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3話:大井松田町の河津桜まつり

「日本の旅と風景印の物語」をテーマに、日本各地の旅紀行を綴っていきたいと思っています。
3話目は、昨春のお話になりますが、どうぞ読んでください。


3月になった。
このところ、あちらこちらから河津桜のニュースが届けられる。
ソメイヨシノの開花が待ちきれず、お花見に焦がれる日本人の心に、早咲きの河津桜はドストライクでつきささる。

本場の伊豆河津まで、足をのばしてみたいものだ。
しかし肝心の計画を立てていなかった。
ウクライナの侵攻のニュースを連日聞くと旅行気分もしぼむのだ。
そうこうするうちに、桜の花に逃げられてしまったら大変だ。
しかたない。今年は、神奈川県内の大井松田町が会場の「まつだ桜まつり」に出掛けてみよう。

いや、しかたないとは失礼だ。ごめんなさい。
あらためて紹介すると、「まつだ桜まつり」は、全国9位、神奈川県内1位の屈指のお花見スポットだと、何かで読んだ。
かく言う自分も「まつだ桜まつり」のリピーターだ。

この桜まつりが催される大井松田町は、実はかなり以前から知る人ぞ知る
河津桜の名所。
押しかけるお花見客のために、町役場の近くを流れる酒匂川の河川敷が、整備されて臨時の駐車場になる。そこからシャトルバスを運行して、会場までお花見客を運んでくれる。

むかしは河川敷の駐車場をさがしてうろうろしたが、ちかごろは「まつだ桜まつり」を検索すると、カーナビに入力する番地まで書いてある。

なんの準備も無く、東名高速にのって1時間ほどで着いてしまった。
とてもありがたい。
(ひとつの旅で3回楽しむというこだわりは、どうしたんだ!)

東名高速道路の本線を眼下に見おろす山の斜面に、桜まつりの会場はある。
海抜166メートルで、河川敷からは130メートルほど高い。
お世辞にも乗り心地がいいとは言えないシャトルバスに、お花見客がぎゅうぎゅうになって洗濯物のようにもまれながら会場入りする。
下車すれば、そこはもうひと足早い春爛漫の世界だ。

これを見たくて、たくさんのかたが各地から集まっていらっしゃるのだな‥‥

ついつい、おクルマのナンバーを拝見。
圧倒的に多いのが湘南ナンバーで、これはエリアが近いだけでなくこの松田町も湘南ナンバーの管轄だからでしょう。
近隣のナンバーには関心がうすいが、「品川」「練馬」など都内ナンバーの車には、「よくぞここまで」と目を引かれる。さらに「富士山」「三河」「袖ヶ浦」「郡山」などのナンバーをつけた車に出くわすと、「いったい何時に出てきたの?どの道走ってきたの?」と、話を聞きたくなる。

どこを向いてもこんな感じで、絵葉書のような写真が撮れる

山の斜面にめぐらされた小径を、河津桜がいっぱいに覆って、トンネルになっている。展望がひらけている場所もある。
そこも、ここも、と歩いて見て回り、じゅうぶんに河津桜を楽しんだ。

さて河川敷の駐車場まで戻るのに、あのシャトルバスでまたもまれるのかとしばし逡巡。もう帰りは下るだけだから歩いて行こうと決めた。
幸い天気は快晴で気持ちよく、早春の季節で見るもの全てが美しい。
ほかにもちらほら歩いて下山(⁈)しているかたが見られ、「行きも帰りも歩く」という常連さんもおられた。
次回からは自分もそうしてみよう。

さて、このあたりで本日の風景印をいただこう。
桜まつりの会場から山を下って、東名高速道路のガード下を徒歩でくぐると、JR松田駅前ロータリーに行き着く。ここの商店街をすり抜けて河川敷の方に向かって、しばらく歩いて行くと、1階建てだが間口が広いおおきな建物が見えてくる。
松田郵便局だ。
今日は河津桜を堪能したので、切手は静岡県の河津桜。
50円切手だったので、デザイン違いの2枚を贅沢に貼った。

中央を流れるのは酒匂川で、両岸に杉並木
大名行列の奴さんと、鮎供養のための鮎塚
うしろに雪化粧の富士山が見える

郵便局を出た先は、もう目の前が酒匂川だ。
河川敷の駐車場も、すぐそこだったが、道をそのまま少し歩いて、酒匂川にかかる十文字橋を渡った。
橋のうえから眺める今日の酒匂川は、ゆっくりと流れ、静かで穏やかで平和そのものに見えた。



もうそろそろ、鮎の稚魚が遡上してくるころだろうか。
目をこらして水面を見たが、そんなもの見えるはずは無かった。



それではまた、次の旅で。


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