 名もない寺社、名もない公園を目指し、ひたすら 「?????」 と疲労を重ねていく散歩。


ある時、高台にある大きな公園に出た。
見晴らしは素晴らしく、ぜぇぜぇ言いながら登った甲斐があった。
近場 (?) にこんなところがあるなんて知らなかったし。

しかし、問題はこの先である。
降りた駅は普段なら用事がないので降りたこともなく、まったく馴染みがない。

したがっておさんぽアプリが導くままに従順に進むことになる。


高台にあった公園から、別の場所へ向かうルートの間には、

結構な高さなのに階段がなく、簡易的な足場が設けられただけの急傾斜の土手

が横たわっていた。


そう、さっきも書いたがここは高台にある公園だ。登ったらその分降りなければならない。

この簡易的な足場も、きっと周囲の住人から 「ショートカット」 として使う人が絶えず、舗装もされていない土の坂だとさすがに危ないからという理由で間に合わせで設置されたものなのではないだろうか。


さて、足場があるといえどこの急な土手をサッサと降りろというのだ。

緩やかに坂を登ってきたのに、今度は短距離で降ろそうとするから段差の高さと距離の近さがハンパない。


この土手は、「足腰があまり丈夫ではない人」 は無事に降りられるのだろうか?


何段あったか数えはしなかったが、かなりの段を降りた。
頭の中は終始その疑問だらけだった。


今まで 4 回程度行ったと書いたが、散歩コースは毎回どれも結構ひどかった。
そしてその最たるものがこの 4 回目である。

最終的に何とか別のちょっと栄えた駅に出て、閉店間際に駆け込んでおいしいジェラートを食べることで報われたが、大抵はそんな報酬もないくらい謎コース & 謎疲労で終る。

知らずに不法侵入を犯しているかもしれないし。


なのに何でそんな複数回行っていたのかと言うと、予想外すぎて逆にそれを面白がってもいたのだろう。
しかしそんなタイプの人間がマジョリティとは思えない。

だから誰ターゲットなのか、このアプリの存在意義みたいなものがよく分らない。


「おさんぽアプリ」 というものについて考える。

果たして誰のためにこれは存在するのかと。無料アプリ & 広告もないので、これで直接収入を得ようという目的はなさそうだ。

あまり書くと特定されてしまうかもしれないので控えるが、この会社がこのアプリを配布することで、収入が見込める点は確かにある。


しかし、「ターゲットは誰か?」 ということを考えると、なかなか分らなくなる。


10 代や 20 代の若者がこのようなアプリを入れるとは思えない。
まだまだ経験もこれから! という年齢だから、行きたいことややりたいことで毎日が埋まっているだろう。

何もこんな 「降りたこともないし、住んでいなければ多分降りる必要もない」 駅に来て、謎コースの散歩なんて渋すぎる。

しかも友人と歩くには気まずくなるコースで、 2 回目以降は付き合ってくれないだろう。

どう考えてもおいしい・かわいいカフェの方が魅力的である。


では働き盛りの 30 ~ 50 代ではどうだろう。
週のほとんどを仕事に費やし、家族を持っている人も多いはずだ。

待ちに待った週末!

やっと休みが来たのにこのような謎散歩に時間を割くだろうか。

仮に自分が子供の頃に父親がこの散歩コースに連れて行ってくれていたと仮定したら、かなりの確率で家族全員が 「何コレ!? もう来ない!」 と言っていたのではないか。

そして父もコリゴリしたのではないか。

お金を遣わない過ごし方はいくらでもある。
よりによってこれでなくてもいい。
むしろ、この散歩でも電車代か駐車場代がかかるはずだから、それなら 「子供の科学館」 的なものに連れて行ってくれた方がよい。


みかん畑で見付かった場合も、1 ~ 2 人でいた時より家族でいた時の方が怒られそうである。

「コラッ! 親なんだからちゃんとしなきゃダメでしょ!」

的な叱責も + ‪α‬ で受けそうだ。


そしてさっきも書いたが、お店情報は皆無なのである。子供がグズったり 「疲れた~」 とか言った時の救済措置がこのアプリでは取れない。

ケガした場合にも薬局は近くにないし、4 ~ 6km コースでは車も電車も遠い。
しかし高低差の激しい段差はコースに組み込まれている。

要は 「ファミリーにやさしくない」 のだ。


独身の場合はさっき書いたように 「人の家をすり抜ける」 ので、本来得なくていいはずの緊張感が複数人で行く場合よりも付いてくる。

ましてや専業主婦の方がこのような謎散歩に時間を費やすとも思えない。

メイン ターゲットとしては、やはりここもナシだろう。


さて、本命の 60 代以降だ。
仕事をリタイアしている場合も多いため、時間に余裕がある人が多い。

子どもではないため、ある程度の空腹や疲れも我慢できるだろう。

健康に気を遣っている人がこのアプリを使う確率が高いため、アプリ側もユーザーの自己判断に安心して任せることができそうだ。


しかし、しかしである。

やはりあの公園の段差は非常に気になる。

リハビリ的に 「ちょっと使ってみよう」 と入れてしまった人は、また病院に舞い戻ることになるかもしれない。

そのくらいのゼーゼー度 & ヒィヒィ度は、どの散歩コースでも常に付いてまわる (多分)。

この会社は最近 「子どもにやさしい」 キャンペーンを始めたので、年齢を重ねた人間のことにはあまり注力しないのかもしれない。


物凄くマイナーなアプリだと思うので、そんなに活用されていないかもしれないが、割と 「おさんぽアプリ」 みたいな親しみを感じる名前なので取っ付きやすく、インストールはされやすいかもしれない。

しかしながらいざフタを開けてみると (色んな意味で) ハードなコースが待ち構えており、

一体あの散歩コースを提唱したのは誰なのか、提供側は検証したのか?

というのが毎回気になってしょうがない。
しかしコロナ禍になって出かけなくなったので疑問を解決するほどの気力も湧かない。

↑ が解決しても、アプリ内の散歩コースが変更されるわけではないからだ。


ただ、不法侵入っぽいものがある気はしているので、いつか

〇〇 で △△ 歳の □□ さんが、散歩途中に私有地の敷地内に入り、通報され、不法侵入で現行犯逮捕されました。


みたいなニュースが流れたとしてもおかしくはないのかなぁと思ったりする。

この場合、このアプリを見て入ってしまったという事実があったとしたら、情状酌量されるのかな。
そしてアプリ提供側も何らかの罪に問われたりするのだろうか。


ということだけボンヤリ気になっている。



涼しくなったら 5 回目の散歩に出てみようか。

「このアプリには素敵な散歩コースもあるんだ!」

ということを発見する希望はまだ捨てていない。



長々とお読みくださりありがとうございました m(_ _)m

いただきましたサポート費は、面白い素材の購入費に充てさせていただければと思います。 ご支援誠にありがとうございます (^^)