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ジミーとジョルジュ、心の欠片を探して

ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して
アルノー・デブレジャン監督  2013年
原作 夢の分析:ある平原インデイアンの精神の治療記録

1948年、第二次世界大戦から帰還した、モンタナ州に住むブラックフット族ネイテイブアメリカンのジミーは、原因不明の頭痛、めまい、視野の異常に苦しんでいた。
カンザス州の軍病院に入院したものの、症状は軽減しないため、精神分析医をニューヨークから呼び寄せることになった。
やってきた精神分析医ジョルジュは、ハンガリー出身のユダヤ人でフランス国籍であった。
彼はまた、人類学者でもあり、ネイテイブアメリカンについても詳しいため、民俗学的手法を用いて、ジミーと対話を重ねていく。
ネイテイブアメリカンゆえの差別に苦しむジミーは、しだいに心中の闇をうち開けるようになった。
たくさんの対話を重ね、最後にジョルジュは言う。
「君は何も狂っていない。魂が傷ついたんだ。」

精神科病棟に入院して、原因がわからない症状に苦しむ人たちはたくさんいる。
特に、戦争からの帰還兵は、いつの時代にも多い。
第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガンからの帰還兵。
そして今も、ウクライナをはじめとして世界中で戦いが繰り広げられている。

戦争からの帰還兵だけでなく、虐待や犯罪の犠牲で心理的外傷を抱える人は多い。
魂が傷つくことは、体が傷つくことと同じか、あるいはそれよりはるかに深い傷を負うことである。
魂の傷を治すには、外科的手術ではなく、根気よく重ねる対話なのではないだろうか。
もしかして、魂の傷は治らないかもしれない。
体の傷がケロイド上になるように、こころの中に深く深く残るだろうけど、その痛みは根気良い対話や、やさしいまなざしで、少しは軽減できるかもしれない。


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