見出し画像

エビデンスのある療育ーMD準備編

こちらの記事の模倣に関して模倣訓練のみピックアップした記事を書きました。よろしければこちらも合わせてご参照ください!


はじめに

エビデンスのある療育を紹介していく本シリーズ、今回はモデリング(MD)です。

他の記事中でもしばしば、モデリングというワードが出てきましたが、模倣そのものを目的にしたものと、プロンプトとしてのモデリングなどが、混在していたため、その整理も兼ねてご紹介します。

モデリングとは

モデリングとは読んで字の如く、お手本をみせ、児童はそれを観察し、実行するという一連の流れを含んだ介入方法の一つです。お子さんに何か教える際に、まずは自分がやって見せるなど、あまり意識せずとも日常生活の中で多くの人が経験したことのある物だと思います。

療育という文脈においては、モデリングは2種類のものがあります。児童が行動する前に提示するお手本としてのモデリングと、児童が行動した後、またはしようとしている際に用いるプロンプトとしてのモデリングです。今回はそれぞれに関して、内容を整理しながら紹介します。

またモデリングは、プロンプト強化などと他のEBPと組み合わせて使用され、児童の新しいスキル獲得やその維持、般化という点において有効かつ、ほとんど追加で必要なものがない費用対効果の高い介入方法です。

モデリングによって達成できること

モデリングによって達成できる主な目標や領域は下記のようになります。

・共同注意
・社会的スキルの模倣
・感情共有
・共感
・あいさつ
・遊び
・アカデミック
・コミュニケーション
・職業関連スキル

科学的に効果があると確認された領域

スクリーンショット 2019-10-28 12.30.08

MD準備ー必要なスキルを持っているかチェック

モデリングを通じて児童が学習していくためには、その前提として児童が持っていなければならないスキルがあります。これらのスキルがまだない場合にはまずそれらの点を最初に学習する必要があります。

前提になるスキル・条件

・他者の行動を模倣・真似する。


お父さんが電話をかける様子を見て真似する
同級生の言葉遣いを真似る

・学習対象スキルの、いくつかの部分は実行できる。


手洗いのうち、蛇口を捻って水を出すことができる
「いぬ」という単語を発音する学習の時、「い」・「ぬ」というそれぞれ単音の発音ができる、異なる音を持つ2音を組み合わせて発音することができる等。

・お手本を見せているときに、最初から最後まで注視することができる。


「こんにちは」という挨拶を学習する際に、「こんにちは」と支援者がやって見せる時間(2〜3秒)児童はそこに注意を向け維持する事ができる。
サンドイッチの作り方をやって見せる時、パンに卵を挟み、レタスをはさみ、さらにパンを乗せるまで(30秒〜1分)注意を向け維持する事ができる。

MD準備ーEBPの選択

前提条件が確認できたら、次に一緒に使用するEBPを決めます。冒頭でもお伝えしましたが、多用されるものとしてはプロンプト強化になります。またプロンプトにおいては特にコントロールプロンプトを使用し、確実に模倣できるような形で学習していく方法が使用される事が多いです。

上記二つだけしかだめということではなく、ケースの文脈に合わせて、部分的にまたはモデリングをコアコンポーネントとして設計する事ができます。


モデリングx強化
「こんにちは」と支援者がやってみせ、児童が「こんにちは」と3秒以内に言えた時に強化する。

モデリングxプロンプトx強化
「深呼吸しましょう」と合図を出す、児童の行動を待つ、無反応や誤反応の場合支援者がお手本としてやって見せる、児童が真似する、強化する。

MD準備ーシチュエーションやタイミングの把握

セラピストと一対一で学習する時に加え、モデリングを実施できるような日常生活でのシチュエーションや、教室以外でどのような場面が活用できるか事前に把握しておきます。

たかしのケース
目標:1−10の数字を区別して使用する
活用シチュエーション:算数の時間、給食の時間
活用方法:算数の時間は、黒板に書かれた数字を見て、他の児童が答えた答えを真似する機会を先生から提供してもらう。給食の時間はグループで必要な牛乳の数をカードに書き、幾つ必要か書いた数字を同級生が読む、そのあとで、幾つ必要なのか、たかしは聞かれ答える。

MD準備ー協力者を探す

お手本や見本を提示する人として最適なのは、実は学習児の同級生や兄弟姉妹などです。というのは、自分の体の大きさやその使い方に関して大人よりもずっと近しいからです。そのため、教室やまたはお家などで身近に年齢や体系が近しい協力者がいると非常に効果的です。が、もしいない場合や難しい場合、リスキーな場合には先生や保護者の方、セラピストが実施しても問題ありません。

同じ年頃の子供たちに協力してもらい際には、適切にモデリングできるように対象となる行動やスキルに関して事前に学習してもらいます。ロールプレイや手引きを通じてどのようなタイミングでどのようなことをすればいいのかきちんと理解できるように教えていきます。

MD準備ーモデリングタイプの明確化

明らかに一つのタイプしかモデリングを用いないケースも、二つのモデリングタイプを複数含んで用いるケースも、それぞれに関してこのモデリングはどのタイプなのか明確にしておく必要があります。

というのは、手本・見本として使用するものとプロンプトとして使用するものでは、その使用タイミングが異なるからです。あらかじめどのような文脈で使用するのか明確にしておくことで誤用を防ぐ事ができます。

手本としてのモデリングは行動の前

①対象行動をやって見せる
②対象行動を児童が模倣する
③強化する

プロンプトとしてのモデリングは行動の後

①対象行動を使うよう合図を出す
②児童は誤反応か無反応を示す
③対象行動をやって見せる
④対象行動を児童が模倣する
⑤強化する

まとめ

モデリング単体で見れば、やって見せるだけなので簡単に見えますが、重要なのはどのような文脈で何を使用し、結果どうするかという点です。モデリングと強化を使用する場合には、その行動が将来発生する確率を高めるためであり、その発生率が高まると、どのようなメリットが児童およびご家族をはじめとした周囲の人にもたらされるのかまで見えている必要があります。モデリング単体でなく流れの中でどの部分を担うのか認識しながら実践できると非常に実りの大きい施策になるのではないでしょうか。

次回 モデリング実践編

リファレンス

Background photo created by freepik - www.freepik.com

サポートしていただいたお金は、「試す事」に充てさせていただきます。