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読書感想文未満【あなたと、どこかへ。】

つまみ食いが一番旨いと言ったのは誰だっただろうか。
自分自身だったように思う。


吉田修一、角田光代、石平、甘糟りり子、
林望、谷村志穂、片岡義男、川上弘美

図書館でちょいと自分にしては珍しく短編集、8人の作家によるアンソロジーを手に取ってみた。どうもいつも慣れ親しんだ作家の作品ばかり選んでしまいがちなので新規開拓をしたく。
もちろん読んだことがある作家もいれば、名前だけは聞いたことがある作家、全然初対面の作家もいるアンソロジー。“クルマで出かける場面を用意すること”だけを約束事に大体一人20ページくらいの作品がまとめられた一冊。
失意の主人公を慰めるドライブ、昔の愛を再確認するためのドライブ、郷愁のドライブ。

短編集の良いところは飽き性の自分でもすぐに読み終えられる所だ。複数の作家によるアンソロジーというものはあまり経験がなかったが、慣れる前に別の作風が登場するのも良い。
やはりこの人の物語は良いなと思うものあり、へぇこんな風に書くんだというものあり。
ひとつのテーマで自由自在、作家の色をその場で見比べられるのが面白い。間口を広げる手段としてはぴったりだろう。

一話、読書のための旅をする話があった。
海辺の何処かの街に用事があるわけでもなく、観光するでもなく、ただ本を読むためだけに出かけるのである。これはなかなか、面白い試みのように思えた。
今まで旅といえば現地で「何をするか」「何を観るか」というものだったのだが、こういうお籠り旅も心が豊かになって良い気がする。とんでもない贅沢でもあろうが……。
実際に調べてみれば現実にあるものだったりする。

他にも明治の文豪に倣って『大人の原稿執筆パック』などもある。
作家気分になって「缶詰」の疑似体験にはぴったりかもしれない。

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