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解体屋ゲンとの再会と魔法のポケット

2019年3月29日、芳文社の電子書籍サイトCOMIC FUZが開始された。ニコニコ動画の某日本一周動画で知って読み始め、さらにアニメで爆伸びした「ゆるキャン△」が、「まんがタイムきららフォワード」からFUZに移籍となった。

こりゃアカンとFUZのアプリを入れると、月額プランという、月480円(ライトコース)できらら系4誌と「週刊漫画TIMES」が読めるお得なサービスがあった。なにより当時はサイマル化されてないため、実本からはかなり遅れて発売される電子版をイライラしながら待っていた「まんがタイムきららフォワード」がFUZではちょっとしてからサイマル化されたのが大きかったので、これも契約した。

月額プランのページに置かれた「週刊漫画TIMES」の場違い感といったらそれはもう。日本の萌え絵の最先端であるきらら系の表紙が並ぶ中で、劇画的表紙が1冊だけ(笑)

「週刊漫画TIMES」にたどり着くにはもう少し時間がかかった。当時、尿管結石で地獄の痛みを喰らって4日間入院したのだが、その際にタブレットで購入したのがFUZのトップページにずっと表示されていた「神様のバレー」。全巻(当時19巻)大人買いして、痛みの中で読んだら、これがもう面白い。

そこで月額プランに「神様のバレー」を連載している「週刊漫画TIMES」があるのを思い出して読んでみた。「かわうその自転車屋さん」はネット友達の紹介だったか表紙買いかで、全巻揃えていたので「ああ、コレに連載されていたのか」などと思いつつ読んだ。

「解体屋ゲン」がいた。思い起こせばコンビニ本が出たときに立ち読みで面白かったので買ってはいたのだが、当時、2012年1月にはコンビニ本の他に「解体屋ゲン」をまとめて読む方法はなかったのだ。(ちなみにゲンの裏表紙の広告で「劇ウマ!釣り船御前丸」のコンビニ本も買うのだが、それはまた別のお話)

FUZの連載分を読むとやはり面白い。これはマズいと「解体屋ゲンの導火線 ベストセレクション見本版」と当時最新刊だった60巻を手にしたのだ。

解体屋ゲンの導火線 ベストセレクション見本版」は作品序盤とゲンの異種格闘技な怪作群(ゲンvs美女、ゲンvs公共工事、ゲンvs美少女ゲーム、ゲンvs異世界、おっさんvs社会)を選抜したものであるが、これがメチャクチャ面白く、「ああコレは素晴らしいこち亀系マンガだったのだな」と思い、毎月出る続巻を買い続けた。

そう、毎月出る。

芳文社では単行本が1冊しか出なかった「解体屋ゲン」(当時の週刊漫画TIMESの読者層に単行本を購入する人たち自体がごく少数だったのは想像に難くない)は、作者たちの手により一度は電子書籍化されるが、数奇な運命により(原作者の星野茂樹先生のnoteを辿ると涙が出る)、2019年6月1日に現在の伝書バトからの新装版発売となった。さらに新作は毎月1日発売の形として。

60巻に迫る状態での発売であり、16年を超えたタイムラグは、毎月あたらしい単行本が読めて、毎週連載の新作が読める、それはまるで「解体屋ゲン」が出てくる魔法のポケットをもらったような状況を作り出したのである。そして、もう数年はこの魔法のポケットが使えるのだ!

さらに、電書バトと作者たちによる驚愕のセール。全5円とか半分無料とか、こちらが心配になるセールが続発。「作者には、版権者には対価を払いたい。だから基本的には絶版本以外は中古書店では買わない」とか謎のポリシーでマンガを買い続けていたマンガ読みとしては、「セールで買ったら負けじゃないのか」と数回のセールを見送ったのだが、原作者の星野茂樹先生のnoteと作者2人の運営するTwitterの「勝負をかけたセールなんだから気にせずに買って」的な記事などで、自分のどーでも良いポリシーを曲げて、当時66巻までの「解体屋ゲン」を全て手にしたのである。

そこには「解体屋ゲン」が66巻、16年以上かけて積み上げたものがあった。1話完結と数話のシリーズで専門の爆破解体でだけでなく、森羅万象の時事ネタを吸収し、そのネタの積み重ねをまったく無駄にしていない。石井さだよし先生の手によるキャラクターたちは線こそシンプルだけど表情豊かで本当にその世界に生きている感じがあり、さらにその世界ごと、企業や制度や街と共に全てのキャラクターが成長して結婚したり、子供を作ったり、職を変えたりしているのだ(主キャラの目に見えた成長は似ているといわれる「こち亀」も成しえなかったものかもしれない)。

なにより「解体屋ゲン」の爆破解体という根本を揺るがす、現実の「ビルの爆破解体を過去のものにする」大工事、「赤プリ解体」に対して、同工事の中で並列に行われ、ゲンの中では初期から追いかけていた曳き家で受け止めた一連のシリーズは、圧巻としか言えないものだった。

「解体屋ゲン」のセールは今も行っており、これからも実施されると思うので是非手に取って欲しい。多すぎる?頑張れば10時間くらいで読めるよ。読書スピードも成長する程に面白いから。「週刊漫画TIMES」も追いかけようよ、今のシリーズなんか、ゲンが現実の会社と人たちと共にテロリストとの電脳戦に参加するんだよ、大作映画なスケールで!

実存の人をテロと戦わせるなんて、なんてとんでもない挑戦なんだろうか!(MMRを超える?)


とにかく、凄いんだよ!面白いんだよ!!、なんでもあるよ!!!


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