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エビデンスのある療育ーDR実践編

はじめに

本記事は前回の続きです。まだ読まれていない方はそちらから先に読まれることをお勧めいたします。

4つのDRはもとを辿れば、いずれも強化するということなので、実践も計画に従って強化していくという形になります。実践していく上で必ず実施しなければならないことや、流れについて簡単に紹介します。

DR実践ーDRO

1.児童との話し合い

あらかじめ、どんな問題行動を消去したいと考えているか、またそれはなぜか児童に伝えます。さらにどのような行動をする、またはしないと強化子にアクセスすることができるのかもあらかじめ伝えます。

児童によっては口頭だけでは何を議論しているのか理解しにくい場合など、それぞれのコミュニケーションスタイルで伝えていくことが必要になります。重要なのは複雑な意思表示やイントラバーバルがまだできないからこの手順をスキップしてしまうということなく、児童が理解できる、伝わる形で今後起こることについて共有していくことです。

2.強化スケジュールの遵守

あらかじめ計画段階で立てた、強化スケジュールにしっかりとのっとり強化を行います。行動変容のキモは強化にあるため、何をいつどのように強化するのか保護者の方も含めチームメンバー全員で共通認識化できているのか確認します。

主要確認事項

・インターバル終了時に問題行動が該当インターバルで発生していないときに必ず強化する
・強化子を強化子として機能させるために、DROを使用している場面以外でDROで使用している強化子にアクセスできないようにしておく
・有形の強化子(おやつ、おもちゃ等)を提供する際には、社会的強化子(賞賛やハイタッチ等)も同時に使用し、社会的強化子が強化子として機能するようにペアリングする
・社会的強化子による強化が有効化するにつれて、有形の強化子など強力な強化子の使用頻度や量を減少させていく
・複数の強化子から児童が選択することができるようにするなど、強化子への飽きに対して対策してあるか
・児童の成長に応じてインターバルの時間を増加する計画は整っているか
・問題行動がインターバル中に発生した時の対処法は何か(問題行動の発生に合わせてその時点でインターバルをリセットする、または、リセットせず継続し、次のインターバルで問題行動が発生しない場合に強化する)
・問題行動が発生したときに、そのインターバルで強化子が得られないという説明を児童にどう伝えるか

3.DROの拡張
特定のシチュエーションで問題行動が消去、または事前に定めた基準を満たす形で減少した場合には、より自然な環境下や他のシチュエーションでもDROを使用して訓練することができます。例えば、最初の訓練は学校の教室で実施し、当該問題行動が実は、塾や他の場所でも起きているような場合には、次の場所へとDROを拡張していくことができます。

DR実践ーDRL

1. 児童との話し合い

ここはDROと同様です。児童が理解できる形で、これから起きることとどのようにして強化子にアクセスできるか伝えます。

強化のシステムに関してより理解してもらうための補助的な仕組みとして、例えばDRLを実践する場所に、強化子のイラストを児童の目につく場所においておき、問題行動が発生するたびにそのイラストカードが取り除かれていくといった形で実現できます。

2.強化スケジュールの遵守

インターバルやセッション完了後にあらかじめ定めた基準と同じまたはそれよりも少ない回数、問題行動が発生していた場合に強化を行います。

もし、基準に満たなかった場合には強化子は与えず、児童が自分で自身の行動を理解できるようにフィードバックします。今回はきょうかしがもらえないこと、およびまたチャレンジすることは可能であることを、理解できる形で伝え次のインターバル、セッションへと移行します。

児童の成長に応じて、〜回以下などと定めていた基準をさらに少なくすることや、またインターバルで行う場合にはそのインターバルを長くしていくなど、最終ゴールに向けて調整していきます。

3.DRLの拡張

DROの場合と同じように、あるシチュエーションで達成できたら、DRLの実践の場を拡張します。また強化子を提供する人をセラピストから学校の先生、保護者の方等へ変化させていくことも般化の手助けになります。

