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読書感想文【眉山】

2004年 さだまさし
ちょっくら徳島に行きたいと思ったので、手を取ってみた。映像化もされているが、そちらは未視聴。

末期がんを告げられた母を看取る娘と周囲の人たちの物語。
ちゃきちゃきの江戸っ子だった母が、何故身よりもいない徳島の地で一人自分を産むことを選んだのか。近づく死を前にして、母の思いをなぞるように、娘は寄り添う。

母親・龍子の江戸前気風が清々しい。いささかカッコ良すぎるなぁとも思うが、そういうフィクションかと見紛うような人は、確かに現実にもいる。
物事の核心を一瞬でぐさりと突くような慧眼は、どうしたら養われるのだろう。
自分などはとっさに頭がよく回る方ではないので、というかはっきり言って鈍いので、言われたことを咀嚼するのに時間がかかるし、違和感を感じてもそれを言語化する頃にはすでに機を逸しすぎている。後になって「あれってすごく失礼じゃないか?怒っても良かったんじゃないのか?」と思うことなどしょっちゅうだ。
そういう人間にとって、龍子のような人はやや気後れを感じる。だが同時に眩しくも映る。娘の咲子も少し似た感情を抱いているかもしれないが、それより勝る母親への愛情が物語を優しく仕立てている。

短時間でさらりと読める手軽さだが、じんわりと暖かなものが残る。
阿波踊りへの興味も出てきた。


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