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エビデンスのある療育ープロンプト準備編①

こちらの記事HPの方でプロンプト基礎知識編という形にリライトしました!よろしければこちらも合わせてご参照ください。


はじめに

エビデンスのある療育を紹介していくシリーズ今回はプロンプト編です。プロンプトは学習していく上での補助輪のようなものです。いきなり自転車に乗ってと言われて乗れる人はほとんどいないのと同じように、何かしら新しいことを学ぶ際には、まずは補助があり少しづつ補助がなくなっていって最終的に補助なしでも大丈夫という過程を辿ります。療育においてはこの補助がプロンプトであり、プロンプトを上手に使うことができると児童の出来るという成功体験の増加や、補助なしに向けてステップアップしていくことができます。本記事では療育におけるプロンプトの基礎情報を中心に消化していきます。

プロンプトとは

プロンプトは児童が対象の行動やスキルを使用するためのあらゆる補助のことを指します。他のEBPsでもしばしばプロンプトが出てきたように、多くのEBPにプロンプトの使用が組み込まれています。またエラーレスラーニング(なるべく失敗させない学習方法)と呼ばれることもあるように児童が新しいスキルや行動を学習する際に、誤った行動やスキルの使用が生じる確率を下げる為に用いられることもあります。

アプローチの種類

プロンプトはあくまで補助である為、最終的には補助がなくても自立して児童がスキルを使用できる状態を目指します。その為プロンプトは学習のためにプロンプトを使用し、自立のためにプロンプトを減らしていくというアプローチをとります。この手続きをよりシステマチックに行うために3つのアプローチが有効であるとされています。

①最小ー最大プロンプト
少なくとも3レベルのプロンプトを使用して、補助の具合の低いものから高いものにプロンプトを移行していく方法です。一番最初のレベルの時には児童はプロンプトなしで反応する機会を与えられ、その後レベルが上昇するに伴ってより強い補助が使用されます、一番最後のレベルの場合には必ず行動が起きるように、コントロールプロンプト(児童が絶対に対象行動を実行できるレベルのプロンプト)が使用されます。

対象スキルの例
・個別スキル:物の名前を言う、文字を読む、こんにちはと言う
・連鎖スキル:着替え、手洗い、選択

②段階的ガイダンス
まず最初に児童が必ず、対象行動を実行できるようにコントロールプロンプトを提供し、そこから徐々にプロンプトを取り除いていくアプローチです。児童がスキルや対象行動を実行し始めたらプロンプトを取り除き始めますが、もし対象行動をしなくなるなど後退が見られる場合にはプロンプトをすぐに元に戻します。この判断は実際にセッション中に児童がどのような反応をしているかに基づいて決める必要があります。適切にプロンプトを取り除いていかないとプロンプト依存になり自立してスキルを使用することが困難になります。

対象スキルの例
・連鎖スキル:いくつかのステップを含みかつ身体的動作を含むスキル全般

同時プロンプト

導入セッションと、確認セッションが含まれるプロンプトアプローチです。導入セッションにおいては児童の対象行動に対して合図が出されるのと同時に、コントロールプロンプトが使用されます。確認セッションにおいては児童の対象行動に対して合図のみ出され、コントロールプロンプトを含むその他のプロンプトは使用しません。このアプローチは限りなくエラーレスに近いアプローチでかつ比較的簡単に実行できます。

対象スキルの例
・個別スキル:特に限定なし
・連鎖スキル:特に限定なし

プロンプトの種類

ジェスチャープロンプト
どのように対象の行動を行えばいいのかまたスキルを使用すればいいのかジェスチャーを用いて教える方法です。


手洗いを教える際に、手をこすったり石鹸をつける動作の真似をしてみせる。

音声プロンプト
児童が対象行動をする手助けとなるようなあらゆる音声指示です。音声指示だけでもプロンプトのレベルが最小から最大と区別されます。


児童の掌が汚れている時に、手を洗ってと声かけをする。またもう少し弱めて手が汚れている時にはどうしたらいい?と聞く

視覚プロンプト
チェックリストやスケジュール、イラストで描かれた手順、写真など視覚的に児童の対象行動を行う上で補助となるすべてのものです。アカデミックスキルからコミュニケーションまで幅広く使うことができます。ただし発達段階や年齢と相応のものである必要があります。


手洗いの手順を、各ステップ度とにイラストで説明したものを児童が手洗いをする時に見せる

モデルプロンプト
対象となる行動やスキルをそのままやってみせる方法です。視覚や音声プロンプトがあまり効果的でない時に利用することができます。また個別スキル、連鎖スキルいずれにも用いることができます。使用する場合には部分的にやってみせる場合とすべての動作をやってみせる場合の2パターン存在します。


全部やるパターン:手洗いのステップをすべて支援者がやってみせる
部分的にやるパターン:手洗いの水を出すというステップに関して、途中まで水道をひねる

身体プロンプト
身体プロンプトは、粗大運動を教える時や限定的な他のプロンプト(陰性、ジェスチャー、視覚、音声)があまり有効でない場合に活用できます。身体プロンプトもすべての動作を絶対に完了させるように、手取り足取り教える場合と、部分的に肩をポンポンと叩いたりすることで教える場合2パターンの方法があります。


全部やるパターン:手洗いのすべてのステップを児童の手に支援者の手を添えて支援者が児童の手が洗われるように動かす。
部分的にやるパターン:手を洗い終えて拭く時にちょんちょんとタオルのある方の肩を叩く。

プロンプトのメリット

自閉症児の多くは、対象とする行動の何が重要なのかまたどのようにその行動をしたらいいのか理解することに非常に苦労します。つどどのようにやるか直接手取り足取り教えることもできますが、児童のいる場所もそばにいる人もつど変わっていくことを考えるとこの方法は児童にとっても、周囲の人にとっても負担の大きいものです。一方プロンプトは、直接的にすべて教えていくという方法ではなくヒントで一部を補助するような役割を果たします。そのためつど手取り足取り教える方法よりもより簡単に獲得したスキルを使用する機会を状況が変わっても得ることができます。またプロンプト最大のメリットは成功体験が多く、失敗体験が少ないという点です。成功体験を多く積むことで自己肯定感の向上が測ることができまた、失敗を最小化することで失敗体験によるネガティブな影響が発生するリスクを最小化することができます。プロンプトの使用によって達成される主なスキルは以下のようなものになります。

・ソーシャルスキルの向上
・コミュニケーションスキルの向上
・適応力の向上
・遊びのスキルの向上
・アカデミックスキルの向上
・タスク従事行動の向上
・獲得スキルの般化
・成功体験の最大化

年齢別に効果が確認された領域

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まとめ

プロンプトはかなり内容が多いので一旦基礎知識としてこの辺で区切ります。プロンプトにも種類があること使用するアプローチにも種類があること、また何よりプロンプトの使用は児童の学習機会の最大化と成功体験の最大化に大きく貢献するものだということがご理解いただけたでしょうか。

それでは次回プロンプト準備編②でお会いしましょう

リファレンス
https://afirm.fpg.unc.edu/node/390

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