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エビデンスのある療育ーRIR実践編

はじめに

この記事は前回の続きです。まだ読まれていない方はそちらを先に読まれることをお勧めいたします。

さて前回はFBAを行い、機能分析をした後で、機能と行動の形態(動作か?音声か?等々)に合わせて使用する中断の方法や、リダイレクト、代替行動の特定、強化の方法を一通り計画しました。

今回は実践編ということで、実際の流れを簡単に紹介していきます。

RIR実践ーつど褒める

実際にRIRを使用し始める際に、重要なのは自立して適応行動ができた際に必ず口頭で「できたね」、「やったね」などと褒めることです。

例えば、本を読む時間に大きな声で動物の名前を列挙していくという問題行動に対してRIRを使用し、定められた時間は着席して本を読むことができるようにしていく訓練の場合には、問題行動が発生せず、決められた時間着席して黙読できた際に「わーすごい!黙読できたね!」などと口頭で褒めます。

このように、適応行動の発生に対して、褒めるという賞賛を組み合わせることで、児童が自身がした行動が適応行動(望ましい行動)だったのだと学ぶことができます。これは、行動の種類(動作、音声常同行動、自傷行為など)によらず一貫して行います。

RIR実践ー動作に関する常同行動の場合

計画段階で決めた中断の方法が音声か身体かによって実践する方法が異なるため、それぞれの定義に従って介入を行います。

音声による中断とリダイレクト

通常の声のトーンで児童の名前を呼び、音声による反応が必要な行動(鼻の長い動物は?などの質問や音声模倣など)に関してプロンプトを提示する。または、動作による反応(手を叩いて、肩を触って、立って等)が必要な行動に関してプロンプトを提示する。

身体的な中断とリダイレクト

・物理的に接触できるものに関しては、接触しそのものの動きを停止する(回り続けるおもちゃを手で止める等)。その後音声による反応または動作による反応が必要な行動に関してプロンプトを提示する。

・児童の身体の一部を使用して行われるもの(手をひらひらさせる等)に関しては、動作している体の一部に触れる。その後音声による反応、または動作による反応が必要な行動に関してプロンプトを提示する。

いずれかの方法で持って行動の中断とリダイレクトを行います。

RIR実践ー音声に関する常同行動の場合

音声に関する常同行動の場合には、音声による中断を使用します。計画段階で定めた中断方法とリダイレクトに基づいて、RIRを使用します。

音声による中断

通常の声のトーンで児童の名前を呼び、音声による反応が必要な行動(鼻の長い動物は?などの質問や音声模倣など)に関してプロンプトを提示する。または、動作による反応(手を叩いて、肩を触って、立って等)が必要な行動に関してプロンプトを提示する。

RIR実践ー自傷行為の場合

自傷行為の場合は、音声による中断、身体的な中断いずれも使用可能なので、計画段階で定めた中断方法とリダイレクトに基づいてRIRを使用します。

音声による中断とリダイレクト

・「やめて」などと口頭で伝え、身体的タスク(手を頭の上に、腕を組んで等)に関するプロンプトを提示する
・「やめて」などと口頭で伝え、児童の好むものを渡す。

身体的な中断とリダイレクト

・物理的に、自傷行為をしている体の部分に触れ、身体的タスクに関するプロンプトを提示する
・物理的に自傷行為をしている体の部分に触れ、児童の好むものを渡す

RIR実践ー不適切行動の場合

不適切行動の場合も音声による中断、身体的な中断いずれも可能なので計画段階で定めた方法に則って実施します。

音声による中断とリダイレクト

・「やめて」などと口頭で伝え、身体的タスク(手を頭の上に、腕を組んで等)に関するプロンプトを提示する
・「やめて」などと口頭で伝え、児童の好むものを渡す。

身体的な中断とリダイレクト

・物理的に、自傷行為をしている体の部分に触れ、身体的タスクに関するプロンプトを提示する
・物理的に自傷行為をしている体の部分に触れ、児童の好むものを渡す

RIR実践ー代替行動へのプロンプト(共通)

計画段階で定めた代替行動の学習を着実に行えるようにプロンプトを使用します。ジェスチャー、音声、視覚、モデリング、身体、いずれのプロンプトも使用可能です。プロンプトの詳しい使用方法に関してはこちらの記事を参照ください。

いずれのプロンプトを使用するにせよ、RIRと組み合わせて、使用する際には最小ー最大の形で使用する必要があります。

RIR実践ー代替行動を強化する

RIRを使用し代替行動の学習を進めていく際には、学習の最初期に代替行動ができたときは毎回必ず一貫して即時強化していくことが重要です。これは、児童が代替行動と強化子を結び付けていくことを促進します。

また一貫して強化を行うことと同時に、代替行動に関する簡単な説明を児童に解る形で伝えていくことも重要です。(宿題が終わったから、ゲームできるよ等)

児童が代替行動を学習する段階に応じて、一貫した強化スケジュールから3回に1回のタイミングで強化するなどの間欠強化スケジュールへと変更していきます。間欠強化に関してはこちらに詳しく書いてあります。

RIR実践ーモニタリング

RIRを使用している際にモニタリングすべき項目は、問題行動の減少と、適応行動の増加になります。どの程度の頻度か?どの程度の長さか?どの程度の間隔か?それぞれの行動の形態等に応じてデータ収集を行います。

イベントサンプリングの例

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インターバル計測の例

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インターバルデータ

持続時間計測の例

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RIR実践ートラブルシューティング

RIRを実施しデータ収集を行い、進捗が見られる場合にはRIRを継続します。前回の準備編でもあったようにある特定の人、特定の場所だけでできるだけではなかなか実生活上での困りを解消しきれません。シチュエーションや教える人を変化させながら般化させていきます。

逆にRIRを実施していてうまくいかない場合には、以下のチェックリストを参考にRIRのプランを修正するか他のEBPsを使用します。特に行動の機能に関して本当に自己刺激かどうか?注意の獲得や回避ではないか?という点は実践の中で見えてくるところであるため自己刺激でなかった場合にはすぐに修正を行います。

チェックリスト

・行動は明確に定義されているか?
・行動は観察可能で計測可能か?
・FBAは正しく実践され、行動の機能が特定されているか?
・行動の中断とリダイレクトが適切に実施されているか?
・プロンプトは確実に代替行動ができるように機能しているか?
・強化子は児童のモチベーションを高めるよう機能しているか?
・全てのチームメンバーが適切にRIRを継続して使用しているか?

まとめ

RIR実践編ということで、簡単に流れを紹介させていただきました。中断して、リダイレクトして代替行動へのプロンプトを行い、強化するというのが一連の流れになります。言葉にすると非常に簡単に聞こえますが、リダイレクトがそう易々といかない場合も、もちろんあるため試行錯誤しながらRIRをより有効可していくことが重要です。

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