DR実践ーDRI、DRA

1.児童との話し合い

これもほとんどDROの場合と同様です。一点だけ異なるのは、強化子へのアクセスが問題行動をしないことではなく、代替行動をすることに変わるため、その点をしっかり抑えて理解できる形で伝えます。

2.強化スケジュールの遵守

あらかじめ計画段階で定めた通りに、強化を行います。DRI、DRAの場合には実行の初期に継続的に代替行動等の目標としていた行動が発生するたびに強化をすることが重要です。継続強化によって代替行動をすることが強化子へのアクセスになるということをより理解しやすくなります。

児童が代替行動をし強化する際には、必ず児童がした行動に関して説明を加えながら強化を行います。例えば、手をあげてから質問するという行動を強化している場合には、「手をあげて、指されてから質問できたね、すごいね」などとすることができます。児童がなぜ強化子にアクセスできたのかつど簡単な説明を加えておくことが重要です。

強化子を強化子として機能させておくための方略はDROの場合と同じです。代替行動をした場合にのみアクセスできる状態にしておく必要があります。また社会的強化しの使用に関してもDROと同様です。ペアリングと、有形強化子や、かなり強い強化子の使用の減少を学習ステップに合わせて実施していきます。

初期に継続的な強化を行い、児童の代替行動が板につき始めたら、間欠強化スケジューに段階的に移行します。

DRI、DRA実践中に問題行動が発生した場合には、児童のその問題行動には反応し無いようにするか、または問題行動を中止させ代替行動ができるように合図ないし必要であればプロンプトを使用します。後者の場合、代替行動が発生した場合には強化を行います。

3.DRI、DRAの拡張

DROの場合と同様です。場面を変えたり人を変化させることでDRI、DRAの実践の場を拡張し般化します。

DR実践ーモニタリング

それぞれの方略に関して計画した際に、ベースラインデータを収集した時と同じ形式で、実践中の変化をモニタリングします。期待通りの変化が見られるかどうかは、数字上で判断していくことが重要です。

頻度計測データ

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DRモニタリングデータ

持続時間計測

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DRモニタリングデータ (1)

DR実践ートラブルシューティング

実践していく上で、問題が生じた時や、変化がうまくいかないとデータ上で判断される場合には施策の修正が必要です。また逆にうまくいっていると判断されている時でも、DRI、DRAではつど強化していく形から間欠強化への移行があるように次のステージに進むような修正も必要になってきます。

計画通りにDRを実践しているが、強化子が機能していないケース

強化子の強さが十分で無い場合があります。別の強化子を使用するようにするか、強化子の関して再度アセスメントを実施し好みの強さを比較把握する必要があります。

DROを使用している際に、行動が減少しないまたは別な問題行動が発生するケース

児童の行動レパートリーが十分で無い可能性があります。DRIやDRAを使用して必要な代替行動を同時に学習させていく方針の方が機能するかもしれません。

DRLを使用している際に、減少基準をベースラインデータから平均値に設定したが、基準を満たせず強化できないケース

ベースラインで最初に収集したデータよりもさらに緩めた基準でスタートする必要があるかもしれません。仮にベースラインの平均値が5回出会った場合、基準を6回以下に設定することができます。これでも進捗が見られない場合には、セッションを中断し、インターバルをより細かく、またそれに応じて基準も変化させて対応します。

DRがある先生の元では機能しているが、別の先生や人の場合には全く機能しないケース

いずれの先生も同じやり方を実践しているのか、そこに差異や誤りがないか確認します。

まとめ

今回はDR実践編ということで、4つのDRに関してそれぞれ、簡単に紹介させていただきました。準備編でもお伝えさせていただきましたが、強化を通じて問題行動を減少することができ、また実践もそこまで複雑ではありません。タイマー等を使ってデータ計測しなければならない点や、起きたらその場で回数を数えていかなければならない点は、やや手間に感じられるかもしれませんが、それ以上に児童にとっても支援者にとってもメリットの大きい介入方法になります。

リファレンス

https://afirm.fpg.unc.edu/node/1591

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