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エビデンスのある療育ーABI準備編

HPの方でリライトしましたのでよろしければ、そちらも合わせてご参照ください!


はじめに

自閉症スペクトラムに関して様々な、療育方法がこれまでに考案・実施されてきましたが、科学的に効果的であると実証された療法はそこまで多くありません。そこで本シリーズでは、アメリカで科学的に効果的であると実証されたものを、一つずつ紹介していきます。

ABIとは?

Antecedent-based intervention(ABI)とは応用行動分析学(ABA)から発生した、不適切行動や課題従事を分析・改善するための実践方法です。どんなシチュエーションの時に、どんな刺激が、どんな児童の行動を引き起こし、結果として何が起きたのか、という4つの観点で分析を行い、環境調整を行うことで最終的には不適切行動が起きないようにする等の行動改善を目的にしています。

ABIによって対応できるもの

・適応行動の確立
・自傷行為の減少
・癇癪の減少
・反抗的な行動の減少
・変化への対応可能性の向上
・遊びを始めるスキル
・交代
・コミュニケーション
・常同行動の減少
・物事に取り組む力の向上
・社会性の向上
・読み書き計算(アカデミック)スキルの向上
・運動能力(粗大、微細)の向上

年齢別に効果が確認された領域

0〜2才
・行動
・遊び

3〜5才
・社会性
・コミュニケーション
・行動
・就学準備
・遊び
・適応力
・アカデミックスキル

6−11才
・社会性
・コミュニケーション
・行動
・就学準備
・遊び
・運動
・適応力
・アカデミックスキル

12−14才
・社会性
・コミュニケーション
・行動
・就学準備
・適応力

15−22才
・社会性
・コミュニケーション
・行動
・アカデミックスキル

準備その1ーABC分析

実際にABIを用いる上で、まず最初に重要なのは「何が起きているのか」をしっかりと把握することです。この「何が起きているか」をわかりやすく時系列順に記載するものがABC分析になります。つまり対象とする行動(不適切行動等)があった時に、Antecedent(A)先行刺激はなんだったのか、Behavior(B)行動は何か、Consequence(C)行動の結果何が起きたのか、これらABCをそれぞれ記述します。事例を考えるとわかりやすいので、それに沿って見てみましょう。

 先生が、たかしに積み木を絵と同じように組み立てるように言ったところ、たかしは、積み木を放り投げ、先生はもうやらなくていいと叱り課題を中断した。


この場合のABCは以下のようになります。
A:先生がたかしに積み木を組み立てるように言う
B:積み木を放り投げる
C:先生が叱り課題を中断する

このようにまずは、「何が起きたのか」ABC分析をすることが重要です。

準備その2ーパターンを探る

さて先ほど、特定の事例でABC分析を行いましたが、1回観察しただけでは、行動の前後にある条件や結果を特定することは難しいです。
そのため、次に行うのは対象となる行動がどんな時に発生しているかそのパターンを探ることになります。
例えば、取り組んでいる課題別にその行動が発生したか、発生していないかを1週間計測してみると、ある特定の課題の時に発生することがわかったり、なんらかの規則性を発見することができます。
実際に条件を絞り込んでいく上で扱われる項目を下記に記載します。
主要な絞り込み項目
・どこで、対象となる行動が起きているか(学校、家、病院、放デイetc)?
・誰といる時に、対象となる行動が起きているか?
・いつ、対象となる行動が起きているか?
・対象となる行動が起きた時に取り組んでいた活動は何か?
・対象となる行動が起きた時、他の生徒や児童は何をしていたか?
・対象となる行動が起きた時、先生や周囲の大人は何をしていたか?
・行動が発生した時に、他の生徒や先生、大人はどれだけ近くにいたか?
・行動が発生した時に、周囲に何人いたか?
・行動が発生した時に、環境に変化はあったか?(大きな音や、光etc)
・行動が発生した時に、その行動の機能はなんだったのか?(行動の機能:獲得、逃避、注目、自己刺激)

準備その3ー仮説を再定義する

ここまでで、対象となる行動がどんな時に起こるのか、全体感がつかめるようになってきました。ここでは最初に定義した行動・条件をABC分析やパターンを探った結果得られた情報をもとに以下の要素をカバーしながら再定義します。
・場面やシチュエーション
・刺激
・行動
・結果
・行動の機能
先ほどのパターンを探るのところで出てきた「行動の機能」ですが、児童の行動の機能は大きく分けて2つに分類することができます。
1つは、「獲得」です。児童がなんらかの行動を行い、物や機会などをゲットした時にその行動の機能は「獲得」であったと確認する事ができます。
2つ目は、「逃避」です。児童の行動によって、何かを避けた時にその行動の機能は「逃避」であったと確認する事ができます。

注意しなけらばならないのは、例えば同じ「泣く」という行動であっても、機能としては泣いたことによって飴がもらえる場合と、泣いたことによって課題をしなくてもいい場合など、機能が異なる事があるという事です。
この行動の機能を見誤ると、支援を進めていく事が困難になる為慎重に判断し、つど確認する事が重要です。

またもう一点、この再定義の際に確認すべきことは、「随伴性」です。ある行動の前後関係を考える時に重要なのは、本当にその刺激によって行動が発生し、またその行動によって生じた結果なのか、という点です。あるシチュエーションにおいてAが生じた時に直ちにBが発生し、直ちにCが生じたか、辻褄が合う形で再定義する事が重要になります。

準備その4ーゴール定義

最後の準備は、対象となる行動がどう変化する事が望ましいか、観察できる形で定義する事です。
例えば、積み木を放り投げることを対象行動として扱う場合には、課題取り組み中に積み木を投げず、与えられた課題を最後まで〇〇分以内に完了する事ができる、などど記載する事ができます。

まとめ

ここまでで、ざっとABIに関する前提と、実際にABIを実践するまでに必要な準備に関してまとめてみました。
Antecedent-basedと言われている通り、ある行動が何によって生じているのかそれを外部環境から探り改善していくアプローチがABIであり、その為にはいかに「観察」が重要かという事がわかります。頑固だから、ひねくれているからと問題を内在化してしまうよりも、ABIのように子供達の外部にある要因を分析し改善していくアプローチの方がより素敵なものが得られるのかもしれません。
また不適切行動の改善に限らず、どのような条件下であれば、どんな行動ができるのかという形で捉える事もでき非常に汎用性の高いアプローチなのではないでしょうか。
それでは次回、実践編でまたお会いしましょう

リファレンス
https://autismpdc.fpg.unc.edu/evidence-based-practices

*調べながら書いてますが、単語の意味や内容は厳密に正確であることは保証できません参考程度にご活用ください。

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