起きた息子がやってきて、「信用創造って知ってる？」という。なにそれ。

「銀行の用語らしいんだけど」
「えっ、知らない。信用創造、ほぼ天地創造じゃん」

公民の授業で習ったそうで、でもうまく理解しきれないという。

ちょうど弁当ができあがったところだったから、スマホで検索して解説文を読んではみるのだけど、理解よりも信用創造ということばの強さにとらわれた。

お金周りのことばはたまに急にミラクルな感じを出してくる。

私は会計ソフトにある「実現」ボタンがすごく好きで、押すと「実現」するのだからすごいといつも思う。

信用創造は学校で先生に聞くというから送り出し、娘もぼやぼや支度して出て行った。私は私で午前中にやるべきことが集中しており、もりもり片づける。

台所のテーブルを作業机にしている。目の先にはひな人形があり、もう3月かと眺めながら（あと数日後にはこれ片づけるんだなあ）と思った。

季節のお飾りは愛でるたのしさの隣に極めて切実な、出してひっこめるものという現前とした事実がある。

さて、サンリオピューロランドに行きます。

ディズニーの大ファンでディズニーランドで遊ぶことに精通しながら、サンリオにも興味があるんだという友人が以前から声をかけてくれていて、やっと。

14時から入園するチケットがあるそうで、我々にわかファンにはちょうどいいだろうと買っておいてくれた。

私はファンシーなもの、かわいいものに大変に弱い。

近ごろ家に遊びに行かせてもらった友人は3人いるが、3人全員、部屋に「顔」が無いのには驚いた。

顔というのは、人形やぬいぐるみ等立体、何らかの生命体を描いたイラストや写真など。3人とも、おそらく像にまるで興味がないのだ。

うちなどはぬいぐるみをよく可愛がるからそれなりにあるし、カレンダーはドラえもんだし、食器にも平気で動物の顔がプリントされている。

友人も自宅はミッキーマウスのグッズで大変なことになっているそうで、かわいいものに関心があると家には顔が増える。

ピューロランドにやって来て圧倒されたのは、現場それ自体もさることながら、かわいさを求めてやってくる人の多さとその熱だった。

この人たちの部屋にはきっと顔がたくさんある。像を希求する者どもが押し寄せてうねる。

館内は異常な量のかわいらしさがおしみなくあふれた。体感的に肝臓に来る。かわいいの分解が体内でもう間に合わない。喉がかわいてコーラが飲みたい。

娘には1週間ほど前からピューロランドに行くと伝えておいた。放っておくと私がぬいぐるみを買って帰ってきてしまうと危ぶんだ娘は（ぬいぐるみはあると手入れをしなければならないため、プレッシャーになるからもう増やさないようにしようと家族で話し合っている）、事前にこれが欲しいと、ポーチを指定していた。

それでも私は夢にうなされ、けろけろけろっぴか、マイメロディか、ハンギョドンの顔のぬいぐるみのポシェットを買いそうになっていたのだけど、キキララのトートバッグにとどめて娘の希望のポーチも見つけて買った。

そうして、小学生の頃デパートの催事スペースで行われた「サンリオフェスティバル」とが大好きだったのをはっと思い出す。夏休みによく祖母が連れて行ってくれた。

サンリオのキャラクターの素材を使ってさまざまな遊びができる催しで、私は砂絵のコーナーがいちばん好きだった。

A4くらいのサイズのボードの剥離紙をはがすと粘着面が出てくる。そこに好きな色の砂を流して接着させる。剥離紙はイラストの形に抜いてあり、剥がしながらいろいろな色を粘着させることで最後にカラフルな砂絵が仕上がるというものだった。

出し物やパレードを見て、ショップで買い物をしているうちにもう閉館の時間はやってきて、友人と「かわいかったね、かわいかったね」と胃から声を出しながら退場。外は寒く風が強くて笑った。

ピューロランドは娘が小さいころ近所の親子数組で行ったことがあった。あのときかわいかったのはキャラクターよりも子どもたちだ。

今日はただ純粋に、キャラクターだけがかわいかった。

帰って夜はシーフードミックスでお好み焼き。うまい。兄も妹もそれぞれにうまさを口にしており、よかった。

食後に仕事を進めていると、息子が「ラムネって2種類あるよね、口に入れると溶けるやつと溶けないやつ」と言う。

ああ、駄菓子のラムネみたいなのは溶けるけど、タブレットみたいなのはなめないと溶けないよね。

「溶けるやつは踏み固めた雪みたいで、溶けないやつは竹の節みたい」

娘が後ろで大きなくしゃみをした。

私が10年くらい前にアメリカ出張に行ったときに買ってきて使わないままになっていた手の消毒スプレーを噴射して匂いを確かめたらへんな匂いだったらしい。

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