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エビデンスのある療育ープロンプト実践編

こちらの記事HPの方でリライトしました。よろしければそちらも合わせてご参照ください。


はじめに

本記事は、前回の続きです。まだ読まれていない方はそちらから読んだ方がわかりやすいかもしれません。
長かった準備編を経てようやく実践編です。準備編で3つのアプローチがあることを紹介させていただきましたが、今回の実践編では3つそれぞれの手順に関して紹介します。

最小ー最大プロンプトその1 注意と刺激の確立

準備編では、対象となる刺激や合図、サインを特定しました。実践編においては実際にその刺激や合図の確立操作を行います。児童に注意を向けてもらう方法としては、直接対象刺激や合図を提供することで得られる場合もありますが、別途注意を向けてもらうように工夫する必要がある場合もあります。工夫が必要な場合には、アイコンタクトや使用するものに触れさせるなどのアプローチが有効です。いずれの場合にせよ児童の注意がこちらに向いているタイミングで対象刺激と合図を提供します。


・注意の獲得
先生がたかしに「ちょっと見て」、と声をかける
・注意の獲得の確認
たかしが先生の方を見る
・刺激の提示
先生が、たかしに鯨のイラストを見せる
・合図の使用
先生がたかしに、イラストを指差しながら「これなんだ?」と聞く

最小ー最大プロンプトその2 反応待機

刺激と合図を提供した後で、計画した時に決めた時間だけ児童の反応を待ちます。

最小ー最大プロンプトその3 反応への対応

決めた反応時間を待った後、児童の行動に合わせて、それぞれに対応します。主な対応パターンは以下の通りです。

対象行動やスキルを使用できた場合
・強化子を提供する
・出来たことを伝える(例:そうだね鯨だね。すごい自分で手洗い出来たね)

対象行動やスキルの使用ができなかった場合
・誤った反応を中断させる
・次のレベルのプロンプトを提供する
・対象行動やスキルが使用できるレベルまでプロンプトを順次使用する
・強化子を提供する

そもそも反応がない場合
・次のレベルのプロンプトを提供する
・対象行動やスキルが使用できるまでプロンプトを順次使用する
・強化子を提供する

最小ー最大プロンプト データ収集

上記の形で実践していく中でデータ収集を行います。このアプローチを使用する場合に児童の反応としては、以下の5種類の反応があるためそれぞれに関して、取集していくことが必要です。

・プロンプトなしでの正しい反応
自立レベル(プロンプトなし)で対象行動やスキルの使用が出来た

・プロンプトありでの正しい反応
自立レベル以外のプロンプトを用いた時に、対象行動やスキルの使用ができた

・プロンプトなしでの誤り
プロンプトを使用しなかった場合に、対象行動やスキルを誤って使用するまたは別な行動をする

・プロンプトありでの誤り
プロンプトを使用した場合に、対象行動やスキルを誤って使用するまたは別な行動をする

・反応なし
正誤問わずそもそもなんの反応も帰ってこない

また個別スキルと連鎖スキルの場合には収集方法が異なります。連鎖スキルの場合には、連鎖スキルのうちどの程度できるようになっているのか把握するようにするため、割合を求めます。

個別スキルの場合のデータ収集例
画像1

連鎖スキルの場合のデータ収集例画像2

トラブルシューティング


コントロールプロンプトなのに対象行動が発生しない
・より介入度の強いプロンプトに変更する

中間レベルでのエラーが頻発する
・プロンプトレベルの階層を増やす
・別のプロンプトを使用する
・タスク難易度の再検討

プロンプト待ちが発生する
・プロンプトあり、なし場合の正反応への強化を変更する
・プロンプトありの正反応への強化をなくす

どのレベルでもうまくいかない
・より強力な強化子を見つける

段階的ガイダンスその1 注意と刺激の確立

ここは最小ー最大アプローチとほぼ同様です。以下に簡単な例を紹介します。


・注意の確立
たかしが外で遊んで室内に戻ってきた時に、先生はそばに寄って名前を呼ぶ
・刺激への注意の確立
先生はたかしの手を見て、「汚れちゃったね」と声をかける
・合図の提示
先生はたかしに、「手を洗いましょう」と声をかける

段階的ガイダンスその2 反応待機

刺激と合図を提供した後で、計画した時に決めた時間だけ児童の反応を待ちます。

段階的ガイダンスその3 反応への対応

決めた反応時間を待った後、児童の行動に合わせて、それぞれに対応します。主な対応パターンは以下の通りです。

初回合図の後に反応がない場合
・連鎖タスクを開始するためだけに必要な量と種類のプロンプトを提供する
・児童が連鎖タスクを開始したら、プロンプトの強度や量を減少させていく

