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オードリー若林&星野源「感情って道に乗り移ってる」

※本日のインスピレーションは、社会人1年目しっかり打ちひしがれしイーストショアにとって金言となったあちこちオードリー2021年6月20日放送分より。そもそもスクショを載せていいのかそのあたりのリテラシーがなってないのでやばいことしてたらコメントでご教示ください。無知―ストショア。それでは本日も、張り切って、どうぞ(?)

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町田という街が、嫌いだ。なんかいつも臭い気がするし、小田急線の改札は酔いのまわった大学生の集団で騒がしいし、横浜線の改札は無駄にだだっ広い、気がする。駅周辺を往来しているのは疲れ切ったサラリーマンと主婦と、あとは若者という名の煩悩ばかり、な気がする。昼間は晴れた空もあるが、町田の空が夜、晴れていたためしなどない、気がする。町田という街、って別にダジャレじゃないわよ。サブすぎるでしょ。

朱莉は町田という街が、大嫌いだった。もはや生理的に。だからデートにも、美容院に行くのにも、町田という地は決して選ばなかった。アルコールを摂取さえできればいいというネジの外れた飲み方をする朱莉は、それでも町田で飲もうと友達を誘ったことはただの一度もなかった。町田で生まれ育った人がこれらの朱莉の言葉を聞いたら憤慨するだろうが、そんな怒号を飛ばす、町田市民ももれなく嫌いだといえるほど、朱莉のこの土地に対する嫌悪感は凄まじいものだった。

理由はたった一つ。今時古臭いと笑われる漫画にしか描かれないようなTHE(ジ)・アナログ営業で朱莉が担当したエリアが町田だったから。

町田は冤罪だ。

「〇〇さ~ん!!こんにちは、ご近所でお世話になってます××です~!ご挨拶ですのでお玄関先までお願いしまーす!すぐ済みます!」

もう思い出したくもないし、でも一息にこんな感じのことを毎日叫んでいた朱莉。ご近所でお世話に?なってないわよこれっぽっちも。毒は吐けても、彼女の顔には力ない困ったような笑顔がこびりついているだけだった。


すれ違う人全員が、後ろ指差してあたしのことを嘲笑ってる気がした。

老人と目など合ってしまえば「この人騙し!」と罵声が飛んでくる気がした。

怖かった。恐怖はたちまち、黒く重い、鉛のような「憎悪」という感情に変わっていった。鉛色をした筆はどんな毛筆よりも太く、ひと塗りで朱莉の心を支配した。人と目を合わせるのが怖い。なんでも「そうだね、あたしもそう思うよ」の一言で片づけたい。インスタのストーリーなんて開こうものなら、胃液がせりあがってくる。

朱莉は、土地を敵に回すことで、「あたしの居るべき場所はここじゃない」と強がることでしか、自我を保つことができなかった。

町田は冤罪だ。

「朱莉ちゃんって町田住んでたことあるんでしょ、この辺の飲み屋知らないの?」

「だって私この街嫌いだったんだもん飲みに行ったことなんてなかったの」

「なにそれー。今も嫌い?」

「今は好きだよー。耕太くんに出会えた街だもん」

「なにそれー。あはは」

朱莉はもう、後ろ指を差されようが、聞こえるように悪口を言われようが、気づくことはない。朱莉の眼は曇った町田の夜の空に慣れ、朱莉の鼻は揚げ物と焼酎の混ざったような居酒屋のにおいに慣れ、朱莉の耳は大声で話す耕太の音量に慣れた。二つの煩悩は、町田駅南口に流れていく。

町田は、冤罪だ。


≪終≫

なんかバッドエンドになっちゃった、あは。

ほなまた。


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