見出し画像

エビデンスのある療育ーDTT準備編

こちらの記事HPの方でリライトしました、よろしければそちらも合わせてご参照ください!


はじめに

エビデンスのある療育を紹介していく本シリーズ、今回はDiscrete Trial Traning(離散試行型指導法)です。

DTTは、ある刺激に対して新しい反応(行動)を学習するための方法です。またこの反応は、可能な限り小さくされた一つの反応(行動)を指します。

刺激「お名前は?」
行動「たかし」

よく、DTT=ABAと誤解されることがありますが、あくまでDTTはABAの原理をもとにした方法の一つでしかありません。また刺激に対する行動を学習する方法はこれまで紹介させていただいたものも含め、様々な方法があります。

DTTの概要

DTTはある刺激に対してある行動を学習するための方法の一つです。TAやABIでもご紹介させていただいた、3つの要素に注目して、新しいスキルの学習を行います。

3つの要素

スクリーンショット 2019-10-12 20.48.10

ABC分析そのままの要素が、DTTでも重要になってきます。DTTはこの刺激(弁別刺激)と結果を結びつけられるようにすることで、望ましい反応(行動)を学習します。また実際に教えていく過程においては、プロンプトの使用や強化の使用等、他の方法も織り交ぜて教えていくことになります。

DTTセラピーの様子

DTTで達成できること

DTTを使用した際に達成できる主な項目は下記のようになります。

口頭でのコミュニケーションスキルの向上
質問への回答
反応の増加(無反応ではなく)
アカデミックスキルの向上
他者視点取得(他者の視点に立って考える力)
感情理解
適応行動(特に日常生活上の安全に関して)

科学的に効果があると確認された領域

スクリーンショット 2019-10-12 22.01.30

DTT準備ー行動と基準の明確化

まず初めにやる事は、対象とする行動のきっかけになる刺激と、正反応、望ましい達成率を決めます。

たかしのケース
目標:赤、青、黄色、の色の区別をつけられるようになる
刺激:支援者がたかしに「赤はどれ?」などと色ごとに聞く
行動:たかしは、色を指差す
基準:全試行のうち80%の確率で正しい色を指差すことができる

明確に定義したもの
たかしは、色を指差してと支援者から言われた時に、正しい色を指差す。また3日連続の試行全体のうち8割正しく回答することができる。

DTT準備ータスク分析

対象とするスキルが、初めから最小単位になっていない場合、例えば、目標とする行動が、絵カードを見せられた時に答えられる動物の名前が3種類、などと言う場合には、ステップに分けていく必要があります。

ステップに分ける方法
・タスクを誰にかに遂行してもらいその様子を観察しながらステップを書き留める
・対象スキルや対象行動に詳しい人にステップを記録してもらう
・自分自身のでタスクを実行しながら分析する

タスクを分析できたら、レッスンをどのようなステップで進めていくのかわかるように記録します。

目標:3種類の形(丸、四角、三角)に関して、指定された形でまとめてと言われた時に、正しく仲間分けできる。また試行全体のうち80%正しく分けることができる。

レッスンステップ
・丸だけまとめる
・四角だけまとめる
・三角だけまとめる
・丸と四角を同時にまとめる
・丸と三角を同時にまとめる
・四角と三角を同時にまとめる
・丸と三角と四角を同時にまとめる

またタスク分析をして、それぞれのステップに分けた後で、児童がそれらに対して取り組む準備ができているかチェックすることも重要です。つまり言葉でやり取りする準備はできているか、また例えばカードを掴むなど指先の運動はできるかなどの前提となっているスキルを獲得しているのか、確認しておく必要があります。より詳しくタスク分析に関して確認されたいばあいにはTAの記事をご確認ください。

DTT準備ーデータシートの作成

DTTを実施する上では、一つ一つの試行に関してきっちりとデータを収集していく必要があります。そのため事前にどのような形でデータを記入していくのかフォーマットを作成しておくことが有効です。また状況によっては、いつもと違う支援者の方が担当される、またはお家で保護者の方がやられる場合もあるかと思います。そのような際にもABC分析や、明確に記述した行動・基準に関する情報などを一枚のシートに記載しておくことで簡単にまた正確な情報共有が可能です。

データシートサンプル

スクリーンショット 2019-10-13 16.05.18

レッスン進捗記入用シートサンプル

スクリーンショット 2019-10-13 16.19.59

データコレクションサンプル

スクリーンショット 2019-10-13 16.45.34

標的行動の成功率

DTT準備ー強化子の選択

DTTにおいては、標的行動が成功する際に強化を使用するため、その際に用いる強化子をあらかじめ選択しておきます。強化子は、好きな活動や、好きなおやつ、社会的なもの(褒める、ハイタッチ)など、児童が喜ぶものを選択します。より詳しく強化子について知りたい場合には強化の記事をご覧ください。

DTT準備ーセッティング

DTTに取り組む際には、どのような環境下において実践するかが非常に重要です。セラピーを開始する前にきちんと準備ができているか確認します。

チェックリスト
・注意や集中を削ぐものが児童の目につくところにおいてないか?
・アクティビティを行うのに十分な広さがあるか?
・休憩を取れるスペースが確保されているか?
・定型発達も含めた他の児童と簡単に関わることができる場所にあるか?(般化の為)
・光量や椅子の高さなど、集中しやすい環境か?

まとめ

簡単にDTTを開始するまでに必要な準備を紹介させていただきました。準備の段階ではそこまで特別なことはなく、行動分析をして、定義をして、どのような形でデータ収集をするか決めて、セッティングするだけです。途中に計画の段階で強化やプロンプトをどのように組み込んでいくか、少しだけ紹介しましたが、特に強化はDTTを実施する上でキモとなる為、しっかりと組み込んでいくことが重要になります。次回は実践編でより具体的にDTTの実態に関してご紹介させていただきます。

リファレンス

https://www.freepik.com/free-photos-vectors/school School vector created by freepik - www.freepik.com

サポートしていただいたお金は、「試す事」に充てさせていただきます。