エビデンスのある療育ーFBA準備編

こちらの記事HPの方でリライトしました。よろしければそちらも合わせてご参照ください!


はじめに

科学的に根拠があると言われる療育方法を、紹介していくシリーズ2本目はFunctional Behavior Assessment(FBA)です。
ABIの際にも問題行動を分析する上でFBAを用いていましたが、今回はより詳細に関して調べたものを紹介します。

FBAとは?

児童の問題行動のなかで、他人や自分を傷つけてしまう恐れのある身体の安全に関わる行為や、児童自身の学びを妨げている行為への対処に用いられる方法です。FBAにおいて設定される主なゴールは下記のものになります。
・問題行動の減少
・適切な行動の増加
・教室で行われる活動へのより参加できる
・自傷行為の減少

FBAのメリット

FBAを利用することによって、いつどこでなぜ問題行動が生じているのかというデータを取得することや、それらを用い、問題行動が発生する理由の分析、潜在的に問題行動を強化してしまっている原因、より効果的な支援方法の構築などを達成することができます。

年齢別に効果が確認された領域

0〜2才
・行動

3〜5才
・行動
・就学準備
・アカデミックスキル

6〜11才
・コミュニケーション
・行動
・就学準備
・適応力
・アカデミックスキル

12〜14才
・行動
・就学準備

15〜22才
・行動

準備その1ー多分野共同チームの組成

FBAを用いた分析を開始するにあたり、まず行われるのは分析チームの組成です。この分析チームは多くの場合、すでに対象となる児童の個別支援計画を作成しているチームメンバーで構成されますが、多角的に分析するためには既存のチームメンバー以外の人にも参加してもらうことが望ましいです。

参加対象になる人々のリスト
・対象となる児童の先生(特別指導教員や、通常学級教員等)
・日常的に支援に関わるセラピスト(言語聴覚士、作業療法士、行動分析士etc)
・児童支援に直接関わるパラプロフェッショナル(専門職助手)
・児童の保護者や家族
・児童本人(発達段階を鑑みて可能であれば)

準備その2ー対象行動の特定と共通認識化

チーム組成が出来たら次に行うのは、FBAの対象となる行動の特定と、その行動に関して認識を共通のものにすることです。
ある行動がFBAの対象になるかどうかを判断する際には以下の質問に該当するかどうかで判断することができます。

FBAに該当するかの質問
・その行動は、児童本人や周りの人々にとって危険な行動ですか?
・その行動は、児童の学びを阻害していますか?
・その行動は、児童が他の児童と社会的な関わりを持つことや、受け入れられることを妨げていますか?
・それは頻繁に起こりかつ壊滅的または激しい行動ですか?

上記の質問を通じ、FBAの対象となる行動を特定した場合に、その行動に関して共通認識化を行うことが重要です。行動の定義が曖昧であるとチームメンバーごとに対象行動への認識がずれて誤った対処や誤ったデータ収集といった事態が発生しかねません。これらを未然に防ぐために全員が同じ認識を持てるように定義を確認します。


行動特定時の定義 
「ミキは、物を片付けるように告げると怒る」
共通認識化をした後の定義 
「ミキは、ものを片付けるように告げると、癇癪を起こし、片付けなければならないおもちゃを手に取り周囲に向かって投げる」

準備その3ーアセスメントツールの選択

問題行動に関して、より詳細に理解するためにアセスメントを活用することが有効です。行動の分析を進めていく上でどのアセスメントツールを用いるか事前に選択しておく必要があります。
FBAで用いられるツールは下記のものになります。

BEHAVIOR ASSESSMENT SYSTEM FOR CHILDREN (BASC-III)(英語:購入)
所要時間 15分
行動機能の評価と行動の問題の特定(攻撃、多動、行動の問題)ができます。 「なし」から「ほぼ常に」までの4段階の頻度で評価されています。

FUNCTIONAL ASSESSMENT SCREENING TOOL (FAST)(英語:PDF)
所要時間 15分〜30分
行動の潜在的な理由を特定します。27のYesNo質問で構成され、スコアリングすることで行動の機能を、注意の獲得、特定の物・活動に従事することの獲得、逃避、感覚刺激の獲得、痛みの減衰、に分類します。

PROBLEM BEHAVIOR QUESTIONNAIRE (PBQ)(英語:PDF)
所要時間 15分〜30分
行動の潜在的な機能を特定します。18個の質問で構成され特定の問題行動がどれほどの頻度で発生しているか比較することができます。

MOTIVATION ASSESSMENT SCALE (MAS)(日本語:PDF)
所要時間 15分〜30分
問題行動の動機を特定します。16の質問で構成され、感覚、逃避、注目、要求に分類されます。

FUNCTIONAL ASSESSMENT INTERVIEW (FAI)(英語:PDF)
所要時間 45分〜90分
教師、支援者、保護者など児童と関わりのある様々な人に対してインタビューするためのフォームです。対象とする行動に関する詳細情報や、問題行動が発生した時の出来事、考えられる原因、行動の機能等の情報が得られます。

STUDENT-DIRECTED FUNCTIONAL ASSESSMENT INTERVIEW (STUDENT-FAI)(英語:PDF)
所要時間 20分〜40分
児童が自身で問題行動に関して説明できるときに用いるイタビューフォームです。問題行動に関して児童自身がどのように理解しているか、またいつ起こるのかという情報を直接得る事が出来ます。

準備編その4ーデータ収集プランを考える

児童の行動の現状を把握する上で、どのくらいの時間または頻度でどんな時に問題行動が生じているのか今現在のデータを取得する必要があります。
このデータ収集を行う上で、誰がデータ収集を行いやすいか、またどの程度のデータ量(観察量)が必要か、万が一求めていたデータが取得できなかった時どのように対応するか(代替プラン)、これらを事前に決めておく必要があります。


対象の問題行動 「ミキは、ものを片付けるように告げると、癇癪を起こし、片付けなければならないおもちゃを手に取り周囲に向かって投げる」

この問題行動は、教室での遊び時間に最も頻繁に発生する。担当の先生Aは他の児童も同時に見なければならないため、データの記入が困難。そのため手の空いている先生Bに、遊び時間の間、5分ごとに問題行動が発生しているかチェックしてもらい、このデータ収集を4日間実施する。十分なデータが得られない場合には、対象とする時間を広げることで対応する。

まとめ

以上がFBAを実践するまでの準備でした、深刻な問題行動が発生している時には、とにかく早く対応しなければと焦る気持ちや、もう手に負えないのではないかという場合もあるかと思います。そのような時こそ、チームの力を使って、一つ一つ情報を整理し見通しを持った行動介入が有効なのではないでしょうか。
アセスメントのほとんどが英語版など、実際に情報整理をしていく上でやや実行可能性が低くはなりますが、問題行動に対して介入計画を作る考え方としてはそのまま活用できるかと思います。

次回 エビデンスのある療育ーFBA実践編

リファレンス
https://afirm.fpg.unc.edu/node/783

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