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チガサキ⊿ライフ032 : 嘘

1. 歌

 「あぁあ、嘘ついたら針千本の始まり。」娘に抗議する息子の奇妙な台詞に、思わず微笑んだ。“嘘吐きは泥棒の始まり”と、“指きりげんまん”の歌がごちゃ混ぜになってしまっている。この失言を私と娘の両方にツッコまれて、いきなり劣勢になった息子であった。

2. 指きり

 「指切り拳万、嘘ついたら針千本飲ます」。の歌は子供の頃から親しんだフレーズであるが、語源は艶かしさと痛々しさを兼ね持つ奥深さがある。“指きり”は、遊女が好きな男性に愛の証として小指を切る事を意味する。そして、“げんまん”は拳万の字の如く拳で一万回ることであり、さらに針を千本飲まされる。

3. 遊女

 江戸時代の吉原遊廓で“指きり”は盛んに行われ、全国展開されたようである。吉原遊郭の女性には、小指の第1関節から先を切り落として上客に渡す慣習があったらしい。といっても、ほとんどの遊女は自分の指を切らず、死人の指を買って客に贈っていたとのこと。血のりをつけた死人の指を売る、指切り屋のビジネスモデルもあったぐらいだとか…。これを諺にして纏めるなら、“指切りは嘘つきの始まり”とでもなろうか、余計ややこしい。子供には説明できない、混沌とした真実、これこそが現実であった。

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