連鎖タスクを途中でやめてしまう場合
・直ちに、連鎖タスクをするのに十分な量と適切な種類のプロンプトを提供し連鎖タスクができるように促す

対象行動やスキルが誤って使用される場合
・直ちに誤った使い方を中断し、連鎖タスクを正しく行うために必要な量と適切な種類のプロンプトを提供する。

身体プロンプトに抵抗する場合
・動かさず児童の手を握りってじっとする
・抵抗が治ったら、連鎖タスクを完了できるように適切な量と種類のプロンプトを提供しながら、動かす。

連鎖スキルの個別ステップが適切に完了した時
・口頭で褒めたり喜んだり社会的強化子を提供する

連鎖タスクが完了した時
・連鎖タスクが適切に完了したことに対して強化子を提供する

連鎖タスクの最後のステップで抵抗が生じる場合
・強化子は提供しない
・児童が落ち着くまで、対象行動やスキルを教えようとしない
・連鎖タスクの最初からやり直す

段階的ガイダンスその4 データ収集

上記実践をしていく中で、データ収集を行います。対象となるデータは、プロンプトなしで完了した連鎖タスク、プロンプトありで完了した連鎖タスク、抵抗を伴って完了した連鎖タスクの3種類です。

画像3


同時プロンプトその1 注意と刺激の確立

こちらも上記二つとやることは同じです。

同時プロンプトその2 導入セッションの実施

導入セッションでは、児童の反応を待たずにすぐさまコントロールプロンプトを使用します。児童の注意を確立して、刺激を提示し、合図を出したあとすぐにコントロールプロンプトを提示します。


・注意の確立
先生は、たかしの名前を呼ぶ
・対象刺激の確立
先生は、「いぬ」と書かれたフラッシュカードをたかしに見せる
・合図の提示
先生はたかしに、「これなんて読む?」ときく
・コントロールプロンプトの使用
先生は、「いぬ」と言う(児童が音声模倣ができまた先生の言葉をいつもほぼ完璧に模倣できる場合、コントロールプロンプトと言える)

導入セッションにおいて、コントロールプロントを使用して児童が対象行動やスキルを使用できた場合には、強化子を与えまた何ができたのか分かるように伝えます。


すご〜い、よく読めたね!「い・ぬ」って読むんだね

一方児童がスキルを使用しない反応しないような場合、つまりプロンプトエラーが発生してしまった場合には、その反応を無視して次の導入セッションに移ります。

同時プロンプトその3 確認セッションの実施

確認セッションの場合にはプロンプトを提示した後で児童の反応を決めた時間だけ待ちます。児童が対象行動やスキルを使用できた場合には、強化子を与え何ができたのか分かるように説明します。一方対象行動やスキルが使用できなかったまたは反応がないといった場合には、それらの反応を無視して次の確認セッションに移行します。

同時プロンプトその4 データ収集

上記を実践していく中で、データ収集を行います。導入セッション、確認セッションのいずれにおいてもデータ収集を行い、プロンプトが対象行動やスキルを使用するに十分なものか、また強化子は有効に機能しているかどうか確認します。

導入セッションのデータ取集例

画像4

導入セッションにおいてデータ収集をした場合に仮に誤反応が25%を超えてしまったら、コントロールプロンプトを変更する必要があります。
確認セッションの場合もデータ収集の形式は同じです。

トラブルシューティング

プロンプト、アプローチを変更する必要があるケース
・5連続の確認セッションにおいて誤反応の割合が25%を超える
・導入セッションの正反応率が100%

別な強化子を使う必要があるケース
・3連続の確認セッションにおいて無反応率が25%を超える

連鎖タスクのステップを変更する必要があるケース
・連鎖タスクの工程をスキップしてしまう

まとめ

以上がプロンプトのを実際に実践していく上でのステップになります、どのアプローチを採用しても、最初にやることは同じですがデータの収集はそれぞれ見方が違います。もしプロンプトで進捗が見られない場合にはそれぞれのアプローチにあるトラブルシューティングを試してみるか、そもそも行動の定義が正確にできているか、児童にマッチした課題やプロンプトになっているのかという点を検討するのが有効です。どうやってもうまくいかないという場合には他のEBPを試してみることも新たな発見につながるかもしれません。

リファレンス
https://afirm.fpg.unc.edu/node/390


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